2012年11月8日

『誰もやめない会社』片瀬京子、蓬田宏樹・著  日経エレクトロニクス・監修 vol.3033

【情報爆発時代に、上手に取捨選択する方法】
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本日ご紹介する一冊は、『誰もやめない会社──シニア・エンジニアが活きる無敵のマネジメント』。

社員がすぐ辞める中小企業の経営者なら、思わず手に取ってしまうタイトルでしょう。

本書は、10年間の平均営業利益率約40%、2011年の数字では、50%超を実現しているというシリコンバレーのアナログ半導体メーカー、リニアテクノロジーの驚異のマネジメントを紹介した一冊です。

「古い商品を新しい商品と入れ替えることはしない」
「数が見込める市場からは撤退する」
「在庫は潤沢に持つ」
「企業買収や合併はほとんど行わない」

一見、奇妙な経営方針が、競争力のあるロングセラー商品を生み出し、かつ優秀な人材を惹きつける。

デジタルではなくアナログ、コンシューマー向けではなく産業機器や自動車、軍事、宇宙向け。

賢明な読者であれば、とことん常識に反した経営が、じつは理にかなった戦略であることをすぐに理解することでしょう。

持続的な競争優位性は、企業にとって永遠の課題ですが、リニアテクノロジーの例は、そのために経営者が何をすべきか、どんな組織を作るべきかを教えてくれます。

高い報酬が期待でき、製品企画/製品開発の自由度が高く、尊敬できる人物と働けるなら、人は辞めない。

会社経営に関して、ひとつの理想形を見せていただいた気がしました。

これはぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆リニアテクノロジーの一見奇妙なルール
・古い商品を新しい商品と入れ替えることはしない
・数が見込める市場からは撤退する
・世間では少ないほうがいいと言われる在庫は潤沢に持つ
・効率を求めて製造拠点を集中させることはしない

◆社員が辞めない理由
1.高い報酬を期待できること(平均年収は15万米ドル)
2.製品企画/製品開発の自由度が高いこと
3.業界に広く知られ、敬愛されているアナログ設計者(アナ
  ログ・グル)と一緒に仕事できること

そう簡単に真似のできないアナログ技術は、陳腐化しにくく、また差異化要素も詰め込みやすい

「スワンソンは非常に厳しく、高い水準のものを求めるけれど、結果としてそれはいつも正しい」。こういう評価が社内では中心的だ

だけど、もうひとつ知っていることがあった。「世界はアナログでできている」ということさ。僕らは、アナログICの市場がどれほど大きくなるかはわからなかったけれど、その市場が、決してなくなることはないことは、よく理解していた(創業者、スワンソン)

会社が伸びていくためにはどうしたらいいか。「テクノロジーの進化が止まっている市場で、価格競争をするのは正しくない」「我々は、すでにある市場ではなく、次に成長していく分野に挑戦すべきだ」

スワンソンには、これからのリニアテクノロジーを支える若手に向かってよく使う言葉がある。「You can do better.」「君はもっとできる」だ

新しい回路/製品の設計や創造に必要なのは、「何かをより良くしようと熱望する」ことだ。ひとつの問題を解決した程度で喜んではいけない。ベストなソリューションになるまで、より良い解決を積み重ねること(CTOボブ・ドブキン)

リニアテクノロジーのダイ・バンクでは、工場にストックしておく在庫分が4~6カ月分と、他社の3~4倍に相当するほど多量にため置いていることが特徴だ。このため、他社よりも緊急の災害に強いと評価されている

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『誰もやめない会社』片瀬京子、蓬田宏樹・著 日経エレクトロニクス・監修 日経BP社

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◆目次◆

第1章 シリコンバレーにスゴイ会社があった
第2章 デジタル全盛期に、なぜアナログだったのか
第3章 コンシューマー製品市場には注力しない
第4章 シニア・エンジニアがイノベーションを起こす
第5章 世界が注目する「ダイ・バンク」システム
第6章 リニアが次に、狙うもの

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