2013年2月23日

『価格の心理学』リー・コールドウェル・著 Vol.3140

【増税時代を生き抜くための値決めノウハウ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534050429

先日、サンマーク出版の編集者から連絡をいただいて知ったの
ですが、稲盛和夫さんの『生き方』が、ついに100万部を突破
したそうです。

※参考:『生き方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195433

本書の刊行は2004年ですから、じつに9年かけて実現した、価値ある100万部。しかもこの本は、中国でも100万部を達成しているという、類まれなベストセラーです。

ご存じのように、稲盛さんと言えば、京セラの創業者であり、この度JALの再生にも成功した、日本を代表する経営者。

その稲盛さんが、経営の教訓として述べたのが、この言葉です。

<値決めは経営>

企業の会計は、複雑にすればキリがありませんが、基本中の基本は、「売上-費用=利益」です。

合理化、コストカットが得意の日本人に、これ以上コストカットを期待するのは酷ですから、やはり狙うは売上の伸び。

しかしながら、少子化の現在では、一見、こちらも難しそうです。

売上の方程式は、「単価×数量×リピート」ですから、数量が難しければ、単価を上げるか、リピートを増やすしかない。リピーターを増やすための策はみなさん打っていますから、おそらく増税間近の今、最重要視すべきは、価格の見直しでしょう。

そこで有効なのが、本日紹介する『価格の心理学』です。

「値段次第で売れ方が変わる」お客の「不合理な選択」の理由を解き明かし、どう値付けすれば買ってもらえるのか、値付けの心理学を解説しています。

著者のリー・コールドウェルは、認知・行動経済学者であり、価格リサーチの専門家。現在は、価格リサーチの専門コンサルティング会社を経営しており、この分野の第一人者です。

商品のポジショニングによって、消費者が支払う金額に大きな差ができることや、グラスが違うだけで心理的な価格は何倍にも変化すること、値上げへの抵抗をなくすために、価格の新旧比較ができないようにすることなど、値決めのためのちょっとしたヒントが紹介されています。

「松竹梅」の理論やアンカリングなど、既に人口に膾炙した理論も載っていますが、よくまとまっていて、読みやすい本だと思います。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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重要なのは、商品のポジショニングによって、消費者が支払う金額に大きな差ができることね。もしチョコレートポットをスーパーでティーバッグの隣に並べると、ティーバッグ1個やコ
ーヒー1杯分の値段と比較されるから、4円から14円の間ね。6個で390円は高すぎるわ。でも淹れたてのカプチーノの隣に並べると、1個400円でも抵抗なく払う

ボトルからワイングラスに注がれたとしよう。するとワインを基準に175mlで560円と見当をつけるだろう。シャンパングラスに注がれると、同じ量で980円かもしれない。それに対して、ハーフパイント(285ml)のジョッキ売りだと、おそらくビールを基準に280円が妥当と思うだろう。ショットグラス売りだと、リキュールと見なして25mlに抵抗なく280円払うはずだ。グラスが違うだけで、価格は11倍になっている

売り手側は、できるだけ高価な商品と類似しているように仕向けて、想定価格を操作できる

◆4種類の根源的な動機
「苦しさの回避」「楽しさ」「時間」「金銭」

ほかの人よりもエリスが高い価格をつけたのは、高く評価しているポイントがあるからでしょ。それが何かわかれば、それぞれの顧客にふさわしい商品をつくって、価格を変えられるわ

商品の独自性が強ければ、高額な金額を支払ってくれるセグメントをメインターゲットにすべき

◆ロバート・シンドラーの実験
被験者に20ドルと25ドルの商品を比較してもらったところ、その価格差は小さいと認識された。ところが価格を1セントずつ安くして、19.99ドルと24.99ドルにしたところ、その価格差はかなり大きいと感じられ、価格が安いほうを選ぶ確率が大幅に上がった

どれだけ正当な値上げであっても売上には悪影響をおよぼす。有効な対策は、商品に修正を加え、単純に価格の新旧比較ができないようにすることである

圧倒的なマーケットシェアの確保を目指す場合は、顧客が自社商品と競合商品を比較する複雑な手間を減らせばよい。本格的な差別化をせず、様式とポジショニングならびにプロモーショ
ンを統一して(たとえば同じ330ml缶を小売店の商品棚に並べてもらうなど)自社の優位性をわかりやすくすれば、買い物の手間を避けようとする消費者の購買行動を利用できる

私たちは同じ商品であっても、保有したことがない、あるいは触れたことがないものより保有しているものを高く評価する傾向が実証されている

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『価格の心理学』リー・コールドウェル・著 日本実業出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534050429

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◆目次◆

第1章 ポジショニングと価格設定
    どこで何と比較させるかで価格は変わる
第2章 原価に基づく試算
    「適正価格」ではなく、「最低価格」を把握する
第3章 顧客心理の読み方
    価格の差別化で顧客の「欲しい」を引き出す
第4章 マーケットのセグメンテーション
    顧客の決定はじつに「不合理」
第5章 バイアスとの戦いと公平さの追求
    マーケットには価格の「壁」が潜む
第6章 記憶と期待
    新商品の価格設定をリフレーミングする
第7章 アンカリング効果
    価格比較の心理を操作する
第8章 マーケットでの競争戦略
    値引き競争を避けるベストプライスの見つけ方
第9章 おとり戦略
    非対称の優位性「ボーラーハット理論」を利用する
第10章 代金の後払い
    支払いがずっと後ならサイフのひもはゆるむ
第11章 ティーパーティー効果
    異なる顧客グループの交流が購買につながる
第12章 バンドリングの技法
    「パッケージ売り」の心理的効果
第13章 無料(フリー)の効用
    「無料(ただ)」ほど素敵な価格はない
第14章 アップセリング
    価格の高い商品に顧客を誘導する
第15章 提携販売とバリュープライシング
    高額商品に価格を吸収させる
第16章 他人のお金
    第三者が支払うときの購買心理学
第17章 価格設定の環境整備
    価格によるメッセージで顧客行動をコントロールする
第18章 「あげる」心理学
    寄付の効用をマーケティングに取り入れる
第19章 価格設定と倫理
    価格は単なる「ものの値段」ではない

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