【名教師が語る、教えることの本質】
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マネジメントの仕事をしていると、「教える」という点においては、ビジネスも学校教育も変わらない、とつねづね思います。
その共通点は何かというと、ビジョン、目標、戦略があるか、それに沿って戦術が考えられているかということ。
現在、日本の学校教育は迷走しているようですが、その理由は明らかだと思います。
迷走の理由は、国が明確な「戦略」を持っていないから。
そもそも、公教育は税金で成り立っているのだから、公としてどんな人材を育成したいか、その意志がないところに正しい教育も何もあったものではないのです。
そういう意味では、可愛らしい子ども、素直な子ども、自分らしさの教育などといった美辞麗句は、家庭の問題であって、公教育の問題ではない。
国の戦略に基づいた、リアリティある教育こそが、公教育の役割なのです。
本日ご紹介する一冊は、かつて日本の教育に戦略があった時代、名教師と謳われた故・大村はま氏と、その教え子で、苅谷剛彦氏の奥様でもある苅谷夏子氏が対談し、「教えるということ」の本質を考えた一冊。
「大村はま国語教室」と呼ばれ、多くの生徒および教師に影響を与えた名授業が、具体的にどう行われていたのか、その詳細を知ることができる、じつに興味深い一冊です。
全体を通じて印象的だったのは、大村はま氏の、優れたカリキュラムと、個々の子どもへの関心の強さ、さらにはそれぞれの個性に合わせた指導。
どうすれば教室に健全な緊張感を保ち、かつ学ぶことが楽しいと思わせられるのか、どうすれば子どもに感じる力、考える力を身につけさせられるのか。
大村はま流の国語教育には、学ぶべきところが多分にあります。
マネジメントに携わる方、教育に携わる方は、必読。自己学習のやり方を改めたい人にも、おすすめの一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「なぜ子どもは勉強しなければならないのか」という疑問が学校や教師の無力さを印象づける一方で、私たち大人や教師たちは、「なぜ教えるのか」という問いに正面から向き合ってきたのだろうか(剛彦)
「約束の宿題がありましたね。今日が提出日でした。ここに全部そろっているという人が多いでしょうが、中には、これとこれは今日提出するけれども、これは少し遅れる、というような人もいるかもしれません。この紙に、何々を提出するという事情や予定を書いて、宿題に添えて出しなさい。中学は大人になる練習をするところなんだから、友達どうしで『どう書いたらいい』なんておしゃべりしないで、黙ってなさい。さあ、どうぞ」(大村)
授業がいつも図書室で行なわれていたことも、はじめてわかったときには驚いたものだ。必要に応じて辞書や事典は当然のこと、図書室全体の本を資料として扱うような授業のあり方だった(夏子)
わからなければ二度でも三度でも言うけれど、お詫びをしなければ言わないって。大人は聞きそこなったりすると、恐れ入りますがどんなお話でしたか、と、そういうふうに言って謝らなければ聞けない。だからそれをまず国語の時間にやってほしいと言いました(大村)
私が掲示板の係りになったときのことですが、先生が掲示板に貼ったものはすぐ剥がしなさいっておっしゃったの。せっかく作って貼ったものをすぐ剥がすとはどういうことかなと思ったら、どんどん入れ替わる掲示板でないと、人が見ないっていうんですよね(夏子)
勉強のためにはなにものをも惜しまないという精神は、何かにつけて表れていて、たとえば一枚のカードに一項目書いたらもうほかのことを書くんじゃないというようなことを習って、それは驚いたものでした(夏子)
大村流なんですね。二つならくらべられるし、それを我慢してやっていればきっとなにか出てくるというのは一生使える財産だった(夏子)
自分の思っていることがそのまま相手に伝わる力を持ってないような人が集まって話し合いをしても、民主国家にならないじゃないか(大村)
子どもがやりたいと言ったことをそのまま根拠にしてはだめ。人間、やりたいことをやるのも大事なことだけど、やりたくないことでも、やるべきならするようでないと世の中困ってしまうでしょう(大村)
子どもが思わず聞き入る話ができるという力も、先生という仕事には大切なんですね(夏子)
たとえば、自由題の作文を書かせるといったときに、そこにいる全部の子どものために、それぞれ、これをやったらどうかという腹案を持ってない教師がいたとしたら、怠慢だと思いますよ(大村)
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『教えることの復権』筑摩書房 大村はま、苅谷夏子、苅谷剛彦・著
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◆目次◆
はじめに
序 章 「大村はま国語教室」への扉
第一章 言葉・文化を学ぶことの価値観
第二章 大村はま国語教室の実践
第三章 教えるということ
第四章 中学校の教室から大学の教室へ
第五章 教えることの復権をめざして
あとがき
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