【鴎外の箴言集を、現代文のカリスマ、出口汪氏が超訳】
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本日の一冊は、森鴎外(文字化けするのでこの字でいきます)が小倉に左遷された前後に連載した、「知恵袋」「心頭語」、東京に転勤し、復権した翌年に連載した「慧語」の3つの箴言集をまとめて「超訳」したもの。
超訳を担当したのは、「現代文のカリスマ」として知られる、出口汪さんです。
出口氏の解説によると、「知恵袋」「心頭語」の原典は、1788年、フランス革命勃発の前年に刊行されたクニッゲの「交際法」。
氏の推測によると、鴎外があえて原典を明らかにしなかったのは、<日本人に必要な箇所を選択し、時には自分の体験を交えたり原典にはない内容を書き加えたりして、思い切った修正・加筆・削除を行っているからではないか>とのこと。
つまり、この<「知恵袋」「心頭語」こそ、「超訳」の走りだった>というのです。
内容は、以前紹介した『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵』に似て、リアリティあふれる箴言なのですが、それもそのはず。
※参考:『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵』
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もう一つの「慧語」の原典は、バルタザール・グラシアンの著作集から、友人ラスタノザが箴言を抽出し、編集したものを、さらにショーペンハウエルがドイツ語訳したもの。そこから鴎外が54箇条を抽出し、超訳したのが「慧語」なのです。
気になる箴言は、以下のように、リアリティあふれるものばかり。
・幸運を他人に打ち明けてはいけない
・他人から棄てられたくないと思うなら、あなたもまず他人を見捨てないこと
・人のために何かをしても、決して見返りを期待してはいけない
・ケチな人とは利害関係を持つな
など、「絆」の時代に人々がしくじりがちなことを、数多くしたためています。
人間関係のヒントとして、ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人の希望をかなえてやるためだけに、権力は行使すべきなのだ
あなたに圧倒された周囲の人たちの眼は、たちまち顕微鏡に変じる
肉体であろうと、精神であろうと、人間の老化を促進する要素が二つある。一つは年齢を若く保つ知恵の欠如。すなわち、愚かさである。もう一つは、これを保つための意志の欠如。すなわち、怠惰である
重要な書類や小物は必ず決まった場所に置き、暗闇でも手探りで取り出せるようにすること
世の中を批判するのはよいが、個人を批判するのは避けたほうがいい
幸運を他人に打ち明けてはいけない
他人から棄てられたくないと思うなら、あなたもまず他人を見捨てないことだ
上司は、自分が部下よりも知的に劣ることを我慢できないものだ。だから、上司に対しては、ちょっとした配慮があってもいい。たとえば、策を献ずるときは、あなたならご存知でしょうけれど、というふうに持ちかけるのである
投げ与えられた食物がどうしてうまかろう。人のために何かをしても、決して見返りを期待してはいけない
上手な手紙の書き手は、人を侮ることなく忠言を与え、人にへつらうことなくして喜ばせる術を知っている
地位や財力で友を選ぶと、互いの上下関係ばかりが気になって、率直に語り合うことが難しい
その人を信用して、いったん交友関係を結んだのなら、告げ口や中傷などに決して心を惑わされてはいけない
策略を地位の高い人に献ずるほど危険なことはない。もし、その策略を用いて、事がうまく運ばなかったら、その責任の一切はあなたに転嫁されることになる。その策の用い方に遺漏がなかったかどうかは、検討もされないのである
ケチな人とは利害関係を持つな
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『超訳 鴎外の知恵』出口汪・著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
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◆目次◆
一.人生の英知
二.処世術の原則
三.夫婦の交際術
四.親子の交際術
五.女性との交際術
六.交際術の極意
七.会話の技術
八.手紙を書くときの心得
九.友人との交際術
十.敵
十一.出世のための交際術
十二.さまざまなタイプの人間との交際術
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