2013年10月5日

『ありえない決断』バーン・ハーニッシュ&フォーチュン編集部・著 vol.3364

【ビジネス史に残る18の決断とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/448413117X

本日の一冊は、ビジネス史に残る重大な決断のエピソードを、フォーチュン編集部と世界的に名高い起業家機構(EO)の創設者、バーン・ハーニッシュがまとめた一冊。

スティーブ・ジョブズを呼び戻した決断、無料配送・返品自由のサービスによって顧客志向の会社に変わったザッポス、社員を現地で遊ばせるサムスンの地域スペシャリスト制度、賃金を二ドル五〇セントから五ドルに上げたフォードの決断…。

ビジネス書ファンならおなじみの、「あの」エピソードが登場し、読者を楽しませてくれます。

個人的にビックリしたのは、「Noと言わない百貨店」ノードストロームの「タイヤ伝説」が、本当にあったというお話です。

ちょっと長くなりますが、引用してみましょう。

<タイヤ伝説についてご存じない方のために説明しよう。かつてある客が、タイヤを返品して、払い戻しを受けたのである。ノードストロームはタイヤなど一度も販売したことはない。この話は次第に伝説のように語り継がれ、「スノープス」のような都市伝説研究サイトでも、真実ではないと結論するようになった。だがノードストロームによれば、それは一九七〇年代にアラスカ州フェアバンクスの店で実際にあったことだという。その建物はかつてタイヤ販売店で、ノードストロームは移転してきたばかりだったのだ。そこへある客が、ここでタイヤを買った者だが、と言って入って来た。そして店にいたノードストロームの販売員は、その客への払い戻しを決めたのである>

ここに掲載されている決断は、いずれも企業に新たな方向性をもたらし、やがて企業ブランドを確固たるものにした英断です。

わかったことは、英断は永遠ではないにしろ、かなり長い間、参入障壁になり得るということです。

では、われわれはどうすれば「英断」をくだせるのか。

序文を書いているジム・コリンズが、こんなヒントをまとめていました。

◆3つの問いかけ(ジム・コリンズ)
1.「われわれを内側から突き動かしているものは何か」
2.「外の世界の真相は何か」
3.「内なる原動力を外の現実に組み合わせ、世界の誰よりも際だってうまく貢献できることは何か」

リーダーはこの3つの問いかけを自分自身にするべきであり、英断はその結果、下されるものなのです。

エピソードもさることながら、ジム・コリンズの序文がいい。

ビジネスをすることが楽しくなるエピソード集です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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不確実な世界でわれわれにできる最も重要なことは何か。それは適切な人材を周りに配置することである(ジム・コリンズ)

決断を下すうえで、意見の一致など必要ない(中略)執行上の決断を導き出すのは衝突であり、ディベートなのだ(中略)われわれの調査によると、重要な決断が下される前には有意義なディベートが行われることが多い(ジム・コリンズ)

◆3つの問いかけ(ジム・コリンズ)
1.「われわれを内側から突き動かしているものは何か」
2.「外の世界の真相は何か」
3.「内なる原動力を外の現実に組み合わせ、世界の誰よりも際だってうまく貢献できることは何か」

リーダーたちの業績からはっきりわかるのは、その野心が、企業が長期にわたって偉大であり続けることに向けられているという事実である(ジム・コリンズ)

一九九九年、創業者たちは思い切った決断を下す。無料配送と返品自由サービスの開始である。それによってザッポスは、自社の真の競争力は価格ではなく、ひたすら顧客サービスに徹することにあると実感する(中略)ザッポスがこの重要な決断を下してから一〇年超。全国小売連盟は、ホリデー・シーズン中、ネット小売業者の九割が無料配送サービスを展開していると発表した。えてして単純なことがらが、業界全体を活性化するのである(バーン・ハーニッシュ)

「ビジネスに関する報告など一つもなかった」と、上司は熱く語った。「ロシア人の酒の飲み方や、独特の国民性についての話ばかり。しかし、二〇年後、この社員がモスクワ駐在員として赴任すれば、既に友人もたくさんいるうえ、意思の疎通も図れる。そのとき初めて、会社は見返りを得るのである」(ニコラス・バーチャバー)

一九一四年、ヘンリー・フォードは従業員の賃金を日給二ドル五〇セントから五ドルに上げた。その戦略は当時の社会通念を覆すものだった。労働者は怠け者だから、賃金などできるだけ安くしておいたほうがいい、というのが当時の常識だったからだ。しかしフォードは、労働者は大切な財産であると信じるようになっていた。賃金を倍増すれば士気は上がり、離職率は下がる。おかげで、労働者たちは自分たちが生産する、まさにその製品を買えるようになった。それが引き金になって消費者革命が起こり、その結果、地球上で最も豊かな国家が誕生したのである

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『ありえない決断』バーン・ハーニッシュ&フォーチュン編集部・著 阪急コミュニケーションズ
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◆目次◆

序文 ジム・コリンズ
はじめに バーン・ハーニッシュ
1.スティーブを呼び戻せ!
[一九九六年、アップル]
[執筆]アダム・ラシンスキー

2.ザッポスを救った無料配送
[一九九九年、ザッポス]
[執筆]ジェニファー・ラインゴールド

3.サムスンが優秀な社員を遊ばせる理由
[一九九〇年、サムスン]
[執筆]ニコラス・バーチャバー

4.株主より顧客を優先する信条
[一九八二年、ジョンソン・エンド・ジョンソン]
[執筆]ティモシー・K・スミス

5.夢想の時間が生んだ大きな成果
[一九四八年、3M(スリーエム)]
[執筆]ジェフ・コルビン

6.消費者に愛されるコンピュータチップ
[一九九一年、インテル]
[執筆]デビッド・A・カプラン

7.「ジャックの大聖堂」がもたらしたもの
[一九八一年、ゼネラル・エレクトリック(GE)]
[執筆]デビッド・A・カプラン

8.一週間休むビル・ゲイツ
[一九九二年、マイクロソフト]
[執筆]デビッド・A・カプラン

9.ソフトソープのブロッキング作戦
[一九八一年、ミネトンカ]
[執筆]ブライアン・オキーフ

10.欠陥ゼロを目指すトヨタを支えたもの
[一九六一年、トヨタ]
[執筆]アレックス・テイラー三世

11.究極のカスタマーサービス
[一九三〇年代、ノードストローム]
[執筆]ジェフ・コルビン

12.深刻な状況を脱するための特効薬
[一九九三年、タタ・スチール]
[執筆]ジェフ・コルビン

13.707に社運を託したボーイング
[一九五二年、ボーイング]
[執筆]アダム・ラシンスキー

14.IBMの奇策、ベアハッグ作戦
[一九九三年、IBM]
[執筆]アダム・ラシンスキー

15.ウォルマートの土曜日早朝ミーティング
[一九六二年、ウォルマート]
[執筆]ハンク・ギルマン

16.事業に問題が? では大転換だ!
[一七九八年、イーライ・ホイットニー]
[執筆]ジェフ・コルビン

17.利益より信頼を優先する「HPウェイ」
[一九五七年、HP(ヒューレット・パッカード)]
[執筆]デビッド・A・カプラン

18.賃金を倍増する──史上最高の決断?
[一九一四年、フォード]
[執筆]アレックス・テイラー三世

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