【勇気が湧く、安藤忠雄の半生記】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532168163
本日の一冊は、「住吉の長屋」「光の教会」「FABRICA(ベネトンアートスクール)」「フォートワース現代美術館」などの建築で知られる稀代の建築家、安藤忠雄さんの半生をまとめた一冊。
日本経済新聞の人気連載「私の履歴書」に加筆したもので、氏の生い立ちから関わった人々、手掛けた作品、作品に込めた思いまでを、エピソード、写真とともに語っています。
元プロボクサーという異色の経歴。しかも学歴なし。
独学で建築を学び、自らの価値観を世に問うてきた著者の、魂と信念が、この本には込められています。
どんな世界であれ、プロを目指す人には、いい刺激になるのではないでしょうか。
そして本書のもう一つの魅力は、彩り豊かな登場人物と、感動のエピソードの数々。
幼い日の著者を育ててくれた気丈な祖母、「数学は美しい」と熱血指導してくれた杉本先生、若き日の著者を支援してくれた建築写真家の二川幸夫氏、「住吉の長屋」を見て心意気を買い、7千坪の美術館の設計を依頼したサントリーの佐治敬三氏など、著者を支えた人々のエピソードが読ませてくれます。
小規模でコストの厳しかった「光の教会」プロジェクトに協力した竜巳建設の一柳幸男社長、著者が東大に赴任する際、「東京でいじめられないように」と、ミナミの料亭で壮行会を開い
てくれた佐治敬三氏、地元の反対にあいながらも、ヴェネチアで歴史的建築物を保存・改修するプロジェクトに挑んだフランソワ・ピノー氏など、とにかく登場人物が粋なのがいい。
著者の仕事論、人生論、教育論もあいまって、じつに読み応えのある一冊に仕上がっています。
「気力、集中力、目的意識」、そして野心。
おそらく著者は、日本人が失ったこれらの資質を、この一冊で取り戻させようとしているのに違いありません。
これから世界で勝てる日本人になるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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文筆家が膨大な量の本を読むのと同じように、建築家は空間を身体で体験する必要がある
モノをつくろうとする人間にとって、大切なのは、どれだけの感動に出会えるか、それを若い多感な時代に積み重ねられるかにかかっているのだと、改めて思う
旅はひとりに限る。ただ一人見知らぬ国を歩く。目指す建築をやっと見つける。不安な道中に希望の明かりがみえる。建築をめぐりながら、自分自身と対話する。まさに歩きながら考える。若い頃、何度となくこんな旅を重ねた
「がんばれ。これからお前がつくる建築は全部写す。そのうち作品集をつくってやる」その一言は、私にとって大きな励みとなった(中略)「建築は独創性と勇気だ。全力でやりきれ」。私が今まで、建築家としてやってこられたのも、二川さんの鋭い目と励ましの言葉があったからだ
ボノは遠い国にいても、私の建築を通して私を知っていた。私も彼の歌を身近に聴いて、彼の存在のすごさを瞬時に認識した。それ以降も彼との交流は続いている。お互い、相手の職業を認め合った上での信用は人間同士の強い絆となっていく
「あの住宅には勇気がある。全力でつくっているのがいい」(サントリーの佐治敬三氏が美術館の設計を依頼した時、住吉の長屋を評して)
建築は規模が大きくなると、設計から完成まで5年以上の歳月を要する。仕事をともにしようとする相手が、この先5年間もつかどうかを、自分の目で確かめに来ているのだ
福武さんには強い信念があった。「経済は文化のしもべである」という言葉は、その信条を的確に表している。人間が生きるために本当に必要な力を生み出すのは経済ではなく、芸術・文化なのだ。芸術こそが人間の道標となり、人々の心を豊かにする
連戦連敗で、厳しい世界を戦い抜くと、ときに思いもよらない形で夢が叶うこともある──だから生きることは面白いのである
人々は考えなくなり、闘わなくなった。経済的な豊かさだけを求め、生活文化における本当の意味での豊かさを忘れてしまった
まず飼いならされた子どもたちに野性を取り戻させたい。野性を残した子どもたちが知性を身につけ、自らの意思で世界を知り、学べば、日本を生まれ変わらせる可能性をもつ人材が育つだろう。この国が再び生き残るには技術革命より、経済より、何より自立した個人という人格をもつ人材の育成が急務である
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『安藤忠雄 仕事をつくる 私の履歴書』安藤忠雄・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532168163
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◆目次◆
建築家の仕事 独学でつかんだ天職
母の生家へ養子 厳しくも優しい祖母
予期せぬこと 初めての大病におろおろ
中学校の先生 「数学は美しい」と熱血指導
ボクシング 弟を追ってプロデビュー
大学進学希望 家計と学力の問題で断念
建築行脚 丹下作品に感動しきり
芸術的感性 若手が集まり互いに刺激
家族 仕事上も妻と支え合い
目標果たす覚悟 専門書片手に昼ごはん
旅行 7カ月ひとりでヨーロッパへ
大阪 強い思い放っておかぬ街
ほか
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