【あのカリスマバイヤーのマーケティング論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4884971078
本日の一冊は、かつて伊勢丹のカリスマバイヤーとして名をはせ、その後バッグメーカーの「キタムラ」専務取締役、「セブン&アイ生活デザイン研究所」代表取締役社長などを歴任した著者が、その仕事術とマーケティングのスピリッツを語った一冊。
あえて「スピリッツ」と書いたのは、著者の本に共通する「実用性よりも心構え」が前面に出た本だからですが、今回の本はなかなか心に響くものがありました。
心に響いたのは、マーケティング論ではなく、著者が若い頃、伊勢丹やバーニーズニューヨークで接したお客様、販売員とのやり取りのエピソード。
「あなた、こんな色のジャケットが、今の季節に売れると思うの?」と諭してくれたお客様を見送りながら、静かに礼をした話、バーニーズニューヨークの販売員の心地良い接客にやられた話、包丁売りのプロに憧れ、新宿末廣亭や浅草六区の演芸場に通った話…。
いずれも、著者の仕事人としての姿勢をうかがわせるエピソードばかりで、20代、30代のビジネスマンには、ぜひ読んで欲しい一冊です。
惜しむらくは、この仕事のエピソードが全体のほんの一部だったこと。
これだけで一冊作ってもいいのに、と個人的には思いました。
ビジネスマンの仕事論として、またマーケターの心構えの書として、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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本筋のデザイナーのスピリッツは、日本の匠の心に火をつける
モノを作り、提供する側が確率ばかりを追い求めている限り、いつまでたっても日本人は変われない。優れたグッズは顧客のセンスを育てる。優れた店は本物の顧客を育てる。その信念を持つことが、いま求められているマーケティングの大前提だと思う
いまファッション界をリードする『ケイタ マルヤマ』のデザインのテーマは「大人のかわいい」だし、注目を集めているデザイン家電の『amadana』のコンセプトは「美しい家電」だ
22歳で伊勢丹に入社し、2カ月が経過した6月。まだ右も左も分からなかった頃。バーゲン売り場に立ってベージュのジャケットを販売していたとき、中年の女性客に、「あなた、こんな色のジャケットが、今の季節に売れると思うの?」と、色の効用を教えられたことがある。以来、色は現場で学ぶ、色は自然から学ぶ
雨の日と晴天の日に色のディスプレーを変えるというのも、実はMDの世界ではごくごく当たり前の戦略だ
「あなたのところにあるベージュは、どこにでもあるような見飽きたベージュじゃない。隣の売り場を見てごらんなさい。ほら、ピンク系のベージュもあるし、クリーム系のベージュもある。梅雨時はね、あんな明るい色のベージュを着たいのよ!」
肉眼で観察したときは、ついついマクロの美しさに目を奪われてしまい、自然が織り成すミクロの色使いまでは見えてこない。ところが画像に収めて改めて観察すると、思いがけない色が添えられていることに気づくものだ。だからケータイでパチリ!
価格設定は、いくらで売りたいかというクリエイターの志を示すグランドデザインだ
一販売員であっても川上にまで上って行き、職人さんをきっちりと取材すべきだと思う。そうでなければ、本当のうんちくは語れない。商品カタログを斜め読みしたところで、空虚な言葉が上滑りするだけだ
宣伝部に頼るよりも、自分たちで手書きの葉書を送って欲しい
ブランディングをする際にはやはり、周囲の人間を巻き込まねばならない
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『志マーケティングのすすめ』東急エージェンシー 藤巻幸夫・著
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◆目次◆
はじめに
第1章 売るための3つの要素
第2章 時代をつかめ!
あとがきに代えて
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