http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532351871
本日の一冊は、佐々木毅、宇沢弘文、佐和隆光、野中郁次郎、伊藤元重など、計15人の論客が、資本主義の本質的問題と経済システムの課題、そして今後の展望を示したものです。
本来、たった一冊で論じ切れるテーマではないと思いますが、主要な論点をまとめ、意見を整理してくれたという点で、価値の高い一冊だと思います。
各人の論考の終わりに、「さらに知りたい方のために」ということで参考文献も示されているので、読書ガイドとしても有益です。
こういったテーマは、これまで一部の知識人の間だけの議論でしたが、このまま日本が弱肉強食の時代に突入すれば、誰もが考えなければならない問題になると思います。
人間の幸福のために最適の社会・経済システムとは何か、企業や政府はどういう役割を演じていくべきか、考えさせられる一冊です。
ここまでシンプルにまとめられた本も珍しいので、難しいと思わず、ぜひチャレンジしてみてください。
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■ 本日の赤ペンチェック
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人間は知恵を用い、知識を開発し、情報を収集・散布しながら高度の技術を開発して巨大な富を創造してきた。市場は拡大し、貿易のネットは地球を完全に包んでいる。しかしその過程で、われわれの視野は狭くなり短期化し、互いの信頼感を弱めるような風土をつくり上げてしまった
(猪木武徳)
近代の資本主義論がどうであれ、人間の生きることの意味を金銭的計算に還元するような、資本主義の根底に流れる思考様式が抵抗に遭うのは避けられない。つまり、人生の全局面がそうした思想に支配されることへの抵抗や反対を、資本主義は当然予測すべきだし、自らの限界を認めることは決して不名誉なことではない
(佐々木毅)
効率化と「小さな政府」という看板の下、結果的に弱者には打撃となったサッチャリズムに対し、ミドルクラスの多くが「ノー」と言ったのは、いかにも英国らしい。他方、日本のミドルクラスの大半は小泉純一郎首相の唱える「二十年遅れのサッチャリズム」を軽々しく支持する
(佐和隆光)
証券市場と一体の株式会社制度は、富の最大化をもたらす可能性と引き換えに、一部の人間による他の人間の抑圧を生み、人間疎外の増幅装置ともなりうる
(上村達男)
日本の経済システムの一特徴は、企業特殊的人的資本の蓄積であった。それは、今も産業の競争力を支え、むしろより重要になっていくであろう。東京大学の藤本隆宏氏は日本の生産システムの特徴を、米国のモジュラー型に対して擦り合わせ型ととらえ、そこに日本自動車産業の競争力の源泉を求めている。それを支えるのが、企業特殊的熟練を蓄積した多能工である。この部分の維持なしに、日本企業の発展は難しい
(岡崎哲二)
価値観を共有しながらも異能異端の個人を生かす、あるいは企業の合併・買収や提携、アウトソーシングによって得られた「外部からの知」を総合して新しい価値観と知を機動的に創り上げていく、そういう「知識創造の共同体」をどうつくっていくか。そしてそれを、利益追求の機構としての企業体という側面とどう総合するか。雇用形態や報酬体系の問題も含め、それが二十一世紀日本企業にとっての課題ではないだろうか
(野中郁次郎)
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『資本主義の未来を問う』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532351871
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■目次■
第1章 競争と統治とモラル(猪木武徳)
第2章 市場と国家と政治(佐々木毅)
第3章 社会的共通資本の時代(宇沢弘文)
第4章 市場経済と第三の道(佐和隆光)
第5章 市場経済と法(上村達男)
第6章 新しい福祉社会(広井良典)
第7章 世界史から探る将来(杉原薫)
第8章 日本史に学ぶ課題(岡崎哲二)
第9章 知識社会と企業(野中郁次郎)
第10章 技術革新と市場経済(伊藤元重)
第11章 遊びと文化と経済(山口昌男)
第12章 人口減少と制度改革(吉田和男)
第13章 グローバル化と政府(佐藤隆三)
第14章 グローバル化と資本(小野善康)
第15章 資源・環境と世界(十市勉)
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