【動物行動学が教えてくれること】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314010630
本日の一冊は、霊長類の社会的知能研究で世界の第一人者として知られるフランス・ドゥ・ヴァールが、強欲・利己的といった価値観を否定し、動物における共感の重要性を訴えた一冊です。
行き過ぎた成果主義が見直される現在にあって、金銭以外の何が人を動かすインセンティブになり得るのか、そのヒントを知る上でも、本書を読むことには意義があると思われます。
本書の冒頭で著者は、オバマ大統領の演説を引用し、こんな言葉を紹介しています。
「人は自己を超えるものに狙いを定めたとき、初めて自分の真の潜在能力に気づく」
この言葉が意味しているのは、利己的なだけでは、われわれは持てる能力を最大限発揮できないということ。
自分の持てる力を最大限に発揮するためには、他者の幸福に目を向ける必要がある。そのためには、本書のテーマである「共感」が必要になってくるのです。
本書では、こうした共感を妨げる考え方(たとえばスペンサー)をことごとく否定し、自然界にいる動物たちの行動を紹介することで、われわれの社会のあるべき姿を指南。
報酬のあり方についてもヒントが得られるので、企業経営の大きなヒントになること、請け合いです。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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二匹のサルに同じ課題をやらせる研究で、報酬に大きな差をつけると、待遇の悪いほうのサルは課題をすることをきっぱりと拒む。人間の場合も同じで、配分が不公平だと感じると、報酬をはねつけることがわかっている
貧しいのは自分が悪いのだと言えれば、貧しくない人は責任を免れる
自然は生存のための闘争に基づいているから私たちも闘争に基づいて生きる必要があるなどと言う人は、誰であろうと信じてはいけない。多くの動物は、相手を蹴落としたり何でも独り占めしたりするのではなく、協力したり分け合ったりすることで生き延びる
コートジボアールのタイ国立公園で研究対象となったチンパンジーたちは、ヒョウに傷つけられた群れの仲間の血を舐め、念入りに泥を取り除き、傷口に寄ってくるハエを追い払うなどして、世話をした。けがをした仲間を守り、彼らがついてこられないと、移動する速度を落とした
配偶者を失った人は、その後の半年間、死亡率が高くなる
収入が一定の水準を超えると、物質的豊かさの重要性は驚くほど小さい
私たちは危機に瀕すると、自分たちを分け隔てるものなど忘れてしまう
もし動物園で新しい檻を設置するとなれば、そこで飼う動物が本来、群居性か単独性か、木に登るか地面に穴を掘るか、夜行性か昼行性か、などを考慮に入れる。それなのに、なぜ私たちは人間社会をデザインするとき、自分の種の特徴など眼中にないかのように振る舞ったりするのか?
他者から物を学ぶには、接触がおおいに重要だ。私たちのチンパンジーは、お手本役の動きを一つ残さず見つめ、報酬を得る前から、観察した動作を再現することも多い。これはつまり、彼らが純粋に観察から学んだということだ
私たちは自分が同一化する相手を真似るばかりではない。その真似が絆を強めてくれる
一九六〇年代にアメリカの精神科医たちが行なった実験によると、アカゲザルは仲間に電気ショックが与えられる場合には、鎖を引いて餌を取るのを拒んだという
人はストレスの多い状況に置かれると、体の触れ合いを求めたり与えたりする
子どもたちはどうしても、自分自身の不安な気持ちを物語の登場人物に投影してしまうのだ
パートナーが美味しそうなブドウをもらっているのを見ると、いらだって、小石や、ときには小さなキュウリさえ実験部屋の外へ放り出した。ふだんはがつがつと貪り食う食べ物が、忌まわしいものになったのだ
社会性のある動物には一律に不公平嫌悪の傾向があると考えている
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『共感の時代へ』紀伊國屋書店 フランス・ドゥ・ヴァール・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314010630
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◆目次◆
第一章 右も左も生物学
第二章 もう一つのダーウィン主義
第三章 体に語る体
第四章 他者の身になる
第五章 部屋の中のゾウ
第六章 公平にやろう
第七章 歪んだ材木
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