2014年5月26日

『振り切る勇気 メガネを変えるJ!NSの挑戦』 田中仁・著 vol.3597

【J!NS成功の戦略とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822250199

本日の一冊は、販売本数で日本一を誇るメガネ会社、「JINS」(株式会社ジェイアイエヌ)の代表取締役社長、田中仁(たなかひとし)さんによる一冊。

同社は視力矯正用メガネも含めて年間550万本のメガネを売る会社に成長し、2013年度は販売本数で日本一、売上高は365億円。

本書では、そんなJINSを立ち上げた田中仁さんの半生と経営理念、さらには競合に勝つための「戦略」が紹介されています。

斬新なコンセプトと鮮やかな宣伝手法で世に出た印象のある同社ですが、その実、競合企業の模倣や巻き返しにより、随分と苦労したようです。

どうやって競争優位を持続させるか、というのは経営における永遠の課題ですが、本書には、いくつかの優れた答えが示されています。

それは、「志」「覚悟」「誠意」という3つのキーワードでまとめられるのではないでしょうか。

ユニクロの柳井氏に会った際、志を問われ、絶句した著者は、それを機に、志を固めます。

模倣者は、都合が悪くなったら止めるけれど、志ある企業は決して歩みを止めない。これは、「志」が競争優位を生み出す理由です。

また、著者は投資に関する覚悟により、競争優位を生み出しています。目先の損にとらわれず、大きく考えることが優位を生む、という良い見本でしょう。

<「薄型非球面レンズで追加料金ゼロ」が実現できるのは、レンズもフレームも大量に生産して原価を下げているからだ。そう、かつて雑貨事業でヒットさせたエプロンと同じ仕組みである。しかし、それだけではない。通常のメガネ店では「薄型非球面レンズで追加料金ゼロ」にした上で利益が出るほど、大量の本数を売り上げることができない。実は、JINSの来店客数は競合のメガネ店の10倍以上だ>

そして、最後の「誠意」。

著者は、自社がサイエンスにこだわる理由を、こう語っています。

<科学的な裏付けのある製品をつくること。そして開発過程をお客さまに知ってもらうこと。僕らがいくら「JINSの製品は高品質ですよ」と発信したところで、都合のいいうそをついていると思われてしまえば終わりだ。疑いようのない証拠を積み重ねていくことで、信用を勝ち取っていくしかない。その信用が醸成されない限り、シェア50パーセントには届かないだろう。だから、JINSはサイエンスを味方にするのだ>

著者の商売人としての「勘」は、正直、真似するのが難しいと思いますが、理屈で語られる部分は、ビジネススクールのケースになっても良いほど、よく考えられていると思います。

巷の「成功者の与太話」とは、一線を画した内容で、じつに読み応えがありました。

ぜひ買って読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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逆境や失敗に、僕は本当によくきたえてもらった。人は結局、失敗しないと学べない

社長が仕事をしない会社は、社員だって必死にならない。気がついたら、倉庫は在庫の山だった

僕は「日本のメガネ業界はもうかっていないのではないか」と考えた。しかし、この予想は、すぐに覆された(中略)1本3万円という価格なら十分利益が出るので、売れるメガネの本数が少なくても、メガネの販売チェーンは超優良企業というわけだ。そして、この構造に誰も異を唱えず、「あたりまえのこと」「常識」として業界が成り立っていた。これはチャンスだ

10軒目でようやく、地元の企業に卸すのと同じ値段で売ってくれるレンズメーカーにめぐり会えた。中国でバッグを生産してくれる工場を探したときもそうだったが、何軒もあたると、その中でひとりくらいはよい企業、よい担当者がいるものなのだ

世の中を変え、永続的に価値を提供する企業は、志で動いている。まずは、志がなくてはいけない。戦略は志という根についてくる枝葉なのだ

「薄型非球面レンズで追加料金ゼロ」が実現できるのは、レンズもフレームも大量に生産して原価を下げているからだ。そう、かつて雑貨事業でヒットさせたエプロンと同じ仕組みである。しかし、それだけではない。通常のメガネ店では「薄型非球面レンズで追加料金ゼロ」にした上で利益が出るほど、大量の本数を売り上げることができない。実は、JINSの来店客数は競合のメガネ店の10倍以上だ

正直ダメそうだと思った。「Dr.スランプ」のアラレちゃんのメガネをレトロでチープにしたようなフレームだったのだ。これはおしゃれではない。しかし、話を聞くと、なんと医療用素材だという。哺乳瓶や医療用カテーテルに使用される、スイス生まれのナイロン樹脂(中略)実はこれが、その後のJINSを支える看板商品「Air frame」となる

「いや、7万本だ」宇部は絶句していた。そんな規模で発注したことなんて、JINS史上ない。ヒット商品の3年分の在庫だ。でも僕は、ここで一気に勝負をかけると決めていた。勝負は、フルスイングだ

科学的な裏付けのある製品をつくること。そして開発過程をお客さまに知ってもらうこと。僕らがいくら「JINSの製品は高品質ですよ」と発信したところで、都合のいいうそをついていると思われてしまえば終わりだ。疑いようのない証拠を積み重ねていくことで、信用を勝ち取っていくしかない。その信用が醸成されない限り、シェア50パーセントには届かないだろう。だから、JINSはサイエンスを味方にするのだ

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『振り切る勇気 メガネを変えるJ!NSの挑戦』田中仁・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822250199

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◆目次◆

はじめに
01 セピア色と有頂天の起業
02 メガネとの出合い
03 株価低迷、買収提案
04 起死回生
05 メガネの常識を打ち破る
06 購入体験も変える
07 ウェアラブルの先を行く
08 世界に打って出る
おわりに

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