2012年12月19日

『MEDIA MAKERS』田端信太郎・著 vol.3074

【影響力あるメディアを作るには】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883352706

本日の一冊は、リクルートで「R25」の源流となるプロジェクトを立ち上げ、その後ライブドアで「livedoorニュース」を統括、ライブドア事件後は新規メディアとして「BLOGOS」や「MarketHack」、「Techwave」などを立ち上げ、さらにコンデナスト・デジタル社で「VOGUE」「GQ JAPAN」、「WIRED」のデジタルマガジンなどを担当、最近では「LINE」「NAVERまとめ」「Livedoorニュース」を運営するNHN Japanの執行役員として活躍する著者が、メディアの未来を論じた一冊。

メディアとファイナンスの共通点(実体がない、無形物を扱っている、対象への信頼が鍵になっている)、といった話にはじまり、経済の主役が「キャッシュ」から「タレント」と「アテンション」に移っているという話、さらにこれからデジタル化に伴い起こるであろうメディアの変化について、鋭い指摘をしています。

<デジタルメディア上では、ほとんどのコンテンツがノンリニア志向になっていく>という主張や、「見出し」がどんどん説明的にならざるを得ないネット記事の宿命、アンバンドリング化が進展するに伴い、旧来型の大メディア企業が「プラットフォーマーになるのか、プレイヤーに徹するのか」選択しなければならないことなど、これ一冊で、メディアの今後の動向が大まかにつかめるようになっています。

また、メディアの影響力の本質が「予言の自己実現能力」にあるという主張や、「ストック⇔フロー」「参加性⇔権威性」「リニア⇔ノンリニア」の3つの軸でなされるコンテンツの分類方法など、メディアに携わる人なら知っていて欲しいノウハウが満載です。

最終章で語られる個人メディアの可能性と危険性も、興味深く読むことができました。

メディアに関わる方、これからメディアを創る方には、ぜひチェックしていただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆メディアの影響力の本質
予言の自己実現能力

◆メディア上であり得るコンテンツの形態
・ストック⇔フロー
・参加性⇔権威性
・リニア⇔ノンリニア

デジタルメディア上では、ほとんどのコンテンツがノンリニア志向になっていく

広告主に向けて語られる「読者ペルソナ」の設定が、広告主の脳内に呼び起こす「ああ、このメディアの読者は、ウチの製品のターゲットユーザーと近いな!」というシズル感が強ければ強いほど、広告メディアとして、単なる「クリックいくら? インプレッションいくら?」のコモディティ商売からの脱却も可能になりやすい

「FT」は、常に薄いピンク色なのです(中略)紙がピンク色ならば、カフェで新聞を読んだり小脇に抱えて歩いているだけで、「あ、この人はシティで働くエリートだ」と一目でわかる

編集権の独立──高潔さがメディアの差別化要因

「メディアは取材対象との間で、経済的な利害関係を持ってはならない」し、「特定の企業が経済的に利益を得るために、編集判断や原稿内容が左右されることがあってはならない」

「見出し」はどんどん説明的にならざるを得ない

新しいメディアが出てくるたびに、「このメディア上では、ユーザーはどのような無言のメッセージをアーキテクチャから受け取るのだろうか?」と自問自答をし続けましょう

「抱き合わせ販売」されていたものが機能別にバラ売りされる、アンバンドリングが進展しています(中略)旧来型の大メディア企業に今、突きつけられているのは、プラットフォーマーになるのか、プレイヤーに徹するのか? という重い選択です

徹底的にアンバンドリングが進んだ後には、これまでとは違ったメディア環境が広がり、アンバンドルされたものがまた別の視点からパッケージングされ、リワイヤリングされているのではないでしょうか? その際の主役となるプレーヤーは誰でしょうか? 私の仮説では、それは「個人」です
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『MEDIA MAKERS』田端信太郎・著 宣伝会議
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883352706

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◆目次◆

まえがき
第1章 はじめに
第2章 一般ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代
第3章 「メディア」とは何か?
第4章 そこにメディアが存在する意味──影響力の本質
第5章 「コンテンツ」の軸でメディアを読み解く
第6章 「メディア野郎」へのブートキャンプ
第7章 メディアとテクノロジー
第8章 劇的に変わるメディアとメディア・ビジネス
第9章 拡大する個人型メディアの影響力とこれから
あとがき

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