【偉業を成し遂げようと思うなら】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101181381
本日ご紹介する一冊は、今回の旅のお供に持って行った、塩野七生さんによる力作、『わが友マキアヴェッリ』全三巻です。
マキアヴェッリと言えば、『君主論』で知られる中世イタリアの政治思想家ですが、本書では、マキアヴェッリがなぜ、あのような政治思想を持つにいたったのか、マキアヴェッリの生い立ちと祖国フィレンツェを取り巻く政治情勢、彼自身のキャリアを紐解くことで明らかにして行きます。
学歴なしのノンキャリア官僚としてキャリアをスタートし、決して恵まれた環境にはなかったマキアヴェッリが、いかにして仕事に臨み、頭角を現していったか、そのプロセスが描かれており、キャリアの見本としても読める内容。
とくに、作家として名をはせた時代の話は、読んでいて痛快です。
フィレンツェの歴史が示しているように、晩年のマキアヴェッリは、政治に直接的にかかわることが許されず、不遇な時代を送りますが、そんななかでも、祖国のために尽くしたその姿勢には、本当に頭が下がります。
本書の最後は、マキアヴェッリの無念の死で終わるのですが、たとえ報われなくても、自らの仕事を全うしたマキャヴェッリの姿には、きっと感動を覚えるはず。
自らの不遇を嘆く人は、ぜひこれを読んでから。
人を率いる立場の人がこれを読んだら、部下のキャリアや、自らの指導のあり方について、反省させられるに違いありません。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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<1巻より>
人間には誰にも、その人だけがとくに必要とするなにかがあるものである。それを奪いとられたとき、それに無関心な者からすれば納得いかないほど、奪いとられた当人の怒りはすさまじい
認められることなしに、芸術は育たない
大国間の戦争、つまりイタリアの独立と自由をおびやかす理由を他国に与える怖れのある戦争は、えてして大国間の境界に位置する小国へ支配権を広げようとして起る場合が、前者(大国同士が直接の原因によって正面からぶつかる場合)よりもよほど多いのが現実
フィレンツェ人にはもともと、あくなき理想の追求という性向もあった。これが芸術面に発揮されたからこそルネサンスを生むのだが、政治となると、あくなき模索につながりやすい
<2巻より>
マキアヴェッリとなると、まったく反対だった。仕事の分担が明確でないのをよいことに、与えられたことは、与えたほうが期待した以上にし、また、自分で仕事を見つけてきてやるタイプだった
マキアヴェッリは、後年、自前の軍事力をもつことを主張する。自分たちの国の運命を他国の軍事力に頼ってはならないと、執拗に主張する人は死んでも、その人の考えたことと、それを実行に移したやり方は残る」チェーザレ・ボルジアは、歴史上の人物から理論上の象徴になったのである
マキアヴェッリは、こう考えていたのだ。明日の勝利者に恩を売るのは、今日やらなければダメなのだ、と
人間というものは、自分を守ってくれなかったり、誤りを正す力もない者に対して、忠誠であることはできない(マキアヴェッリ)
一五〇九年六月、マキアヴェッリ作の正規軍を主軸にしたフィレンツェ軍は、ピサ再領有に成功したのである
誰でも人は、自らのファンタジアによって行動するものです。……他人に忠告を与えるな。また、一般的なこと以外は他人からの忠告を容れるな。人はそれぞれ、自分の心と意志にしたがって生きるしかありません
<3巻より>
彼の探求分野は、善悪の彼岸にあった。原子物理学者の行う実験にも似て
刺激は、なんでもよい。刺激を受けてそれを、刺激を与えた当人が想像もしなかったものに昇華させることこそ、創造する者の特質である
神に願いたまえ、きみが常に勝者の側にあることを。なぜなら、勝者の側にあれば、きみになんの功績がなくても報われるが、反対に敗者の側に立ってしまうと、いかに功績があっても批難されないではすまないからである(グイッチャルディーニ)
秀才の悲劇は、天才の偉大さをわかってしまうところにある
天才は常に、こだわりのないのが特徴でもあるのだ
マキアヴェッリは、遠くを見る男であった。グイッチャルディーニは、近くしか見ない。クレメンテは、遠くも近くも見ることのできない君主であった
最高責任者である法王も住民であるローマ市民も、この後につづいた惨劇を見た後ならば、あのときの不徹底と非協力を後悔したであろうと思う。敵とて同じキリスト教徒ということで、甘く考えていたのであった
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『わが友マキアヴェッリ』新潮社 塩野七生・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101181381
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◆目次◆
<1巻目次>
序 章 サンタンドレアの山荘・五百年後
第一部 マキアヴェッリは、なにを見たか
第一章 眼をあけて生れてきた男
第二章 メディチ家のロレンツォ
第三章 パッツィ家の陰謀
第四章 花の都フィレンツェ
第五章 修道士サヴォナローラ
<2巻目次>
第二部 マキアヴェッリは、なにをしたか
第六章 ノンキャリア官僚初登庁の日(一四九八)
第七章 「イタリアの女傑」(一四九八─一四九九)
第八章 西暦一五〇〇年の働きバチ(一四九九─一五〇二)
第九章 チャーザレ・ボルジア(一五〇二─一五〇三)
第十章 マキアヴェッリの妻(一五〇二─一五〇三)
第十一章 “わが生涯の最良の日”(一五〇三─一五〇六)
第十二章 “補佐官”マキアヴェッリ(一五〇七─一五一二)
第一三章 一五一二年・夏
<3巻目次>
第三章 マキアヴェッリは、なにを考えたか
第十四章 『君主論』誕生(一五一三─一五一五)
第一五章 若き弟子たち(一五一六─一五二二)
第十六章 「歴史家、喜劇作家、悲劇作家」(一五一八─一五二五)
第十七章 「わが友」グイッチャルディーニ(一五二一─一五二五)
第一八章 「わが魂よりも、わが祖国を愛す」(一五二五─一五二六)
第一九章 ルネサンスの終焉(一五二七)
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