2012年11月29日

『不愉快なことには理由がある』橘玲・著 vol.3054

【橘玲氏による社会批評集】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087806634

本日の一冊は、30万部を突破した『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』をはじめ、複数のベストセラーを持つ作家の橘玲さんが、自身の社会批評をまとめた一冊。

もともと「週刊プレイボーイ」に連載していたものに、長いプロローグとエピローグを加えたもので、経済、原発問題、尖閣問題、「ONE PIECE」人気、生活保護問題、いじめ、家族のあり方など、さまざまなテーマを扱っています。

さまざまな学術理論、著者の考察から、われわれの社会に起こっているさまざまな問題を分析・解説しており、さらりと読んでためになる、そんな読み物に仕上がっています。

<貨幣とは親切とお返しのやり取り(互酬)を“見える化”したもの>
<私たちの社会はスモールワールドですから、人気(評判)は特定の人物に一極集中していきます>

など、社会の本質を突いた議論、そしてこれからの日本社会を読み解くヒントが含まれています。

<国家の提供する安全保障が不安定になれば、日本はまた大家族制の社会へと戻っていくのかもしれません>

ネタ元が既に出ているビジネス書、サイエンス書などであることが多く、普段ビジネス書を読んでいる方にとっては、既視感があるかもしれませんが、おさらいには最適の一冊です。

ほとんどのトピックについて、参考文献が紹介されているので、読書ガイドとしても威力を発揮する一冊だと思います。

興味深かったのは、<専門が細分化されていくにつれて、優秀なひとほど社会問題についての発言を控えるようになっていきます(中略)「地雷を踏む(@小田嶋隆)」ような社会批評は、“素人”以外にはできなくなっているのです>というくだり。

もちろん、著者が社会批評をする上での言い訳という部分もあると思いますが、これは的を射ていると思います。

いずれも繊細なトピックですので、異論・反論あると思いますが、なぜ対立が生まれるか、なぜ問題解決が困難なのか、その本質を突いた議論となっており、モノの見方としては面白いと思います。

ぜひ、チェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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専門が細分化されていくにつれて、優秀なひとほど社会問題についての発言を控えるようになっていきます(中略)「地雷を踏む(@小田嶋隆)」ような社会批評は、“素人”以外にはできなくなっているのです

貨幣とは親切とお返しのやり取り(互酬)を“見える化”したものです

ひとは得をすることよりも損をすることにずっと強い感情を持ちます

マクロ経済学が破綻するのは、私たちが生きている世界が複雑系だからです

未来が予測不可能なら、確率論的に正しいリスクをとって危険に身をさらすよりも、損失を回避しながら小さな利益を積み上げていく“不合理な”戦略の方が有効

私たちの社会では、主張の一貫性がきわめて重視されます。議論におけるもっとも強力な武器は、「前に言っていたこととちがうじゃないですか」のひと言です

日本に「強いリーダー」がいないのは、だれも望んでいないから

国民の利害が多様化し、政治的な対立が先鋭化するなかで、領土こそが国家をひとつにまとめるかすがいになるのです

「ユーロ危機」の本質はどこにあるのでしょうか。それは、「国家はもはや市場を制御することができない」ということ

私たちの社会はスモールワールドですから、人気(評判)は特定の人物に一極集中していきます

財政破綻において、若者と高齢者の利害は真っ向から対立します。高齢者と若者がどちらも経済合理的に行動したとしても、高齢者の政治力が圧倒的に強い以上、結果は明らかです。しかし皮肉なことに、それによって国家の借金は膨らみつづけ、来るべき“ハルマゲドン”の規模はより大きくなってしまうのです

国家の提供する安全保障が不安定になれば、日本はまた大家族制の社会へと戻っていくのかもしれません

脳の画像を撮影すると、復讐や報復を考えるときに活性化する部位は、快楽を感じる部位ときわめて近い

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『不愉快なことには理由がある』橘玲・著 集英社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087806634

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◆目次◆

PROLOGUE 世界の秘密はすべて解けてしまった
Part1 POLITICS政治
Part2 ECONOMY経済
Part3 SOCIETY社会
Patt4 LIFE人生
EPILOGUE 進化論的リバタリアニズムのために

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