【ネットの閉塞感を打破する生き方とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478026661
本日の一冊は、作家・思想家の東浩紀さんが、「統制された」ネット時代に、「かけがえのない生き方」をするためのヒントを説いたエッセイ集。
もともとは、2012年~2013年にかけて、幻冬舎のPR誌『星星峡』に掲載されていた、語りおろしのエッセイを再構成したもので、著者初の人生論として、興味深く読ませていただきました。
著者に言わせると、インターネットは「階級を固定する道具」であり、<自由に検索をしているつもりでも、じつはすべてグーグルが取捨選択した枠組みのなか>で生きているにすぎない。
そこを逸脱するには、<グーグルが予測できない言葉>で検索することが重要。
そのための方法論として、著者は観光をすることの重要性を説いています。
<旅は「自分」ではなく「検索ワード」を変える>というのは、興味深い視点だと思います。
本書のなかに、著者がインドを旅行した時のことが書かれているのですが、<インドについての情報は、ブログを書く人々の行動によってフィルタリングされている>というのが著者の意見。つまりネットでは、バックパッカーの目から見たインドが多くて、その時点でフィルタリングされているというのです。
キーワードの固定化と、情報発信者のフィルタリング。
これは確かに、われわれの情報収集活動を制限するものであり、極端な話、「階級」を固定化するものだと思います。
本書には、著者の体験から考えた、ネット時代を生き抜くためのヒントが書かれており、じつに興味深く読ませていただきました。
みなさんも、ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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ネットは階級を固定する道具です。「階級」という言葉が強すぎるなら、あなたの「所属」と言ってもいい。世代、会社、趣味……なんでもいいですが、ひとが所属するコミュニティのなかの人間関係をより深め、固定し、そこから抜け出せなくするメディアがネット
自由に検索をしているつもりでも、じつはすべてグーグルが取捨選択した枠組みのなか。ネットを触っているかぎり、他者の規定した世界でしかものを考えられない(中略)その統制から逸脱する方法はただひとつ。グーグルが予測できない言葉で検索することです
自分を変えるためには、環境を変えるしかない
経験からわかったことは、インドについての情報は、ブログを書く人々の行動によってフィルタリングされているということ。要するに、アライバルビザはバックパッカーに厳しかったんですね
ぼくはどうやって「ケーララ」に辿り着いたか。それはインドに行ったからです。現実にインドに行かなければ、ケーララを検索する機会はなかったでしょう
バックパッカーはバックパッカーが見るインドについてしか報告しないし、金持ちは金持ちが見せたい自分のすがたしかつぶやかない
バンダアチェの津波博物館は、日本語で検索してもほとんど情報は出てこない。ところが「Aceh Tsunami Museum」と入れると、それだけで風景が一変する。英語というよりも、問題は文字で、アルファベットで検索するのが重要ということです
いまは、特殊な経験や知識よりも、顧客の要望に応じていかに適切に検索するか、その能力こそがビジネスにおいて重要になっているということです。だからこそ、たえず新しい検索ワードを手に入れる必要がある
言葉にできないものを言葉にすること。そのために大事なのは、まずは言葉にできないものを体験すること、つまり「現地に行くこと」
あらゆる情報がネット上でストックされるこれからの時代においては、情報の公開の有無ではなく、「検索の欲望」をどう換気するかこそが重要な問題として浮上してきます
もし人間に性欲がなかったら、階級はいまよりもはるかに固定されていたことでしょう。ひとは性欲があるからこそ、本来ならば話もしなかったようなひとに話しかけたり、交流をもったりしてしまうのです。その機能は「憐れみ」ととても近い
ネットは体力勝負の消耗戦
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『弱いつながり』東浩紀・著 幻冬舎
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◆目次◆
0.はじめに──強いネットと弱いリアル
1.旅に出る──台湾/インド
2.観光客になる──福島
3.モノに触れる──アウシュヴィッツ
4.欲望を作る──チェルノブイリ
5.憐れみを感じる──韓国
6.コピーを怖れない──バンコク
7.老いに抵抗する──東京
8.ボーナストラック──観光客の五つの心得
9.おわりに──旅とイメージ
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