2013年2月17日

『機械との競争』エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー ・マカフィー・著 Vol.3134

【テクノロジー失業の時代? MITによる衝撃レポート】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249212

本日の一冊は、人間の労働力がコンピュータやロボットに取って代わられる「テクノロジー失業」の実態を、米MITの研究チームが明らかにした、衝撃のレポート。

かつてイギリスでは、産業革命の時代に「ラッダイト運動」と呼ばれる機械破壊運動が起こりましたが、現在の世界の先進国では、それと同じ状況が起こりつつあります。

そう、テクノロジーが進歩した結果、知的生産における中間層の仕事が圧迫され、それが雇用統計に表れてきているのです。

<過去一〇年間の労働年齢世帯の収入に注目すると、伸びが鈍化するどころか、六万七四六ドルから五万五八二一ドルへと絶対値で減っているのである。世帯所得の中央値が一〇年ベースで減少したというのは、統計開始後初めての事態だ>

さらに悪いことに、経済学者のスティーブン・D・デービス、ジェイソン・ファーバーマン、ジョン・ハルティワンガーの調査では、<欠員一件当たりの募集頻度がここ一〇年で急速に下がっている>そうです。

興味深いのは、<最もスキルの高い労働者が高い報酬を得る一方で、意外なことに、最もスキルの低い労働者は、中間的なスキルの労働者ほど需要減に悩まされていない>ということ。

そう、これから労働市場は二極化するのであり、本書ではそれに伴う問題と、解決するためのヒントが書かれています。

まず、問題から先に示しておくと、<テクノロジーによってグループ間の所得分布に急激な変化が起こると、国全体の経済成長は損なわれ、総需要の落ち込みを招く>ということ。

解決のためのヒントはいろいろとあるのですが、なかでも興味深かったのは、グーグルのチーフ・エコノミスト、ハル・バリアンが「マイクロマルチナショナル(超小型多国籍企業)」と呼ぶ企業のこと。

マイクロマルチナショナルというのは、10人程度の従業員で全世界を相手に製品を売る企業のことですが、Facebook等のプラットフォームが存在する現在では、決して夢物語ではないと思います。

日本でも今後は、起業家教育を徹底するべきでしょう。

起業するか、転職するか悩んでいる人は多いと思いますが、早まった決断をする前に、今後世界のビジネスがどう動くのか、大局をつかんでおくのも悪くはありません。

ぜひ、参考にしていただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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倍々ゲームでの増加すなわち指数関数的な増加は人を欺く、ということである。と言うのも、最初はこれほど増えるとはわからないからだ

テクノロジーによってグループ間の所得分布に急激な変化が起こると、国全体の経済成長は損なわれ、総需要の落ち込みを招く

ここ一〇年間、需要が最も落ち込んでいるのは、スキル分布の中間層なのである。最もスキルの高い労働者が高い報酬を得る一方で、意外なことに、最もスキルの低い労働者は、中間的なスキルの労働者ほど需要減に悩まされていない

現在世界最強のチェス・プレーヤーは、じつはコンピュータではないのである。人間でもない。では誰なのか──コンピュータを使った人間のチームである

アマゾンのMechanical Turk(メカニカル・ターク)は、手軽な人材活用市場だ。ここを利用すると、ちょっとした知的作業を安い料金で引き受けてくれる人を簡単に見つけることができる

グーグルのチーフ・エコノミスト、ハル・バリアンが「マイクロマルチナショナル(超小型多国籍企業)」と呼ぶ企業にとって、チャンスはますます増えてきた。マイクロマルチナショナルとは、一〇人程度の従業員で全世界を相手に製品を売る企業を意味する

テクノロジーがさらに進歩し、いまよりもっと多くの人が世界を相手に事業を始めることが可能になれば、スーパースター並みの報酬を手にする人も増えるだろう。そうなった場合、勝者総取りの経済では、市場ごとにナンバーワン企業が利益の大半を攫って行くことになる。だがここで忘れてはいけないのは、創出する市場そのものの数には上限がないことである

上司のことこまかな指示に忠実に従うことにかけては、機械の方がはるかに得意であることを、ゆめ忘れてはいけない

経済の健全性を表す指標の一つは、働きたい人全員に職を提供できることだ

ローマーは、「おそらく最も重要なアイデアは、メタアイデアである。すなわち、アイデアの開発と伝播をサポートするためのアイデアである」とも述べている。デジタルフロンティアは、まさにメタアイデアである

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『機械との競争』エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249212

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◆目次◆

第1章 テクノロジーが雇用と経済に与える影響
第2章 チェス盤の残り半分にさしかかった技術と人間
第3章 創造的破壊──加速するテクノロジー、消えてゆく仕事
第4章 では、どうすればいいか
第5章 結論──デジタルフロンティア
解説 日本が世界に伍して戦うには(小峰隆夫)

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