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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062136597
本日の一冊は、インターネットがもたらしたメディア、社会の本質的変化を、『グーグルGoogle―既存のビジネスを破壊する』などのベストセラーで知られるジャーナリスト、佐々木俊尚さんが論じた一冊。
※参考:『グーグルGoogle―既存のビジネスを破壊する』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166605011
自身が毎日新聞社で記者をやっていた経験と、「月刊アスキー」で
IT・ネット分野を取材した知識、そして自ら取材した数々のネッ
ト事件をベースに、今後の社会の変容とインターネットが果たす役
割について、示唆に富んだ議論を展開しています。
募金批判の中心人物「がんだるふ」に対し、適切とは言い難い印象
操作を行った毎日新聞、出会い系サイトにはまり、そこに安住を求
めた「瑞穂」、著名ブロガーが元オウム真理教信者だったというこ
とで話題となった「ことのは事件」…。
いずれも著者独自の取材と、そこから得た印象、考察を経て、本書
の中心課題である「インターネットと日本社会の変容」に迫っていま
す。
もちろん、本書の主張はいまだ混沌とした過渡期のインターネット
の話であり、これからの社会の変容次第で修正されていく部分もあ
ると思われますし、インターネット以外の世界の考察も含め、今後
改めて読んでみたい、という部分はあります。
とはいえ、「戦後社会の崩壊によって、人間関係や社会との関係の
組み替えを、徹底的に強いられている」われわれの状況や、「劣化
した知識人ではなく、無数の<わたし>が公共性を担保する」といっ
た見方は、現在の悩める日本人に、生き方の大きなヒントを与えて
くれています。
メディア関係者やインターネットのオピニオンリーダーはもちろん、
ネットに関わるすべての人に読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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インターネットのつくるフラットな空間がマスメディアや人間関係、
政治などありとあらゆる人間関係の事象を、呑み込みつつある
マスメディアにとっての危機は、三つ存在している――匿名言論の
登場と、取材の可視化、それにブログ論壇の出現である
「誰が言ったか」という属人的思考に支配され、「何を言ったか」
がおろそかにされてきたのが、従来型日本のコミュニケーションの
あり方だったのだ。これに対してインターネットの匿名言論の世界
では、こうした属人的思考は完全に排除されている
コンテキストと一次情報がからみあうことによってこそ、奥行きの
深さと生々しさの双方を兼ね備えた強い記事となりうるのだ。しか
し日本のマスコミは戦後長く、このコンテキストの部分を軽視して
きた。コンテキストにもとづいた徹底的な情勢分析を行わず、牧歌
的な社会正義感でのみ記事を書いてきたのである
ノイズや荒らし、中傷、そして友愛と秀逸な言論、さまざまなもの
がごった煮となって渦巻いているインターネットの世界は、そのよ
うな生々しい人間社会のリアルな質感そのものではないのか。もし
そうだとしたら、人間はそのような生々しさに耐えて生きていける
のだろうか
ネット社会によって幸運を得た人たちであっても、あるいはそうで
ない瑞穂のような人たちであっても、いまや全員が一様に、同じ状
況に巻き込まれている。その状況とは何か。それは、戦後社会の崩
壊によって、人間関係や社会との関係の組み替えを、徹底的に強い
られているということである
極論すれば、この世界で、ひとりの人とひとりの人が出会うという
ことは、セレンディピティに支配されているのである
政治家が<公>を独占して担保してしまうことの危険性は、昔からく
り返し語られてきた。その危険性は「独裁政治」という言葉で呼ば
れている。人々に<公>が担わされてしまうことにも、同様に多くの
危険性が生まれる。ファシズムがそうだし、衆愚政治という言葉もそう
だ
ネットの世界は、言葉こそが人々をつなぐきずなであって、その向
こう側に存在する人間同士が、曖昧模糊とした「友愛」によってつ
ながることは期待できない
いまやこのような劣化した知識人ではなく、無数の<わたし>が公共
性を担保することこそが、新たな時代の幕開けを告げる号砲となる
のである
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『フラット革命』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062136597
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┃▼目次▼
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┃ プロローグ
┃ 第一章 フラット化するマスメディア
┃ 第二章 よるべなく漂流する人たち
┃ 第三章 組み替えられる人間関係
┃ 第四章 公共性をだれが保証するのか
┃ あとがき
┃ 主要参考文献・関連URL一覧
┃
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