2014年10月17日

『ハーバード流ソーシャルメディア・プラットフォーム戦略』ミコワイ・ヤン・ピスコロスキ・著 vol.3741‏

【必読の一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402331322X

本日の一冊は、ハーバード・ビジネス・スクール戦略ユニット准教授を経て2014年よりIMDビジネス・スクール教授、数多くのソーシャルメディア・プラットフォームのケースを執筆しているミコワイ・ヤン・ピスコロスキ氏による話題作。

翻訳は、ハーバード・ビジネス・スクール招待講師であり、『プラットフォーム戦略』共著者の平野敦士カール氏が担当しています。

※参考:『プラットフォーム戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532749

現在繁栄しているビジネスのなかには、ソーシャル(社交)ニーズで成功しているものが多くあるわけですが、本書のフレームワークは、なぜソーシャルメディア・プラットフォームのなかに成功するものと失敗するものがあるのか、なぜ交流を促進しようとしたのにサイトやコミュニティが盛り上がらないのか、その理由を経済的コスト、社会的コストの両面から説明しています。

大手オンライン出会い系サイトのイーハーモニーとオーケーキューピッド、明暗を分けたFacebookとmixiなど、さまざまなケースと詳細なデータをもとに、彼らの施策がどう顧客に機能したのか、丁寧な分析を試みています。

出会い系サイトで、なぜユーザーが自由に選んでコンタクトできるようにするとまずいのか、じつに興味深い考察がなされていました。

ウェブサイトが自分のために選んだ人のみにコンタクトできる、ある意味不自由なはずのイーハーモニーが成功したという話は、目からウロコです。
(自由に選べ、コンタクトできると、オフラインでも恋愛に自信のある人がより良い結果を得ることになる)

本書で言う「ソーシャルの失敗」(ある2人の人間が互いに交流すれば、双方ともより良くなるのに実際には相互交流が生じていないこと)の概念を理解すれば、オンラインであろうとオフラインであろうと、有益なビジネスを創り出すことができるでしょう。

あなたの企業が、いかにして顧客の「広がり」「表現」「検索」「コミュニケーション」コストを削減できているか、チェックすることで、ビジネスの可能性を知ることもできます。

また、著者が発見した以下のフレームワークを活用すれば、成功するソーシャル戦略の要諦を知ることができるでしょう。

(1)企業の利益拡大を目指す実行可能なソーシャル戦略は
(2)人々の相互交流を改善することで
(3)もし、彼らが企業の機能の一部を無料で引き受けたら

ちょっとわかりにくいので、ソーシャルゲームのジンガのケースを当てはめてみると、こうなります。

(1)ジンガのソーシャル戦略は、顧客獲得コスト・顧客維持コストを削減することが目的
(2)ユーザーが彼らの友だちと再度つながることで
(3)もし、彼らが友だちをゲームに誘えば

人々の相互交流コストを減らし、交流を増やして、顧客から何らかのボランティア労働を得る。

これからの成功するビジネスモデルが、垣間見えた、読み応えある内容でした。

これは必読の一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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なぜこのようなソーシャルの失敗が起きるのかといえば、さまざまな相互交流に関するコストが発生しているからである。それらのコストとは、「広がり」「表現」「検索」「コミュニケーション」の4つの相互交流コストだ。さらにそれぞれに経済的要因によるコストと社会的(規範)要因によるコストの2種類があり、合計8種類のコストがある(平野敦士カール氏)

成功するソーシャル戦略とは、人々の満たされていない社会的ニーズを満たすことができるように、人々の手助けを企業が行うことで、企業にとってメリットのある業務を代行してもらい、よって、企業はコストを低減し、あるいは、顧客購買意欲の向上(Willingness to Pay、以下WTP)を実現できるという、社会的利益と企業の競争優位性の両立を実現する戦略である(平野敦士カール氏)

オフラインの世界では、私たちが交流したいが実現できない交流が数多く存在することを主張したい。これらの実現されていない相互交流が、社会的ニーズ、すなわちソーシャルの失敗なのだ。これらのソーシャルの失敗の中には、新しい人と出会うことができないことと関連している場合がある。これを私は「出会い」の失敗と呼ぼうと思う。また既存の人間関係の中で、自分の個人的な情報を共有したり、社会的支援を分かち合ったりすることができない場合もある。これを「友だち」に失敗と呼ぶことにする。これらの失敗は、なぜ人々はソーシャル・プラットフォームに引き付けられるのかと理由の中核をなしている

少数民族の人が同じ民族内で配偶者を求める場合、あるいは性的マイノリティが同性の配偶者を求める場合などには、日常活動の中で潜在的候補者の幅が小さい。それゆえこれらの人々は、高い「広がり」コストを経験することになる

仲介者に誤解があると、その人の個人情報が偽った形で候補者に伝えられるという誤りが発生する潜在的可能性は大きい。したがって、仲介者ベースの方法は、「表現」コストを高くする可能性がある

イーハーモニーは、サイトが誰を誰と会わせるのか決定するので、システム上誰もが公平に見てもらえることを保証している

ミクシィでは誰が訪問したのかを女性が知ることができるので、男性は、かなり親しい間柄(共通の友だちによってつながっている)でない限り、自分がオンラインで知っている多くの女性のコンテンツを見に行くのに、居心地の悪い思いがするのだ

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『ハーバード流ソーシャルメディア・プラットフォーム戦略』ミコワイ・ヤン・ピスコロスキ・著 
朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402331322X

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◆目次◆

第1章 本書の構成
第2章 ソーシャルの失敗とソーシャル・ソリューション
第3章 「出会い」ソリューション:イーハーモニーとオーケーキューピッド
第4章 「出会い」ソリューション:ツイッター
第5章 「友だち」ソリューション:フェイスブックとミクシィ
第6章 「出会い」と「友だち」のソリューション:リンクトインとフレンドスター
第7章 「出会い」と「友だち」のソリューション:マイスペース
第8章 ソーシャル戦略
第9章 ジンガのソーシャル戦略
第10章 イェルプのソーシャル戦略
第11章 アメリカン・エキスプレスのソーシャル戦略
第12章 ナイキのソーシャル戦略
第13章 Xカードとハーバード・ビジネス・レビューのソーシャル戦略構築法
第14章 結論

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