【ローソン再生の軌跡】
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本日の一冊は、ローソン再生に取り組んで10年、三菱商事を経て同社CEOとなった新浪剛史氏の改革を、『日経ビジネス』記者の池田信太朗氏が追った一冊。
長年セブン-イレブンの後塵を拝し、親会社ダイエー救済のため、無理な出店を継続。最悪の状態だったローソンを引き継いだ新浪氏が、いかにして同社を立て直してきたのか、その軌跡をたどれる一冊です。
「あなたはエリート商社マン。欲しいのは、ローソンを変革したという『実績』でしょう。短期的に、ローソンが良くなったように見せればそれでミッションは完了。僕たちがその先どうなろうと知ったことではないはずだ」
就任当初、冷めた現場の反応を見て、<「いつか帰っていく筆頭株主からの出向社長」では人心を掌握することはできない>考えた氏は、何と三菱商事から籍を抜き、退路を断ちます。
その後、商品部を外してヒット商品「新潟コシヒカリおにぎり」を作ったり、ナチュラルローソン、ローソンストア100などの業態を次々に展開。
その男前な経営には、読んでいてすっかり魅せられてしまいました。
なかでも印象的だったのは、著者にとって経営者デビュー戦となった企業向け給食会社でのエピソード。
ハーバード経営大学院卒のエリートに対し、なかなか心を開かなかった調理師たちに対し、なんと白い制服を着て、皿洗いをすることで、心を開いていくのです。
夢のあるビジョンと戦略、緻密な計算、人の心を開くコミュニケーション、ゲームのルールを変えてメンバーに勝利を確信させるリーダーシップは、まさに経営者のお手本と言えるでしょう。
ひさびさに読み応えのあるビジネスノンフィクションを読みました。これはぜひチェックしていただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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最強のコンビニチェーンは、セブンイレブンだ。業界二位・ローソンのチェーン全店売上高が一兆八〇〇〇億円であるのに対し、セブンは三兆円を超えている
チェーンの実力を示す「平均日販」(一店舗当たり一日の売上高の平均)で見ると、セブンはおよそ六二万円。差が縮まって来たとは言え、いまだにローソンを一〇万円ほど引き離している
優れた経営のリーダーシップは、越えることなど想像もできない巨大な壁に挑む「意志」を組織の中に生み、鼓舞する。もちろんただやみくもに挑むのではない。勝てないゲームのルールを変えてみせる
新浪改革の一〇年間。一言で言えばそれは、企業内の「個」を奮い立たせて、地域の「個客」と向き合う「個店」を作り上げる、ということだった
新浪は決断した。退路を断とう。社長就任前に社内各部署を見て回っておよそ二週間後、三菱商事社員としてローソンに「出向」するのではなく、三菱商事から籍を抜く道を選ぶ決意を固めた。ここに骨を埋めるという覚悟を新浪は社内に示した
おにぎり異物混入事件から間もない六月半ば、おにぎりの商品開発会議の席上で新浪の檄が飛んだ。「否定ばっかりするんじゃなくて、素人の意見にも耳を傾けたらどうだ!」怒鳴られたのは商品開発チームの伊藤一人ブランドマネジャー。その会議に出席している数少ない商品開発の「玄人」の一人だ。新浪はこの社長直轄プロジェクトのメンバーから商品開発のプロ、「商品部」を徹底的に排除した
「方法」は、それを実行するための「力」が伴って初めて意味を持つ
新浪は「分権」する理由をこう言う。「現場に近づけば近づくほど仮説の精度が上がる」
マスとしてでなく「個」を捕捉する。その考えに基づいてローソンが導入を進めているのがCRMを実現するための「ポイントカード」だ
テクノロジーへの目配りは経営者の仕事
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『個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年』池田信太朗・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482227408X
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◆目次◆
はじめに
第1章 試された「分権経営」
第2章 迷走する経営と上場の「傷跡」
第3章 一番うまいおにぎりを作ろう
第4章 「田舎コンビニ」を強みに転じる
第5章 オーナーの地位を上げましょう
第6章 加盟店オーナーにも「分権」
第7章 「個」に解きほぐされた消費をつかむ
第8章 「強さ」のために組み替える
第9章 僕が独裁者にならないために
第10章 人間・新浪剛史
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