【故・河合隼雄氏が遺した幸福論とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569821081
本日の一冊は、臨床心理学者であり、京都大学名誉教授だった故・河合隼雄氏が遺した、エッセイ集。
もともと『しあわせ眼鏡』というタイトルで、中日新聞と東京新聞に連載されていたものをまとめて出版し、絶版となっていたものを復刊したもので、河合隼雄氏の「幸福」に関する思索が読める、貴重な一冊です。
子育てに関する話、時間に追われる現代人の不幸、「満ち足りる」ことのパラドックス…。
古今東西の逸話とともに、氏の幸福論が展開されており、じつに考えさせられる内容です。
なかでも、気に入ったのは、グリムの昔話「ものぐさハインツ」のハインツとトリイネ夫婦の話でした。
蜂蜜の入った壺をたたき落としてしまった妻トリイネに対し、夫のハインツが声を掛けるシーンです。
<棒を振りまわしているうちに、大切な壺をたたき落としてしまった。蜂蜜が床に流れ出すのを見て、ハインツが言った。「壺がおれの頭の上へ落っこちなかったのはしあわせだよ。何事も運とあきらめなけりゃいけないもんだ」。そしてかけらのなかに、少し蜂蜜があるのを見て、ほくほくして、トリイネに「この残りかすを、お前、二人でごちそうになろうや。それから、びっくりしたから、しばらくゆっくり休むとしよう」>
こんな考え方ができれば、きっと人間関係はうまくいくんでしょう。
養老孟司氏が、「心の奥底にしみこむ話がたくさん載っています。読まなきゃ損です」と言っている通り、心があたたまる話が多く収められています。
ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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現代人の生き方の難しいところは、時間に従って生きながら、それに縛られたり、追いかけられたりしない、ということであろう。その対策のひとつとして、時には「時間を忘れ」たり「時間にこだわらない」生き方をする「時」をうまく確保することであろう
「教育」の現場において、情報を正確に多く速く伝えることを重視しすぎていないだろうか(中略)先生の方も情報の伝達に追われ、子どもとともに心の揺れを体験することの素晴らしさを、忘れがちになるのではなかろうか
問題は、常識は押しつけたり教えこんだりできるものではなく、体から体にじわじわと伝わってゆくようなものだから、それに必要なだけの生活の共有時間が少なすぎることではないだろうか
「幸福だ」と思ってとびつくと、効率の悪いことをしてしまう
棒を振りまわしているうちに、大切な壺をたたき落としてしまった。蜂蜜が床に流れ出すのを見て、ハインツが言った。「壺がおれの頭の上へ落っこちなかったのはしあわせだよ。何事も運とあきらめなけりゃいけないもんだ」。そしてかけらのなかに、少し蜂蜜があるのを見て、ほくほくして、トリイネに「この残りかすを、お前、二人でごちそうになろうや。それから、びっくりしたから、しばらくゆっくり休むとしよう」
河を渡る苦労をさせずに新天地が開かれることはないのだ
「満ち足りる」というときに、すぐわれわれが考えるのは、何か手に入れることの方だが、むしろ、何も持たない者こそ満ち足りていることを示す点が心憎い
「子どもの幸福」の一番大切なことは、子ども自身がそれを獲得するものだ、ということである
人生のなかで「我を忘れる」体験を一度もしない人は不幸な人だと思う。自分という全存在を何かに賭けてみる。そのことによってこそ、自分が生きたと言えるのではないだろうか
「すべてなかったことにする」とは、要するにゴミ扱いすることではないのか。われわれ現代人はあまりにも多くのものを棄てすぎていないだろうか
愛するもの、ほれこむものがあるということは人間をしあわせにする
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『河合隼雄の幸福論』河合隼雄・著 PHP研究所
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◆目次◆
幸福とは何か
モモの笑顔
兄弟
子育て
何を伝えるのか
感謝の言葉
常識
人生の後半
幸福の効率計算
儀式
ほか
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