【この本を待っていた。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166608967
先月、クルマを買い、納車までの間、ひさびさに「待ち遠しい」気分を味わいました。
毎日のように新刊が献本される環境のなか、大好きな書籍に関しても、正直「待ち遠しい」と思う機会が減っています。
そんななか、本日紹介する『「編集手帳」の文章術』は、ひさしぶりに「待ってました!」と心が躍った本。
読売新聞の看板コラム「編集手帳」を十年以上執筆してきた著者、竹内政明氏による待望の文章術です。
ちなみに土井は、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、日経MJを愛読していますが、コラムに関しては、この「編集手帳」を一番楽しみにしています。
それだけに、竹内氏の文章術は楽しみにしていたのですが、これまでに出た数冊は、若干センターピンを外していました。
やっと文章術のど真ん中が読めるということで、嬉しさのあまり、今回は発売直後に紹介することにします。
本書『「編集手帳」の文章術』は、名コラムニストの竹内氏が、どんなルールを自らに課しているのか、執筆の際、どんな点に注意しているのか、実際の文を紹介しながら解説した一冊です。
著者が定めた「文章十戒」、「書き出しの3原則」、コラム執筆の手順などが書かれており、「編集手帳」執筆の工夫が、よくわかる内容となっています。
冒頭の「文章十戒」では、「…だ」は調べを裁ち切るため使わない、接続詞に頼らない、大声で語らないなど、全部で10個の戒めが書かれています。ここを読むだけでも、文章を推敲する良いヒントが得られるでしょう。
また、読後感を作り出す「サゲ」を大事にするため、マクラ→サゲ→アンコの順に書くという話も、コラムなどの短い文を書く際、参考になると思います。
ほかにも、東日本大震災の時に書かれた、引用の遊びが一切ない文章、「絆」という言葉を嫌って書かれた文章など、興味深い文例がたくさん紹介されており、じつに勉強になります。
心を動かす名文を書くために、ぜひ押さえておきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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名文の定義は人によってさまざまでしょうが、<声に出して読んだときに呼吸が乱れない文章のこと>と私は理解しています。センテンスとセンテンスを穏やかにつなぐ「…である」に比べて、「…だ」には音読するとブツッ、ブツッと調べを裁ち切るところがあり、どうも用いる気になれません
クレマンソーが形容詞を警戒したように、私は接続詞を警戒しています。なかでも逆接の接続詞、「だが」と「しかし」には常時監視を怠っていません
私が座右の銘として胸の壁にピンで留めている短い詩を紹介しましょう。
「わが詩法」 堀口大學
言葉は浅く
意(こころ)は深く
──『水かがみ』(昭和出版)
第一感を惜しげもなく捨てるためには、第二感、第三感を取り出せる引き出しを持っていなければなりません
「さよなら」と「さいなら」を、声に出して読み比べてみます。どうでしょう。「さよなら」にはいくらか深刻な響きがまとわりついて重く、「さいなら」にはまたすぐに会える軽さが感じられませんか
【第十戒】罪ある身を忘れるなかれ
まず、マクラを書く。次に、真ん中を飛ばしてサゲを書く。最後にアンコに取りかかるのが私の執筆手順です。普通にマクラ、アンコの順で書いていくと、サゲで字数が足りなくなり、ついついサゲを端折ることになります。読者の読後感をつくりだすのはサゲであり、尻切れトンボに終わればコラム全体が台無しになります。サゲは削れません。存分に字数を費やして書き、削るべきはアンコで削るのが「編集手帳」の流儀です
◆書き出しの3原則
1.短い 2.年月日から入らない 3.会話文から入らない
<こと書に関してはこだわりの人だった。>
莫山先生は書家でした。「紙にこだわる」あるいは「墨をする水にこだわる」のなら意味が分かります。書家が書にコダワらなくて、どうしましょう
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『「編集手帳」の文章術』竹内政明・著 文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166608967
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◆目次◆
猫の水泳談義──はじめに──
第1章 私の「文章十戒」
第2章 構成、畏るべし
第3章 「出入り禁止」の言葉たち
第4章 耳で書く
第5章 ここまで何かご質問は?
第6章 引用の手品師と呼ばれて
第7章 ノートから
猫のひとりごと──おわりに──
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