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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532313384
本日の一冊は、日本経済新聞連載「私の履歴書」で好評を博した、信越化学工業社長、金川千尋さんの自伝をまとめ、大幅加筆したもの。
『社長が戦わなければ、会社は変わらない』以来、5年ぶりの書籍ということで、注目間違いなしの一冊だと思います。
※参考:『社長が戦わなければ、会社は変わらない』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492554661
著者の金川さんは、名経営者として謳われた故・小田切新太郎氏の
懐刀で、社長就任後は同社を12期連続最高益に導いた現代の名経営者。
ちなみに同社は、東洋経済新報社が選ぶ2002年のカンパニー・オブ
・ザ・イヤーも受賞しています。
本書は、そんな優良企業を率いてきた金川社長の半生の記録と、そ
こで培われた経営哲学をまとめた一冊。
戦争で大切な人を失い、敗戦に打ちひしがれた青春時代、商社での
債権回収を経て感じた「破産」の現実、信越化学工業に入社してか
ら出会った大切なビジネスパートナーたち…。
大切な人を失う悲しみを知る著者だからこそ、人を大切にする姿勢
が生まれたのでしょう。故・小田切新太郎社長をはじめ、ポーラン
ドの実力者オルシェフスキー氏、ペルーのトラバー氏などとのやり
取りは、氏がいかに人に恵まれ、それを育てて行ったかがよくわか
るエピソードです。
商社時代、海外企業との会談で居眠りを始めた上司を蹴飛ばして起
こした話、信越化学工業の社運をかけて臨んだシンテック株の買い
取り交渉の話など、金川社長のキャラクターがよくわかる内容で、
じつに好感が持てます。
また、放漫経営により破綻したロビンテック、ニカラグアで起こっ
た革命の教訓からは、経営者として押さえておかなければならない
各種のリスクについて学ぶことができます。
本書を読む限り、仕事漬けの毎日で、プライベートもままならない
生活だったようですが、周囲の人々の信頼に応え、使命に従って生
きた姿勢には、感動すら覚えます。
経営者として、仕事人としてこうありたい。そんなモデルを示して
くれる一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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岡山市では死者が一七〇〇人を超えた。寮で同部屋だった後輩が、
外出先で焼夷弾の直撃を受けて即死した。部屋長として「オヤジ」
と呼ばれた私は「息子」を殺されたのである
敗戦は私にどんな影響を与えたのか。生きる道が定まるのはずっと
後だが、戦争に比べればビジネスの世界での競争などは怖くない、
という気構えができた気がする
国に頼ってはいけないと痛感した。経営者になってからも、国の保
護がなくては成り立たない事業をしてはいけない、というのが私の
一貫した考え方になった
パキスタンから麻を輸入したら、重量をごまかすために石が入って
いたことがある。契約違反だから東京地裁に仮差し押さえの決定を
求めた。決定が出たので長尾先生、執行吏とともに、私は怪しげな
通訳として東京・目黒に住む外国人責任者の自宅に向かった(中略)
大きな冷蔵庫などを片っ端から差し押さえて帰った。日本人はまだ
冷蔵庫など買えなかった時代である。この日の経験で法律や契約の
重要性を痛感した
事故当時、日本に帰っていた私はトラバー氏から手紙を受け取った。
「今回の事故は決して悲劇的ではない。もし悲劇があるとしたら、
それはあなたとの信頼関係を失うことだ」
ロビンテックの経営破綻は、一口でいえば放漫経営のツケといえる。
塩ビ製パイプの売り上げが伸び続け、ブームの絶頂に達したときに、
その状態が当たり前だと思い込んでしまったのが失敗の始まりだ。
だから高い給料で社員を増やし、組織を肥大化させ、自家用機を二
機も抱え、大リーグのオーナーになったのだろう
必要な人間以外は初めから採らない。いったん採ったら大事に処遇
する。これが基本だと思う
M&Aは原則として、当社の事業に関係する企業を対象にしている。
事業領域をあまり狭く限定したくはないのだが、当社が素人の事業
では他社と対等の立場で競争できないからだ
私の仕事は、会社を優良企業にするための方法を「考える」ことで
あり、考えるための時間と場所は選ばない
社長としての私の仕事は、社員に仕事のチャンスを与え、自ら伸び
る人間を見つけることだ
将来の社長候補だからといって、勉強のためにあれこれとポストを
準備するようなことはしない。誰かに育ててもらうようなひ弱いこ
とでは、社長など務まらない
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『毎日が自分との戦い』
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┃▼目次▼
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┃ はじめに
┃ 第1章 六高での三年間――私の原点
┃ 第2章 失敗した実体験があればこそ
┃ 第3章 市場開拓に世界中を飛び回る
┃ 第4章 反発押し切り大鉈振るう
┃ 第5章 経営者としての戦い
┃ 第6章 道は自ら開け――私の経営観
┃ おわりに
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