【名著が教える、競争優位性の本質。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569820360
本日の一冊は、神戸大学名誉教授の吉原英樹氏が書き、長らく絶版となっていた戦略論の名著を、26年ぶりに復刊したもの。
若い頃、同書に感銘を受けたという楠木建氏が「復刊によせて」を書き、著者の吉原英樹氏自身が「新版まえがき」を書いており、装いを新たにしています。
「20年以上前の本が役に立つのか」と疑問に思う向きもあると思いますが、本書が主題とするのは、楠木氏もコメントしている「模倣障壁」の問題。
今日の情報化社会では、競合企業の情報はいとも簡単に流れるため、この「模倣障壁」の重要性はますます高まっていると思われます。
本書で言う「バカな」(非合理性)があれば、競合は模倣する気が失せ、その間に稼ぐことができる。結果として「なるほど」(合理性)があれば、それで良いのです。
本書に登場する「合理性の時間差攻撃」と「合理性の空間差攻撃」(楠木氏が本書にインスピレーションを受け、考案したもの)は、理解しておいて損はないでしょう。
登場する事例は当然古いのですが、基本的な着眼点を知っておけば、それで充分、役に立つと思われます。
松下電工、日立化成、住友ベークライトなどの大企業に、まともに設備投資で先行する戦略をとった利昌工業、一社独占だったラノリン(羊毛脂からとれ、医薬品や化粧品の原料などに使用)を狙った吉川製油、辺鄙な場所にある田んぼ1200坪を借金までして買った二流の温泉地の二流の下の旅館「花屋」(のちに日本一の温泉旅館ホテル百万石に発展)…。
成功企業の「目のつけどころ」と「バカなる」の戦略。確かに読むだけでインスピレーションが湧いてくる内容です。
後半は、よくある経営の心構えだったり、考え方だったりが展開されていますが、前半部分の理論と事例は、読み応えありです。
ぜひチェックしてみてください。
———————————————–
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
———————————————–
あっさり言ってしまえば、競争戦略とは、「他社と違った良いことをしろ」に尽きる(楠木氏)
戦略論の行き着くところは常に「模倣障壁」の問題になる(楠木氏)
「非合理の理」、これだ!「バカなる」の論理こそが持続的競争優位の本命だ!(楠木氏)
合理性の時間差攻撃を持ち出さずとも「なる転」できる論理は何か。これを提示しようとしたのが『ストーリーとしての競争戦略』である(中略)僕バージョンの「バカなる」は、部分と全体のギャップをつくことによる「なる転」になっている。いわば「合理性の空間差攻撃」である(楠木氏)
ワイン業界から非難され、軽蔑されたイエロー・テイルは、なぜ成功したか。多くのアメリカ人がワインを敬遠していたのは、味わいが複雑すぎて堪能できなかったこと、それに、種類の多さ、ラベルの専門用語が理解できないなどのためだとわかったので、イエロー・テイルはワインとしてではなく、ビール、カクテルなど、友人たちと気軽に楽しめる飲み物として売り出された
成功企業の経営は外部の者には「バカな」とみえても、じつはよく考えぬかれており、「なるほど」と納得できる合理性を有している
尊敬される差別性より、後者の軽蔑され、バカにされる差別性のほうが、戦略が備えるべき差別性の特徴としてはずっと重要であると思う。なぜか。みんなが尊敬し、あこがれる差別性の場合、競争会社はすぐにその戦略を模倣する
業界間の落差を利用して戦略を発想するという方法からすると、遅れた業界の企業は幸せである
◆戦略を社員に伝達する方法
・口頭によるもの
・文書による方法(経営計画の作成とその発表)
・人事
・予算
・組織
・トップマネジメントの日常の言動
経営者の方にお尋ねしたい。あなたの部屋の書架に女性誌が何冊ありますか。もし一冊もないようであれば、早速何冊か定期購読してほしい
————————————————
『「バカな」と「なるほど」』吉原英樹・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569820360
————————————————-
◆目次◆
復刊によせて 楠木建
新版まえがき
はしがき
第一部 常識破りの発想
1.「バカな」と「なるほど」──成功する戦略の二大条件
2.答えをみながら答案を書く──創造的戦略の発想法
3.べき論より予測論を──経営者の先見力強化法
4.ダブダブの洋服の戦略メッセージ──戦略を効果的に伝える方法
5.マイナス情報に“情け”をかけよう
6.組織慣性との戦い──企業変身の最強の敵
7.人事スペシャリスト不用論──野村證券の「非」常識な人事部
8.カラ元気のリーダーシップ
9.社内事情より社外事情を優先──野村證券のキープヤングの人事
10.女がわからないで経営できるか
11.人づくりは人選びから
12.計画のグレシャムの法則
第二部 常識破りの戦略
1.多角化を成功させるキーファクター
2.非常識な戦略で活路を開く
3.中堅企業海外進出の成功の条件
4.夢と技術力と余裕──海外進出成功のキーファクター
5.安全運転は新事業の敵
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)
お知らせはまだありません。