【中国のせいで日本は没落する、のウソ】
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大学時代、学んでおいて良かった学問のなかに、「歴史人口学」という学問があります。
これは、人口の波動と経済の連関を見ていくというもので、社会人になった今でも、この学問でさまざまな現象が説明できるので、重宝しています。
やはり、経済を正しく読もうと思ったら、「人口」は大切な要素なのです。
本日ご紹介する一冊は、この「人口」に着目し、現在の日本経済に起こっているさまざまな問題点を明らかにしたものです。
・中国にビジネスを取られているとばかり思っていたら、じつは対 中貿易黒字は伸びていた
・日本の貿易黒字は、周囲の国が金持ちになればなるほど増える
・雇用の増減の原因は景気ではなくて、生産年齢人口の増減そのものだった
・若い女性の就労率が高い県ほど出生率も高い
この箇条書きを読んでいるだけでも引き込まれますが、本書には、これまでにマスコミであまり語られてこなかった日本経済の真実が
ズバリ、書かれています。
「人口」について勉強した人間にとっては、当たり前のことも書かれているのですが、どうやって労働人口の減少を補うか、という点と、日本がこれから食べていくとしたらこのビジネス、という明快な視点が提供されているのが好感度高し、です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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〇二年以前は日本の対中貿易黒字はまだ数千億円程度でした。ところが今世紀の中国の経済成長に伴って、日本が中国から稼ぐ黒字は二兆円を超えるところまでぐんぐん伸びてきたわけです
最近国内では、「中国の繁栄は日本の敗北だ」と数字もチェックせずに思い込んで被害妄想になって、声高に「中国は早晩ダメになるぞ」とか、逆に「中国のおかげで日本が没落する」とか騒ぐ向きがあります。(中略)でも違います。現実には中国が繁栄すればするほど、日本製品が売れて日本が儲かるのです
日本人は自分のことを、「ご近所のブルーカラー」「派遣労働者」だと思い込んでいます。「賃料の安い仕事が得意だったのに、それを周辺の新興国に奪われてジリ貧になっている」と、勝手に自虐の世界にはまり、被害妄想に陥っている。ところが実際は日本は「ご近所の宝石屋」なのです。宝石屋なので、逆にご近所にお金がないと売上が増えません
実は、拡大G8の中でもフランスとイタリアは、近年一貫して対日貿易黒字なのです。G8以外では、スイスが貿易、所得、金融サービス、特許料と、すべての分野で対日黒字です
何か経済的に見て構造的な理由がなければ、こういう長期トレンドは出てこない
九〇─九八年に青森県民の個人所得が四割以上も増えている。「失われた一〇年」とか言われていた時期ですよ、その頃に青森県民は、年間五千億円以上の所得増を申告していたのです。その間も県の人口は減っていたというのに
そもそも沖縄は、就業者数(率ではなくて絶対数)が、日本の都道府県で唯一順調に増加を続けてきた県
実数で現役世代の減少が日本一なのは大阪府です。その次が北海道で、次が埼玉。それから兵庫、千葉と続きます
雇用の増減の原因は景気ではなくて、生産年齢人口の増減そのものだった
現代の先進国において絶対的に足りないもの、お金で買うこともできないのは、個人個人が消費活動をするための時間
若者を安い給料で使うことで、日本の消費者の使えるお金がどんどん減っていき、巡り巡ってあなたの売上も減っていくのです
若い女性の就労率が高い県ほど出生率も高い
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『デフレの正体』角川書店 藻谷浩介・著
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◆目次◆
まえがき
第1講 思い込みの殻にヒビを入れよう
第2講 国際経済競争の勝者・日本
第3講 国際競争とは無関係に進む内需の不振
第4講 首都圏のジリ貧に気づかない「地域間格差」論の無意味
第5講 地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
第7講 「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる
第8講 声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
第9講 ではどうすればいいのか(1)高齢富裕層から若者への所得移転を
第10講 ではどうすればいいのか(2)女性の就労と経営参加を当たり前に
第11講 ではどうすればいいのか(3)労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を
補 講 高齢者の激増に対処するための「船中八策」
おわりに
あとがき
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