【複雑時代のデザイン原論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4788512475
本日の一冊は、認知心理学の名著、『誰のためのデザイン?』の著者、D・A・ノーマンによる待望の新刊。
※参考:『誰のためのデザイン?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/478850362X/
最近は、iPod、iPhone、iPadなど、アップル社の一連の製品の影響で、シンプルデザインがもてはやされていますが、本書は、そんなトレンドから生まれた表面的なシンプルデザインを一蹴する内容。
いわく、人々はより多くの能力、より多くの機能を求めるのが自然で、それゆえに複雑さは必ず増していくもの。
問題は、それがわかりやすいかどうかにあるのです。
では、複雑なものをどうやってわかりやすくするのか。
ノーマンは、その鍵がわれわれの「概念モデル」にあると説明しています。
冒頭で紹介されているアル・ゴアの散らばった机が、じつは構造を持っているように、一見複雑そうに見えるものでも、そこに概念モデルを見い出せれば、わかりやすくなる。
ゆえに、「デザイナーの仕事は、人々に適切な概念モデルを与える
ことである」とノーマンは説くのです。
日常使う道具のデザインの誤りを指摘した『誰のためのデザイン?』同様、今回の本でも、たくさんのデザインの誤り、問題点が写真入りで紹介されています。
特に面白かったのはトイレットペーパーホルダーのお話で、人間はトイレットペーパーを左右に2つ並べるホルダーを採用すると、必ず大きな方(紙が多い方)を手に取るため、2つのペーパーは均等に減ってしまうそう。
これに対して著者は、「強制選択法」によって逐次的に使われるよう制約を課す方法を提案しています。
本書にはほかにも、構造化やモジュール化、ナッジ(軽いひと押し)、デフォルト、リストなど、複雑さに対処するためのさまざまな理論、ツールが登場し、製品デザインやオペレーションに重要な示唆を与えてくれます。
複雑さと多機能を兼ね備えたアップル社の製品のように、また行列を作っても客からクレームが来ないディズニーのオペレーションのように、認知心理学を知ることは、必ずやビジネスに改善をもたらします。
名著『誰のためのデザイン?』と併せて、ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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デザイナーの仕事は、人々に適切な概念モデルを与えることである
心理学的研究では、左右のボタンの混同が非常によく起こることが示されている。誰しも上下の違いを覚えることはやさしいが、子どもにとって左右の区別はとても難しく、多くの人はそれが大人になるまで続くのである
簡単さは複雑さの逆ではない。複雑さは実世界の事実であり、簡単さは心の中にある
この問題にはデザイン的な解決法がある。二つのロールホルダーが共に均等に利用可能なものの代わりに、逐次的に使われるよう制約を課すというものだ。一つ目のものを使い切らないと二つ目が利用できない、というように。これは、私が、『誰のためのデザイン?』の中で、「強制選択法」と呼んだものだ
※この問題:トイレットペーパーホルダーを置いて、トイレットペーパーを2つ並べると、人は常に大きい方を手に取り、ペーパーは均等に減っていく
仮想世界でも行動の跡を追うことは、物理的世界と同じように有効である。推奨システムは人が残した行動の痕跡を利用する
予想できないものに対処する機械のデザインは、長い時間かけても実現は難しいだろう。しかし、手助けするためにできることは多い。ひとつの賢いやり方は、この駐車精算機のとおりにすることである。つまり、ごく簡単に人の支援を求めやすくしておくのだ
機会を減らせば、集中と深さが増す
客は処理してもらう前には準備をする場所と時間が必要であり、そして終わったときにはさらに片付けるための場所と時間が必要であると理解することだ。二つの場所、つまり二つのバッファを用意して、客が次の客を待たせないようにするのである
そのままでは複雑になってしまう状況を簡素化する一つの方法は、構造を与えることである
自動化によってタスクを行なう必要が無くなる
ときには、望まれるのは優しいナッジ(軽いひと押し)だけということもある
デフォルトを使うことは、我々が生きているこの複雑な世界とインタラクションを単純にするのには有効な方法だ
テクノロジーを扱いやすくする最も強力なツールの一つはリストである
必要なときに大事なことを学べるようにするジャストインタイムの教示が求められるところである
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『複雑さと共に暮らす』D・A・ノーマン・著 新曜社
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◆目次◆
1 複雑さと共に暮らす─なぜ複雑さは避けられないのか
2 簡素さは心の中にある
3 簡単なものがいかにして我々の生活をややこしくするのか
4 社会的シグニファイア
5 人間支援のデザイン
6 システムとサービス
7 待つことのデザイン
8 複雑さに対処する─パートナーシップ
9 挑戦
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