【宗教学者が見た、日本の7大企業】
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本日の一冊は、松下電器産業(現パナソニック)、ダイエー、トヨタ自動車、サントリー(サントリーホールディングス)、阪急電鉄(現阪急阪神ホールディングス)、セゾングループ、ユニクロ(ファーストリテイリング)といった日本を代表する企業の哲学を、宗教学者である島田裕巳さんが論じた一冊。
・ヤオハンの和田一夫氏は、「生長の家」の熱心な信者だった
・松下幸之助氏の水道哲学は、天理教から生まれた
・トヨタの根底には、日蓮主義の説くナショナリズムと、二宮尊徳の報徳思想が流れている
など、ゴシップ的にも楽しめる一冊ですが、実際の読みどころは、それぞれの企業がどうやって成長の原動力である理念、さらには従業員・取引先を動かすロジックを創っていったか、という宗教学者ならではの視点。
なかでも、日本で最初に事業部制を敷いたとされている松下電器産業と創価学会の組織の共通点を指摘したくだりは、目からうろこでした。
組織にとって、求心力をどう作るかは永遠の課題ですが、問題はそれが必ずしも永続的でないこと。
流通革命を推進しながら、最後は単なる拡大を追い求めてしまったダイエーの中内氏などは、その代表例でしょう。
本書で紹介されている企業の栄枯盛衰を見ていると、なぜ企業において思想が重要なのか、その本質的意味合いがよくわかります。
小手先のインセンティブを考えるよりも、まずは強固な思想を創ること。
そのためにも、本書を読むことには意味があると考えます。
ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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経営哲学や理念は共同体を動かす基本原理
かつて海外にも店舗を出店して隆盛を極めたヤオハンにおいて、会社を大きく発展させた和田一夫氏は新宗教の「生長の家」の熱心な信者で、その教義を社是に取り入れただけではなく、新入社員の研修を生長の家の道場で行っていた
幸之助の人間観は、唯一絶対の創造神を信仰の対象とする、キリスト教やイスラム教のような一神教からは出てこない考え方である。幸之助は、宇宙が生成発展を続けていくことを自然の理法としてとらえており、そこに神の力の働きを認めようとはしない(中略)幸之助の人間観は徹底した人間中心主義である
水道哲学は天理教から生まれた
注目されるのは、幸之助が尊敬の念を抱いていた池田大作の率いる創価学会が、事業部制に近い形態をとっていたことである
中内の経営哲学の形成には、宗教や信仰はまったくかかわりをもっていない。むしろ、彼に影響を与えたのは、後に述べるように毛沢東思想であり、唯物論であった
新興の宗教団体の場合にも、信者の数を急激に増やしている時代には、多くの信者を獲得することを目標に掲げる。そして、それが達成されると、その数倍の数を新たな目標として掲げるようになる。信者が増えるということは、教団の規模を拡大させることにつながる。けれども、だからといって個々の信者の救済が進むわけではない
佐吉は、この日生の日蓮主義から国家を発展させるために産業を興すべきだという考え方を導き出していくことになる。こうした発想は、ただ事業を営んでいるだけでは生まれてこないものであり、日蓮主義の説くナショナリズムが影響した。さらに佐吉は、報徳思想から勤勉で禁欲的な姿勢や労働観を教えられていった
信治郎の宗教とのかかわりのなかから生み出されたのが、「利益三分主義」である。信治郎は、「利益は人様のおかげだ。三分の一を社会に還元し、三分の一はお客さまや得意先にサービスとして返す。残りの三分の一を事業資金とする」と述べていた
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『7大企業を動かす宗教哲学』島田裕巳・著 角川書店
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◆目次◆
はじめに──来る100年を予言する
1.コンピュータの未来──心が物を支配する
2.人口知能の未来──機械の進歩
3.医療の未来──完璧以上
4.ナノテクノロジー──無から万物?
5.エネルギーの未来──恒星からのエネルギー
6.宇宙旅行の未来──星々へ向かって
7.富の未来──勝者と敗者
8.人類の未来──惑星文明
9.二一〇〇年のある日
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