2005年9月27日

『明日は誰のものか イノベーションの最終解』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270000716

本日の一冊は、名著『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・M・クリステンセンによる注目の新刊です。

※参考:『イノベーションのジレンマ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100234

これまでの著者の本は、どちらかと言えば、企業の意思決定者が能動的に戦略を実行する、という視点から書かれていました。

しかし、今回の本では、イノベーションが業界や企業にどのような変化をもたらすのか、飛躍をもたらす新しい技術を、経営者は初期段階でどう受け止めればいいのか、について述べています。

たった10万ドルの購入をしぶったために、電話という世界最大級のビジネスを失ってしまったウェスタン・ユニオンなどの例を見ていると、イノベーションの潮流を見極めることがいかに重要か、思い知らされます。

また、読めば読むほど、ビジネスチャンスをつかむかどうかは、経営者の考えに左右されるということも理解できます。

既得権のしがらみにがんじがらめになっている旧来型の大企業が、新興のベンチャー企業に買収され始めている今日、本書の持つ意味は極めて重要になっています。

これからのビジネスは詰め将棋ではない、オセロである、ということを再認識させてくれる、そんな一冊です。

事例も豊富で、議論もエキサイティング。問題点があるとしたら、それは著者も指摘しているように、事例がアメリカのものばかり、という点ぐらいでしょうか。
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■ 本日の赤ペンチェック
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◆組織がビジネスチャンスを捉えて成功を収められるケース
1.組織が成功するのに十分な経営資源を確保している
2.チャンスをものにするための要件がその業務プロセスによって整備できる
3.他の要求との間で経営資源の奪い合いになっても、組織の価値観に照らして、特定のビジネスチャンスに適切な優先順位が設定される

◆変化のシグナルの柱となる3つの顧客グループ
1.非消費者 → 破壊のイノベーションが有効
2.満足度不足の顧客
  →金持ちマーケットでの生き残りのイノベーション
3.満足度過剰の顧客
  →ローエンドの破壊のイノベーションかモジュールの交換

探し出さなければならない第一の顧客グループは、興味深いことに、消費をしていない人たちだ

カギは新たなマーケットの規模そのものに注目するだけでなく、その成長率と、その成長率の増加にも目を向けることだ。成長率が上昇を続けている新たなマーケットを見定めることによって、その規模がまだ小さいうちに、重要な進歩発展を特定できる

組織の価値観とは、その従業員が仕事の順位づけをするときの判断基準となるもの

破壊的なマーケットが拡大を始めるのは、既存企業の目にはつまらないと映る顧客、あるいは既存企業の目に全く映らない顧客の中からだ

臨機応変の戦略のプロセスを使うことを通して、経営者にはマーケットからのシグナルを読み解き、それにしたがって戦略的な行動に修正を加えるといった柔軟性が手に入る

既存企業は、実際にはその破壊的な道筋を進ませるような経営資源や業務プロセスを与えてスピンアウト企業を援助することによって、巧みに勝つ可能性を大きくできる

企業は重要なマーケット層に対して過剰に手をかけている。この過剰な取り組みによって、企業には、便利さとカスタマイズを武器に参入するチャンスが訪れる

他の条件がすべて同じだとすれば、破壊を促しそのための意欲を盛り上げるような経済システムを備えた国ほど、長期的に成長する可能性が大きい

海外に進出するにあたって破壊の原理に従う企業に、高い潜在的成長力を期待してよい

◆著者による提言 ※一部紹介
1.読者の洞察に対して、疑う余地のないデータを示しながら異を唱える人に怯えることはない
3.同じイノベーションも企業が違えば非常に違った意味合いを持つ
4.声明を出すことと、実行に移すこととの違いを忘れないように
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『明日は誰のものか イノベーションの最終解』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270000716
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■目次■
序章 変化を予測する
第1章 変化のシグナル――ビジネスチャンスはどこにあるのか
第2章 競争のための戦い
第3章 戦略的な判断
第4章 非マーケット要因はイノベーションにどのように影響するか
第5章 破壊的な卒業証書――教育の未来
第6章 破壊がその翼を広げる――航空の未来
第7章 ムーアの法則はいずこに――半導体の未来
第8章 超肥大業界を癒す――ヘルスケアの未来
第9章 海外のイノベーション――理論を応用して企業や国家の戦略を評価する
第10章 銅線を切る――通信の未来
結論 次は何か
付章 主な概念のまとめ
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