2010年11月8日

『人の心をひらく技術』小松成美・著 vol.2301

【仕事の原点に触れる、感動の一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840135045

ビジネス、政治、教育、ボランティア…。読者のみなさんの活動がどんなジャンルに属するものであれ、おそらく最も大切なことは、「人の心をひらくこと」ではないでしょうか。

あのディズニーランドだって、地元の漁師の方々の心を開くことなしには、おそらく実現できなかったでしょう。

一方で、人の心を無視して進められたプロジェクトのほとんどは、失敗に終わっているという、悲しい現実もあります。

本日ご紹介する一冊は、プロインタビュアーとして、中田英寿やイチローの心を開き、ロックアーティストのYOSHIKIからは、指名で執筆依頼をされたというノンフィクション界のカリスマライター、小松成美さんによる一冊。

これまで、ライターとして、取材相手の言葉を読者に伝えることに徹してきた著者が、その技術を初めて語った、注目の内容です。

土井も著者の作品を何冊か読んでいますが、作品中の著名人の心情描写の豊かさ、細かさには、毎回驚かされます。

写真の世界には、ジョン・レノン&オノ・ヨーコ、デミ・ムーアの妊婦姿を撮ったことで知られ、「彼女の前ではどんな有名人でも脱ぐ」と言わしめたアニー・リーボヴィッツという人物がいますが、小松成美さんは、インタビューで心を脱がせる天才ではないでしょうか。

著者のデビュー戦となったアストリット・Kとの過酷なインタビュー、イチローにあえてぶつけた素人質問、中村勘三郎に叱られながらも心をつかみ、書籍化まで実現してしまったエピソード…。

なかには事前調査の話や、聞く技術、話し方など、テクニック論も若干含まれていますが、読み取るべきは、相手への真摯な好奇心や、思いやり、プロとしての姿勢の大切さでしょう。

どうすればプロとして人の信頼を獲得することができるのか、相手の本音を引き出すことができるのか。

著者が挑んでいる、『人の心をひらく技術』は、おそらくすべてのビジネスパーソンに求められているスキルに違いありません。

読者が営業マンであれ、ホテルマンであれ、雑誌記者であれ、プロフェッショナルとして、人と触れる仕事をしているなら、本書は間違いなく「買い」の一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私たち人間は、一人では生きていけないのです。誰もが、自分を理解してくれる人を求めています。憧れる人と心を一つにし、喜びや悲しみを共有できる瞬間を探しています

尊敬や誠意を表すマナー、情熱や憧憬や好奇心といった心の熱が伝わったときに、それを感じた人の心は、震え、開いていくのです

「私は若い力や可能性を信じることができる人間だったし、今もそうできるはず。ジョンの言うとおりなのよ。あなたの質問によって、私は、今まで自分でも封印してきた過去と向き合うことになった。それは楽しいことばかりではないのよ。本当に逃げ出してしまいたくなることもある。だけどね、私はあなたの夢をかなえるために乗り越えるわ」(アストリット・K)

情報収集は取材の上で欠かせないものですが、それが先入観になってしまうと、とたんにインタビューが持つ可能性を小さくしてしまいます

「中田英寿」という時代の寵児となったアスリートを長年取材した私は、その過程で一つのルールを持ちます。それは、「取材相手(テーマ)とは友達にはならない」ということです

「人間」から真の思いを聞こうとするとき、「親しさ」という関係に依存してはならない

イチローさんを取材した私は、本当に何かを知りたいと思うなら、知らないことを知らないと言う勇気を持たなければならない、と実感しました

取材者は話を聞くという権利を与えられています。その権利を行使するためには、聞く側が何を求め、どんな人間なのかを取材相手に知ってもらう努力もしなければなりません

礼節は、情報を入れる容器(キャパシティー)の確保であり、また「もてなし」の心だと思う

礼を尽くす心は、年齢、性別、環境、職業、人種といった相手の属性で変わるものではありません。変えてはいけないのです

「誰よりもあなたを知りたい」気持ちは必ず伝わる

相手が自己否定的な話し方をしているときには要注意です。自分で自分をひどく否定しているが、それは自分を肯定してほしい、わかってほしい、大丈夫だと言ってほしい、という逆のメッセージの表現である場合があるからです

孤独の中で自分に向き合ったこと、自分と対話したことは、よりよいコミュニケーションを作っていくために絶対に必要です

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『人の心をひらく技術』小松成美・著 メディアファクトリー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840135045

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◆目次◆

第1章 人とつながる現場から
第2章 人の心をひらく
第3章 「人間を聞く」ということ

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