【最期までお値打ち感満載でした。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/409396520X
本日ご紹介するのは、流通ジャーナリストとして活躍し、見事な最期を迎えた金子哲雄さんが、生前にまとめた「死の記録」、題して『僕の死に方──エンディングダイアリー500日』。
最初に断っておきますが、土井は死を売り物にするような書籍の企画は好きではありません。
商売は「価値」を売るのが正道であり、お涙ちょうだいで物を売るのは邪道だと考えるからです。
そう思ってこの作品も手を出せずにいたのですが、知人の勧めで読んでみて、印象ががらっと変わりました。
さすが金子哲雄さん。最期までお値打ち感満載の内容でした。
土井が金子さんとお知り合いになったのは、東京タワーの近く、「商業界」の年末懇親会が最初でした。
お会いしてすぐに打ち解け、その後、「これから『女性セブン』のパーティに行くんですが、土井さんも一緒に行きませんか?」と誘われ、東京駅に移動しました。
商業界のある飯倉から東京駅へはちょっと移動が不便なため、移動にはタクシーがラクなのですが、そこはさすが『超三流主義』の金子さん。
※参考:『超三流主義』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4594060099
土井と部下を引き連れ、しっかり地下鉄で移動したのを記憶しています。
そんな金子さんの「ケチ」ぶりがどこから生まれたのか、前々から気になっていたのですが、このエンディングダイアリーでは、氏が流通ジャーナリストになったきっかけが、生い立ちと共に書かれています。
3歳の時に、初めてひとりで買い物に行かされた時から、「安く買う」ことが大好きだったこと、スーパーで安い洗剤の情報を突きとめた時、お母さんに褒められたこと、「教科書ですら信じるな!」というお母さんの教えを守って、現場主義になったこと…。
本書には、人がどのようにして好きなことに出合い、才能を磨き上げていくのか、その軌跡が書かれています。
有名メディアで露出するための戦略や、見せ方・話し方のコツ、流通現場を見るポイント、パートナー選びの秘訣など、実用面でも、価値ある一冊に仕上がっており、ぜひチェックしておきたい内容。
強く、一読することをおすすめします。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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3歳の時に、初めてひとりで買い物に行かされた時から、私は「安く買う」ことが大好きだったのだ
大事なのは、自分なりの方法で相手を喜ばせることだ
「好きなもの」というのは、人それぞれだから、それが一致するのは難しい。でも「嫌いなもの」が一緒でないと、長く共にいるのは難しい
私は「発展途上」という考え方が好きだ。まだまだ先があるからだ。でも、「俺はすごいんだ!」と言ってしまったら、その人はそこで終わる
最初にチェックするのは、牛肉の値段だ(中略)牛肉の値段の高い安いがその地域の商圏の経済力を端的にあらわしているからだ。一方で、鶏肉や豚肉は、山の手の田園調布も下町の北千住も値段がさほど変わらない。しかし牛肉は圧倒的に違う
「お刺身3点盛り398円」は、売り手と買い手双方が納得する、「適正価格」なのだ(中略)この「3点盛り」、実は他の商品にも当てはまる。例えば週刊誌。350円という値段の中に、芸能、事件ニュース、生活実用……、こうした3点をバランスよく盛り込めているかどうか。できていれば、その雑誌はお得に感じられるだろう
私がテレビやラジオで喜ばれたのには理由がある。私はキーワードを先に出してしまう。いわばサビを先に出す。週刊誌でいえば見出しだ
チャンスはどこに転がっているかわからない。ひとつだけ言えることは、自分はどんな仕事でも「グッドパフォーマンス」を心がけていたと言うことだ
スーツは、デザインがすべてだと私は考えている。特に情報番組に関わる者として、「新しいデザイン」は欠かせない。最新デザインのスーツを着用していないと、視聴者に情報の鮮度まで古臭く感じさせるのではないか、と思う。それに、生地の質感や値段は、テレビ画面に映らない
賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする
結果的に、41歳でのリタイヤかもしれないけれど、倒れるまで仕事をした。いや、倒れてからも仕事をしている。自分は「生涯無休」なのだ
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『僕の死に方──エンディングダイアリー500日』金子哲雄・著 小学館
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◆目次◆
プロローグ 突然の宣告
第1章 流通ジャーナリストと名乗って
第2章 昼も夜も時間が足りない
第3章 発病。あふれてしまう涙
第4章 最後の仕事は死の準備
エピローグ 生涯無休
あとがき「これは、金子が用意した“スタート”です」
会葬礼状
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