【新しい社会の仕組みを考える】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198635676
本日の一冊は、思想家、武道家の内田樹氏と、社会評論家の岡田斗司夫氏が、ポスト資本主義社会における新しい社会の仕組み、共同体の形について論じた対談本。
中心を欠きながら、何となくまとまって流されている現在の日本人をイワシの群れに例え、「イワシ化する社会」を論じたり、拡張型家族のつくり方を論じたり、贈与経済、評価経済について論じたり、じつに興味深い議論が展開されています。
「もういいんです症候群」「自分の気持ち至上主義」といったキャッチ─な言葉で、若者のメンタリティを説明する岡田氏と、社会のあるべき姿、人間のあるべき形を論じる内田氏。
なあなあの議論ではなく、噛み合うところは噛み合い、そうでないところはきっちり論じる骨太の対談で、読み応えがあります。
胸に刺さったのは、二人が持つ、ノブレスオブリージュの思想。
競争を100メートル走に例えた場合、もともと才能のある人間に対し、内田氏は、こんなコメントをしています。
<残り一〇メートルからスタートした人間は一〇〇メートル走る人と競争すべきじゃない。そうじゃなくて、同時にスタートして、自分はさらに二〇〇メートル先まで行けるかどうか、そこに努力を向けるべきでしょう? 一〇〇メートル先のゴールまでしか走れない人には絶対経験できない体感、見ることのできない風景、そういうものをおのれの身体をきしませて経験して、それを「こんなふうでした」って報告すれば、それは人類共通の財産になる>
岡田氏も、自身が主宰するSNSで、経済的、精神的に苦しんでいる中学生の女の子を救うためにどうしたらいいのか? と悩む男性に対し、こんな返事をしています。
<そう思うんだったらおまえが引き取れ。で、おまえが引き受けてるものが、おまえの働く動機になるんであって、おまえが金を稼ぐ目的は、おまえが養える人数を増やすことにある(以下省略)>
「拡張型家族」「贈与経済」「評価経済」…。
これからの社会のあり方、労働のあり方、家族のあり方について、重要な示唆を与えてくれる一冊です。
ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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残り一〇メートルからスタートした人間は一〇〇メートル走る人と競争すべきじゃない。そうじゃなくて、同時にスタートして、自分はさらに二〇〇メートル先まで行けるかどうか、そこに努力を向けるべきでしょう?(内田)
正式な家族だけではなく、拡張型家族を作る選択肢がもっとあるべきだと思います(岡田)
親族を解体し、地域共同体を解体し、終身雇用の企業のような中間共同体も解体して、最終的にみんな孤独になってしまったのは、「ひとりでも生きていける」くらいに社会が豊かで安全になったからです。個人の「原子化」は平和と繁栄の代価なんです。でも、そんな平和と繁栄は歴史的に見ても例外的なものにすぎない。もう、そんなのんびりした時代は終わってしまった。いま統計を取れば、どんな共同体にも属さずに、ひとりで生きている人間のほうが、共同体のメンバーである人間よりも貧しく、非活動的で、進路の選択肢も限定されていると思いますよ(内田)
子どもたちから見て居心地のいい家庭の条件は、子どもたちが親から見ておなじ度量衡では計量されないってことなんですよ。「おまえはこのへんが良い。おまえはこのへんが良い」って、適当にほめるの。どっちが上か下かとか格付け的なことは絶対に言わない(内田)
根源に欲望があると思われたら生きづらくなるから、欲望を消してリアクションだけで生きていくことを選んでいる。欲望がないからリアクションしかすることがない(岡田)
どうやっていい人になればいいのか。それは困っている人を助けるという基本的なことの積み重ねじゃないか(岡田)
人間は強いものに導かれて強くなるんじゃなくて、弱いものをかばうことでしか強くなれない(内田)
贈与は「思ったもの勝ち」なんです。贈与を受けたので、反対給付義務を負ったと思った人間の出現と同時に経済活動がはじまった。無からでもはじめられるというところが経済活動に込められた人類学的叡智なんです(内田)
クラ交易においてもっとも高いポジションにいるのは、たくさんの人とつながっている人。たくさんの人から贈与を受け、たくさんの人に贈与をしている人(内田)
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『評価と贈与の経済学』岡田斗司夫 FREEex、内田樹・著 徳間書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198635676
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◆目次◆
第一章 イワシ化する社会
第二章 努力と報酬について
第三章 拡張型家族
第四章 身体ベースの人間関係を取り戻す
第五章 贈与経済、評価経済
第六章 日本の豊かな潜在力
第七章 恋愛と結婚
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