2015年6月7日

『新・観光立国論』デービッド・アトキンソン・著 vol.3974

【観光ビジネスに商機あり】
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いろんなところでコメントしていますが、21世紀最大の産業は「観光産業」です。

世界中で富裕層が生まれ、お金の使いみちを探している。

加えて、昨今の円安。今、観光に力を入れるのは、日本の方向性としても、面白いと思っています。

そこでご紹介したいのが、京都在住の、元ゴールドマン・サックスアナリスト、デービッド・アトキンソンさんによる『新・観光立国論』。

なぜ、生産性の向上や女性の活用ではダメなのか、なぜ観光産業なのか、これまで指摘されていなかった視点から、21世紀日本の「所得倍増計画」が示されています。

冒頭で、世界中の国が指標としているGDPがいかに人口の影響を受けやすいかを説明し、「短期移民」(=つまり観光客)を増やすことを提言。

その後は、日本が観光大国になるために、何をすべきか、足りない部分の指摘と、強化すべきポイントを示しています。

著者によると、観光立国の条件は、「気候」「自然」「文化」「食事」の4つ。

日本人が絶賛する「おもてなし」などは瑣末なことで、高い航空運賃を払ってまで期待することではないと説いています。(確かに、東京人が3万円の交通費をケチってUSJに行かないことを考えると、その通りだと思います)

さまざまなデータが登場し、日本人が観光ビジネスで大事だと考えていることがじつはズレていることが明らかになりますが、指摘はいちいち納得できるものばかりです。

具体的なポイントを見て行きましょう。

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日本は動物と植物に非常に恵まれています。あまり知られていませんが、国連の数字によると、日本は1平方キロメートルあたりの動物、植物の数で言えば、実は世界一を誇っているのです

見たいものや体験したいものがあれば、多少治安が悪くても、交通アクセスが悪くても、外国人観光客はやってくるもの

日本人が考えるほど、各国は日本のサービス品質の優位性を必ずしも認めているわけではない

日本にきた外国人観光客のFacebookを見ていると、多くの人が、日本のレストランやホテルで“How is/was everything?”と聞かれないことを指摘しています

日本のレストランのスタッフには、どの客が何を注文したのか覚えていない人が多い

日本が観光立国を目指すなら、ゴールデンウィークを廃止したほうがいい

外国人が日本にやってきて驚くのは「できません」「それは無理です」「ここではやっておりません」と、やたらと「否定」の回答が多いことです

日本人は「外国人」というものをひとくくりにする傾向が強いさまざまな調査で、訪れる国が遠くなればなるほど、長く滞在する傾向が確認されています

私がより多くのオーストラリア人や欧米人にきてもらえるようにすべきだと主張する理由は、長期滞在者が増えることによって、観光収入も増えるからにほかならない

滞在期間と観光客の支出には、強い相関関係がある

アメリカ政府のデータによると、観光客の支出の26.9%が宿泊で、18.4%が食事

なぜ成田国際空港から新幹線を走らせないのか、不思議

世界では高級ホテルというのは、1泊400万~900万円という価格帯

翻訳は必ず教養のあるネイティブのチェックを

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全体的に非常に耳の痛い指摘がなされていますが、もし、これらのポイントがクリアできて、著者のシナリオ通りになるとしたら、訪日外国人観光客の数は、2020年までに5600万人。

2030年までに8200万人で、GDP成長率は8%です。

これは、一読する価値があるのではないでしょうか。

既に関わっている人はもちろん、これから観光ビジネスに挑む人、投資家にも、ぜひおすすめしたい一冊です。

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『新・観光立国論』デービッド・アトキンソン・著 東洋経済新報社
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◆目次◆

はじめに 日本を救うのは「短期移民」である
第1章 なぜ「短期移民」が必要なのか
第2章 日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン   
第3章 「観光資源」として何を発信するか
第4章 「おもてなしで観光立国」に相手のニーズとビジネスの視点を
第5章 観光立国になるためのマーケティングとロジスティクス
第6章 観光立国のためのコンテンツ
おわりに 2020年東京オリンピックという審判の日

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