【非常時に問われるもの】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456980330X
本日の一冊は、東京都副知事として、東日本大震災の大混乱に対処した著者が、非常時の「決断」について語った一冊。
震災時の政府、東電の決断のずさんさは、もはや万人の知るところですが、同時に、「もしわが社に同様のことが起こったら?」と肝を冷やした人も多かったはずです。
悲しいかな、それが政府であれ、民間であれ、平時が長く続けば、非常時への対応が甘くなるのは人間の性。
この機会に非常時への備えをきちんとしよう、と思うリーダーにこそ、本書はおすすめです。
本書のなかに登場するのは、ほとんどが東日本大震災関連のエピソード。
著者が千葉県からの要請を待たず、迅速に消防艇を出動させた話、ツイッターのリツイートを見て気仙沼にヘリを急行させた話など、迅速な対応がいかに重要か、教えてくれるエピソードがてんこ盛りです。
一方で、福島第一原発に直行したにもかかわらず、命令系統の問題で引き下がり、その後状況が悪化した話など、悔しい話もいくつか載っています。
エピソード中心の本ではありますが、ところどころに、非常時のリーダーシップについての言及があるので、ビジネスパーソンはぜひ参考にしてほしいところです。
平時と非常時で異なる「決断」のルール、現場の状況を素早くつかむ方法、「想定外」をなくすための試み、そして危機をチャンスに変える考え方まで、じつにさまざまなことが書かれています。
東京都民として、これまで知らなかったこともたくさん書かれており、じつに勉強になりました。
これはぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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決断は、外見では非連続な思考のように見えるが、そうではない。粘り強さの果てに、ようやく飛躍することのできる蓄えられた力の結果である
たった一人でも東京電力という職場に福島第一原子力発電所の電源のレイアウトを変えなければいけないと主張しつづけた人がいたら、結果は異なっていたのではないか。大震災がなかったとしたら、その人はただの変人と見られたかもしれない。それでもその変人は自分を信じて決断したことを後悔しなかったであろう
既存のルールに従うだけでは、“想定外”の事態に対処できないことは目に見えている。刻々と移り変わる状況に臨機応変に対応し、つぎつぎと襲ってくる危機を乗り越えるためには、最も大事なもの―災害時には、それは人命であり、安全である―を見きわめ、そこに意識を集中しなければならない
千葉県市原市五井海岸にあるコスモ石油のコンビナートが真っ赤に炎上している様子も映し出された。すぐに東京消防庁の防災部長を呼んで、「ただちに消防艇を出そう」と言った。防災部長は「本来なら千葉県から総務省に要請が出され、総務省から東京都に連絡が来る仕組みになっています」と回答。「いいよ、そのプロセスを飛ばそう」と僕は言った。防災部長は「わかりました。消防艇の『みやこどり』は化学薬品も積んでおり、準備はできています」と即答し、その場で出動を決めた。一六時頃のことだ
危機は一瞬で過ぎ去るものではない。刻々と変わる状況に合わせて、つぎつぎと手を打たなければ、機会はどんどん失われ、場合によっては手遅れになる。そのためには、できるだけ正確な状況をつかむこと、集まってきた情報をもとにその場で決断を下すこと、そして結論をすみやかに関係者と共有すること、の三点である
当事者同士でやりとりすれば、ダイナミックな動きも可能になる
「変人」の混ざり具合が重要
いざというときに役に立つのは、普段から使い慣れたものである
自然災害に対する備えでは、時間軸を思いきり長くとって、一〇〇〇年単位で歴史をさかのぼる必要がある。そこまで広げるとたいていのことは“想定の範囲内”になる
東電という巨大な独占事業体の資金調達力が失われているいまこそ、独自の電力会社を育てるときである。東電の代わりに資金を調達し、発電する。“第二東電”をつくる、と言い換えてもよい
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『決断する力』猪瀬直樹・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456980330X
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◆目次◆
I 即断即決で立ち向かう
II “想定外”をなくす思考と行動
III リスクをとって攻めに転じる
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