【鈴木健二が語る心づかいの技術とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106105233
本日の一冊は、NHKのアナウンサーとして絶大な人気を得て、400万部突破のベストセラー『気くばりのすすめ』でも知られる著者が、「心づかい」をテーマに書き下ろした一冊。
現代日本が失った「心」の問題が話の中心となっており、若い人には小言と取られそうな話も多いのですが、「心づかい」の本質を学ぶ、良いきっかけとなる一冊です。
たとえばわれわれの社会では、<交通事故が起ってから、慌ててそこにガードレールを造ったり、暗い夜道で悪者に襲われる犯罪が起ってから、急いで街灯をつけたり、防犯カメラを設置>することが多いのですが、これではあまりに遅い。
著者の言葉を借りて言うならば、<心づかいの発端となる動機は、何かに気づくこと>であり、われわれは人に言われる前に、何かが起こる前に気づき、行動する必要があるのです。この気づかいの必要性は、他のあらゆる事柄にもおよびます。
本書のなかには、エジソンと母親の例が出て来ますが、「発明」に関して、著者はこんなことを述べています。
<発明をするには、最初にどういう物をどんな形にして作るか、そして、それを人はどんな風に喜んで使うだろうなどのイメージを頭の中に描く必要があります>
先日、インタビューさせていただいたダイヤモンド社の土江編集長が、企画するに際して大事にしていることをこう述べてくれたのと似ています。
<『伝え方が9割』の場合で言えば、伝え方をちょっと変えることによって、今までNoと言われていたことが、Yesになっていく。それで、「伝え方が下手だった、私のような人間の人生が、ちょっとでもプラスにかわったら素晴らしいな」とイメージできました。これが、たとえば住宅ローンの借り換えの本であったとしても同じで、1万部売れれば、4人家族だとして、4万人。住宅ローンの無駄をなくした分、土日に美味しいご飯を家族で食べられるかもしれない。日本全国で4万人の家族が。そういうことを妄想すると、編集意欲が湧いてくるんです>
素晴らしい商品や企画、そしてわれわれが使っている言葉も、じつは「心づかい」から生まれるものなのだと、本書を読んで気づかされました。
<山や川を思い描いて昔の人は「山」や「川」という字を作り、お母さんのおなかの中に赤ちゃんが入っている姿を想像して、「包」むという字を作りました。それらを実際に自分の手で書いてみて、はじめて漢字と人間は心を通じて一つになるのです>
日本のモノ作りの復活は、おそらく「心づかい」を取り戻すことから始まる。本書を読んで、そんなことを考えました。
小言が多いのが気になりますが、教育、モノ作りに携わる方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「思いついたり感じたり考えたりしたら、すぐに手を上げなさい。答はいくら間違えてもいいんだよ。あとで皆でどこでなぜ間違えたかを話しあえばいいし、また間違いの中から新しい考えが出て来るかもしれないんだよ。一番いけないのは、誰かが
答えてくれるだろうと思って、自分では何も考えない子だよ」
心づかいの発端となる動機は、何かに気づくことなのです。交通事故が起ってから、慌ててそこにガードレールを造ったり、暗い夜道で悪者に襲われる犯罪が起ってから、急いで街灯をつけたり、防犯カメラを設置しても遅いのです
決まりきった形の活字の文字からは、文章を綴った人の人柄や面影が浮かび上って来ないのです。ただ単に用事を済ませただけの連絡感があるだけで、文字や言葉を通して、人と人とが触れあい、心づかいを感じさせたりしないのです
発明をするには、最初にどういう物をどんな形にして作るか、そして、それを人はどんな風に喜んで使うだろうなどのイメージを頭の中に描く必要があります
山や川を思い描いて昔の人は「山」や「川」という字を作り、お母さんのおなかの中に赤ちゃんが入っている姿を想像して、「包」むという字を作りました。それらを実際に自分の手で書いてみて、はじめて漢字と人間は心を通じて一つになるのです
昔のたとえに、「辻々の時計になれや小商人」というのがあるように、あ、あのお豆腐屋さんのプープーが聞えたから、いま何時だわと、オカミサン達に言われるようになれば、商人は一人前になったのでした。そのためには、長い期間毎日その町角に到着する努力と習慣が大切です。基本はお客様を思う心づかいです
心づかいは人間だけにするのではなく、人間が使い人間が創ったすべての「物」にも心づかいをしなくてはならないのです
「知的障害がありますが、なぜか洗濯が好きで、自分のものだけではなく、他のどの子のも洗ってくれるんです。困っているのは、どこから来たのか、名前は何というのかがわからないのです。来て一週間ですが……」施設の方の話でした。私は涙が一粒自然に自分の頬を伝って流れるのを感じました。神様はこの子に二つの素晴らしい才能をお与えになったのです。一つは洗濯する能力、もう一つは他の子への心づかいの優しさです
心づかいに対する謝礼はお金でも物でもなくて、相手からの無償の心づかいなのだ
聖書物語の中には、人にしてやったことはすぐに忘れ、人からして戴いたことは永遠に記憶していなさいという意味の話があります
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『心づかいの技術』鈴木健二・著 新潮社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106105233
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◆目次◆
第1講 急須の注ぎ口の心づかい
第2講 もう一度、紙と鉛筆から始めよう
第3講 テレビやゲームの時間を半分に
第4講 夕食の時にテレビを消せますか
第5講 携帯電話を離し、手には本を
第6講 食事の作法はその国民の作法である
第7講 心づかいを映し出す行儀の良さ
第8講 美の極限にあった心づかい
第9講 心づかいが良い言葉を生む
第10講 お願いです。赤ちゃんを産んで下さい
第11講 人はみな光沢を照らしあう平等の間柄
第12講 戦争はまだ終っていないのです
第13講 村おこしは心おこし
ほか
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