【堕落した高級ブランドの実態】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062146924
本日の一冊は、パリ在住のファッションライターで、12年間、「ニューズウィーク」パリ支局で文化・ファッション欄を担当したダナ・トーマスが、堕落する高級ファッションブランドの現状と裏側を書いた、衝撃のレポート。
LVMHとしてコングロマリット化して以来、資本主義の権化となったルイ・ヴィトン、ライセンス商法を編み出したディオール、ハリウッドスターを抱き込んで成功したアルマーニやハリー・ウィンストン、堂々とスターを買収したことを認めたショパールなど、数々のブランドの堕落ぶりが歯に衣着せずに書かれており、まさに「衝撃の書」と呼ぶにふさわしい内容です。
また、中国での生産や、素材の質の低下、アウトレットショップ、免税店の経営など、ブランド企業にあるまじき行為の数々が暴かれ、ブランドの信奉者たちにとっては、裏切られた感の強い内容だと思います。
逆に、従来通りの愚直なモノ作りを続けるエルメスなどは、本書によってブランドを上げたのではないでしょうか。
それにしても、ファッションライターの立場でここまで思い切って書くとは、恐れ入ります。
ファッション業界の方はもちろんですが、その裏側をのぞいてみたい個人、商売のヒントを学びたい経営者には、ぜひおすすめしたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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経営陣は、自社ブランドがもっと幅広い層にも行き渡るような工夫を重ねた。ファッショナブルで低価格のアクセサリー類を商品ラインに加えたのである。こうして、かつては家族経営の小さな店を構えるに過ぎなかった老舗ブランドが、世界中に何千店舗も販売網を広げたばかりか、売れ残った在庫品をバーゲン価格で提供するアウトレットをオープンし、インターネット上に電子取引できるオンライン・ショップを立ち上げ、免税店のシェアも着々と増やしていった
目前の経営目標に帳尻を合わせるべく、高級ブランド企業は見えないところでコストを切り詰めていった。素材の質を落とした企業もあるし、ひそかに途上国に生産拠点を移した企業も多い。手作業の職人生産に代わり、機械による大量生産も常態化した。価格を引き上げ、「労賃の高い西欧で生産しているからだ」とウソの申告をして値上げを正当化したところもある
高級ブランドはまた別の犯罪をも引き起こす。日本には高級ブランドのバッグを買うために売春をする女の子がいる。中国の一部の「ホステス」は顧客と一緒に深夜まで営業している高級ブランド店に入り、サービスの代償をブランド品で支払ってもらう
ディオールはライセンスが、コストがかからず経営責任をとる必要もなく、より広い市場に高級ブランドビジネスを展開する1つの方法だとみた
ベルナール・アルノーがヴィトンとLVMHのすべてを掌握してから、この企業はまったく新しい段階に入った。彼の買収の動機はひとつしかない。「高級ブランド産業は、たっぷりと利ざやを稼ぐことができる唯一の分野だ」と彼は言った
「工場を管理すれば、品質管理できます」とアルノーは説明する。「そして流通を管理すれば、イメージが管理できます」2004年までにヴィトンは直営店を300店舗まで拡大し、販売利益の80%を稼いでいるにちがいない、とアナリストは確信している
「ときには、結果が出るまでに時間がかかることもあるのに、市場は待ったなしで結果を求める。心理的にそうやって急かされるのは、我々の仕事にとっていいことがない。情熱に枷をはめるようなもの
だからね」(ジョルジオ・アルマーニ)
高級ブランドは、レッドカーペットを歩くセレブに自社製品を身につけてもらうためなら、手段を選ばない。頼まれもしないのにセレブに(たいていは広報を通してだが)事あるごとに商品を送りつける――これは業界用語で「貢ぎ物」と呼ばれる
今日の高級ブランドの大半は、香水の創作も製造も流通も自社では行っていない。ジョルジオ・アルーニ、カルヴァン・クライン、ジル・サンダー、そしてマーク・ジェイコブスはP&G――「石鹸の会社ですね」とポルジュは言った――などのコングロマリットや、コティ、エスティローダー、ロレアルといった化粧品会社に名前をライセンス供与している
香水に比べると製造が簡単だし、利益率は目の玉が飛び出るほど高い。高級ブランドのバッグの価格は、その大半が製造コストの10倍から12倍だ
2005年、フランス国内にあるエルメスの12ヵ所の作業所でつくられたバッグは13万個。ウェイティングリストのおかげで、同時多発テロの影響で消費が最悪だった2001年にも、エルメスは損失を出すどころか、売上げを伸ばした
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『堕落する高級ブランド』講談社 ダナ・トーマス、実川元子・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062146924
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まえがき
第1部
第1章 誕生そして変貌
第2章 グループの精神
第3章 グローバル化へと突き進む
第4章 スターと高級ブランドの甘辛い関係
第5章 成功の甘い香り
第6章 大切なものはバッグのなかにある
第7章 繊維産業と損なわれた遺産
第8章 いざ大衆市場へ
第9章 偽ブランド品の裏切り
第10章 ブランドの現在位置
第11章 高級ブランドの明日
訳者あとがき
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