【集団行動を合理化する「渋滞学」とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4796658432
以前、『理系思考』の著者の大滝令嗣さんから、こんなお話をうかがいました。
※参考:『理系思考』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270000937/
「成田空港の混雑はおかしい。あれは待ち行列の理論がわかっていない人間がつくったシステムだ。実際、シンガポールではこんなにひどい渋滞は起こらない」
大滝さんによると、「理系思考」を駆使すれば、渋滞というのはかなりの程度、緩和できるのだそうです。
空港に限らず、高速道路、工場、お店、テーマパーク、ホテルのチェックインカウンターなど、渋滞はありとあらゆるところで起こっています。
本日ご紹介する一冊は、この人類の敵である「渋滞」をいかにしたら解消できるかという研究、「渋滞学」に挑んでいる著者が、そのエッセンスを紹介した一冊。
本書によると、渋滞による経済損失は年間12兆円にもおよんでいるとのことですから、720円+税で買える本書は、最近出された本のなかではおそらくもっともコストパフォーマンスの高い本だと言えるでしょう。
で、肝心の中身ですが、これが何とも面白い。
渋滞が起こる原理から、人間心理、たった一人の工夫でできる渋滞解消法まで、じつに興味深い説明がなされています。
朝のラッシュ時、二子玉川―渋谷間の急行をなくしたことで到着を2分も早めた東急田園都市線、非常出口にあえて障害物を設置することで総退出時間を減らした「サイエンスZERO」での実験、東京ディズニーランドでイライラせずに待てる理由など、じつに興味深い話がいくつも入っています。
高速道路からディズニーランド、トヨタ生産方式まで、「渋滞」という視点から幅広く論じた本書。
生産性を高め、ムダをなくしたい経営者はもちろん、ビジネスマンの雑学としてもぜひ押さえておきたい一冊です。
なお、どうでもいいことですが、読み終えたところで、土井の師匠がライティングを担当した本、ということが判明し、非常に驚きました。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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東京都内の車の平均速度は時速約15kmで、時間帯によっては時速10kmを切っている道も多い。都市部の全国平均が時速34kmなので、東京はどれだけ慢性的に流れが悪くなっているかがわかる
渋滞になる直前の車間距離だが、詳細は後述するが、データによればそれは高速道路ならばどこでも40mになっていることがわかっている。そしてこのときの車の速度は時速70kmぐらいだ
自然渋滞は道路の上り坂の部分で起きやすく、しかもこの渋滞が現在、高速道路の渋滞原因の第1位
人の集団にも同じような臨界距離がある。車のように直線に並んで歩行している状態では、この臨界距離は約1mだ。そして通路を普通に広がって歩行しているときは、1平方メートルあたり約1.8人が臨界の密度になっている
ホールや劇場などから退出する場合、お互いの間隔を1秒以下に詰めない方が全員出終わるまでの時間は短くなる
雑踏の中でのタバコは、火が危ないだけでなく、周囲の人は煙を避けようとして間隔を空けて歩く。このため大体5人分のスペースが失われてしまい、渋滞を助長してしまう
人間の心理として早く行きたい、早く着きたいというのがあるため、どうしても車間が空いていると詰めたくなる(中略)しかし、それは結果として渋滞を招くため、とても損な行動なのだ
運転が上手でない人ほど速度メーターを見ていない
大和トンネルにおける実際の例では、照明工事をする前はトンネルに入って出るまでの間に、時速15km程度の速度低下が見られた。しかし改良工事後においては、時速7km程度の速度低下になった
トンネルだけでなく、ただ単にゲートのようなものを道路に渡すだけでも側方余裕のなさのために速度低下が起こることが報告されている
速度÷車間距離を一定に保って運転すると、後ろに迷惑をかけることはない
長い運行間隔で来る電車は混雑し、短い運行間隔で来る電車は空いている(寺田寅彦による研究)
◆リトルの公式
待ち時間(分)=(行列の総人数)÷(1分間の到着人数)
たとえ実質的に前に進んでいなくても、たまに左右に歩かさせてもらった方が待ち行列での停滞のストレスはかなり減る
稟議書の回転スピードを上げるためにはどうすればよいのだろうか。まず、自分が印を押す書類が回ってきたら、例えば1時間おきなどの定時に必ず内容をチェックして印を押し、次に回すとよい
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「渋滞」の先頭は何をしているのか?』宝島社 西成活裕・著
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◆目次◆
はじめに
第1章 「渋滞学」へようこそ
第2章 「渋滞」の先頭は何をしているのか?
第3章 世の中は「渋滞」している
第4章 渋滞学が実現する快適社会
あとがき
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