【「家族」を経済学で考える】
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本日の一冊は、『大相撲の経済学』、『お寺の経済学』、『オバサンの経済学』など、ユニークな著書で知られる、慶應義塾大学商学部教授、中島隆信さんによる注目の一冊。
オビにもあるように、「男女の結婚観の違い」「親子の愛情のすれ違い」「増える家族間トラブル」など、最近は家族をめぐる問題が絶えず議論されており、周囲でも「事実婚」や「通い婚」など、さまざまな関係をとるカップルが増えています。
また、夫婦共働きが増え、夫婦別姓の問題や、子育て・家事の分担をめぐるトラブルなど、議論すべきトピックは無限に広がっています。
そこで読んでおきたいのが、本日ご紹介する『家族はなぜうまくいかないのか』。
経済学の視点から、婚姻とは一体何なのか、なぜ妻はオバサン化するのか、なぜ結婚後夫の態度が豹変するのかなど、婚姻や家族をめぐる問題を、まとめて考察しています。
日本でいま最も治安の悪いところは家庭であるという主張や、働く夫と専業主婦の完全分業が向上心を失わせるという主張、離婚コストの高さが結婚回避や妻の立場の悪さを招いているという主張は、目からウロコでした。
ビジネスパーソンにとって、家庭の安定は、仕事で成果を生む上でも大変重要です。
興味深いトピックを通じて、経済学的な考え方が身につくので、ビジネス書として読んでも楽しめると思います。
これから結婚する方はもちろん、既に結婚/離婚を経験した方も、ぜひ読んでみてください。
今日は日曜日なので、くれぐれもパートナーに買うところを見られないようにしてくださいね(笑)。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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現在の日本で殺人事件は年間に1000件ほど起きていますが、そのうち親族がらみのものは半数以上を占めています。さらに、親子間の殺人は約200件、夫婦間は約150件もあるのです。私は、日本でいま最も治安の悪いところをあえて探すとするなら、それは冗談抜きで家庭だと思っています。一般の路上では「正当な理由」もなく包丁やナイフを持ち歩いていたら銃刀法違反になります。ところが、多くの家庭にはそうした「凶器」が常に用意されているのです
組織を作ることの最大のメリットは、こうした取引コストを節約できるところ
いったんアリスと契約を結んでしまうと、簡単には解消しづらいということもあります。むしろ解約を困難にすることで両者の間には信頼関係が生まれ、アリスはタダシの長期的な体作りのことを考慮に入れられるようになります(中略)この解約のしづらさがアリスの甘えを生む可能性もあります。市場取引のメリットは何といっても競争の厳しさです。なぜなら手抜きをしているとほかの業者との競争に負け、客を持っていかれてしまうからです
モテない人とモテる人の違いは、気に入った異性を見つける取引コストが大きいか小さいかの違いなのです。取引コストの小さい人はモテモテなので遊ぶ相手には苦労しません。したがって、決まった恋人を持つインセンティブが低くなります
完全な分業体制は合理的かつ安定的ではありますが、互いに干渉し合わないためにそれぞれが家庭内での独占的なサービス提供者となり、向上心が失われていくのです
日本独特の文化というものがあるとするならば、それを維持していくためには文化の継承者である次世代の人間を育てること、すなわち人口の再生産が不可欠です。逆にいえば、出生率1・4という現象
は、日本の文化がもはや持続可能ではないことを意味しているのではないでしょうか
いまの家族は本当に健全だといえるのでしょうか。法律が想定する「まっとうな」家族像を好まない国民が増えているために、婚姻率や出生率が低いままだという解釈も成り立ちそうです
現在の日本の法律婚は妻に強いコミットメントを要求することから、離婚のコストを高める働きをします。しかし、これは2つの結果をもたらすでしょう。ひとつは離婚のしづらさを嫌う女性が結婚を回避するかまたは遅らせるようになることで、もうひとつは夫婦関係が悪化しても離婚できない状態に妻が置かれることです
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『家族はなぜうまくいかないのか──論理的思考で考える』中島隆信・著 祥伝社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439611396X
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◆目次◆
第1章 なぜ結婚するのか
第2章 家族のガバナンス
第3章 夫婦関係をよく保つには
第4章 親子関係に特有の問題とは
第5章 祖父母と孫、そして親との三角関係
第6章 沖縄の家族問題から見えるもの
第7章 法律は家族を守っているか
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