【本田健氏の小説が?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569761755
本日の一冊は、ベストセラー作家である本田健氏が、作家デビュー10周年を記念して作ったという小説『あなたのお金はどこに消えた?』を改題して作った文庫。
かつて炭鉱で栄えたカネー村にうまい投資話が持ち込まれ、幸せに暮らしていたはずのゾウたちが、次々とバブルに巻き込まれていくというストーリーで、随所にお金や人生の教訓が盛り込まれています。
かつて『パン屋のお金とカジノのお金はどう違う?』という本が出され、話題になったことがありましたが、本書はミヒャエル・エンデの教えを、著者風の小説にあしらった一冊。
・たくさん喜ばせたゾウが、お金持ちになる
・与えた分だけしか、受け取れない
・全部を手に入れようとすると、全部を失ってしまう
など、資本主義の原理に根差した教訓が散りばめられ、現代に生きるわれわれに、アドバイスと同時に、強烈な批判を加えています。
教訓のなかでも、「お金は紙くずになることもある」「あると思っていたものがなくなり、ないと思っていたものが見つかるときが来る」の2つは、これから到来する経済・社会を予言しているかのよう。
全体としては、資本主義に染まり切った大人に、労働することの意味や、愛・友情の尊さを教えてくれる、そんな内容に仕上がっています。
内容はさておき、原書も文庫版も、ベストセラーのパロディなのは、いかがなものか。
(意図はあるのでしょうが、これで随分損をしている気がします)
かれこれ10年以上前、著者から直接、「将来『モモ』のような作品を書こうと思っています」と聞かされていただけに、ちょっと意外な感じがしました。
内容は示唆に富んでいるので、ファンの方はぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「たくさん喜ばせたゾウが、お金持ちになる」
「与えた分だけしか、受け取れない」
「これが経済じゃ。おやつはお金だと思えばいい。自分の手から離れたお金は世界をグルグル回る。そして、賢いゾウの手元にはどんどん貯まっていく」
「昔、このクラスで、みんなから回ってくるおやつを全部自分のものにしようとした生徒がいたな。みんな、気をつけるがよいぞ。全部を手に入れようとすると、全部を失ってしまうからな」
「おまえたちは、相当なバカゾウだな。まぁ、いずれわかるだろう。あると思っていたものがなくなり、ないと思っていたものが見つかるときが来るから……」
お金は紙くずになることもある
父親の最期の言葉が、心のなかでこだましていた。「パン屋を好きになれとは言わん。でも、お願いだから、パンは好きになってくれ。それが、父さんの最後の望みだ」
このパンはただのパンではない。父親の、いや祖父から数えると3代の物語が練り込まれているパンなのだ
イレーヌは、ナイーゾに恥ずかしそうに言った。「あなたのことを好きになったのはね、あなたのパンを焼く姿がすてきだったからよ」
ゾウたちは、ナイーゾの顔を見ると安心して、パンを買って帰っていった。銀行が閉まっているため現金が手元にないゾウには、ナイーゾはただでパンを渡した。銀行が開いたら、そのときに払ってくださいという良心的な態度に、みんな感動した。ナイーゾは、これまでになく、パン屋の仕事に精を出した。自分には仕事がある。だれかに喜ばれ、お金がもらえる。お客さんの笑顔を見られるのが、なによりもうれしかった
トルーゾはぼくに言った。『本を読んでお金持ちになったやつはいないぞ』って。それを聞いて、ぼくは逆にわかったんだ。だれがなんて言ったって、ぼくは本を読むことが好きだって。だから、あきらめないで本を書こうって決めたんだ。つまり、お金があるなしの問題じゃない。人生は、だれにとってもたった1回きり。だから、今しかできないことを今やらないと、一生後悔するって思ったんだ。トルーゾは、ぼくに本当の生き方を教えてくれた。ぼくはとっても感謝してるんです」
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『金持ちゾウさん貧乏ゾウさん』本田健・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4569761755
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◆目次◆
プロローグ あるゾウの村の物語
第1章 同窓会
第2章 ヘッジホントがやってきた
第3章 アルーゾのお金の授業
第4章 終わりのはじまり
第5章 トルーゾを探せ!
第6章 お金はどこに消えた?
解説 これからお金とどうつきあいますか?
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