2005年6月28日

『成功するM&A失敗するM&A』

http://tinyurl.com/aj7ks

本日の一冊は、日経BP社の違いのわかる男、T氏が、弊社の移転後第1号の宅配便をねらって送ってくれた一冊です。

見事第1号に輝いた上、ちょうど土井が注目していたタイトルが送られてきました。相変わらず粋な方です。

最近、ライブドアの堀江さんの件があってから、日本でもM&Aが注目されてきましたが、この分野の先進国、アメリカでは、既にさまざまな買収合戦を経験し、ノウハウも蓄積されています。

本書は、かつて話題となった『Big Deal:Mergers and Acquisitionsin the Digital Age(2000)』の第3部を翻訳したものです。

ちょうど2000年は、アメリカでも大型案件が続出した年であり、それゆえに本書の内容もかなりダイナミックなM&A事例が中心となっています。

著者のブルース・ワッサースタインはM&A専門の投資銀行ワッサースタイン&ペレラの会長兼CEOで、本書には、その専門家としての視点が生きています。

M&Aの裏舞台で活躍するアメリカの専門家、敵対的買収の際に駆使されるさまざまな戦術…。通常はなかなか知る機会のない、M&Aに関するさまざまなエピソードや知識が盛り込まれています。

500ページ近い大著ですが、文章も読みやすく、あっという間に読み終えることができました。

アメリカで行われた、歴史的な「ビッグディール」とその裏舞台を活写した、じつに刺激的な読み物です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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最近相次いでいる大型M&Aは、世界経済に地殻変動が起こっていることを示している。マイクロチップ、サービス、アウトソーシングが中心の脱工業化の時代が始まろうとしている。その一環としてグローバル化の傾向が強まっていく。この渦巻きの中心にあるのが企業の買収、合併、事業売却といった資産再構築の動きである

敵対的買収が企業の戦術として一般的になるまで、委任状争奪戦が現経営陣から経営権を奪取する唯一の手段だった。これは現在でも重要な戦術で、全面的な買収提案より割安な手段として利用することがある(中略)委任状争奪戦では不満を持つ株主が独自の取締役候補者名簿を作成し、経営陣とは別に委任状を勧誘する

裁定取引者は究極の短期投資家で、なるべく短期間で大きな投資収益をあげることを重視している(中略)経営者やアドバイザーに電話攻勢をかけ、マスコミを利用し、あらゆる手段で利己的な利益を追求する。経営陣にとっては、裁定取引者の目的を理解し、発言のほとんどがはったりや虚勢である点を忘れないようにすることが重要だ

広報の専門家はM&Aに大きな影響力をもつようになってきた。M&Aの世界では、一貫性と説力のある主張をすることがさまざまな面で重要である

買収の成否は買収価格だけでは決まらない。その企業をどのように経営するか、買収で生まれた機会をいかにうまく利用するかも大きく影響する

◆買収契約書に盛り込まれる基本事項
価格条件、当事者の表示、約定条項、取引完了の条件、損害補償

経営陣の持ち株比率が高い。従業員の忠誠心が強い。株主の株式保有期間が長く、投資収益率が高い。そして、浮動株が少ないと敵対的な買収は難しい

◆競売者の鉄則
1.つねに買い手より多くの情報を持つ
2.買い手が何を重視しているかを知る
3.進行のペースを管理する
4.絶好の機会であることを売り込む
5.現実的な予測を提示する
6.質の高いデータ・ルームを用意する
7.問題点を明らかにし、回答を用意する
8.適正な入札手続きを行なうという姿勢を明確にする
9.柔軟な姿勢を保つ
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『成功するM&A失敗するM&A』
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■目次■
はじめに
序文
第1章 M&Aに参加する人々  
第2章 買収価格
第3章 M&A取引の構造    
第4章 取引の実行
第5章 攻撃戦術   
第6章 防衛――戦うべきか、売却すべきか
第7章 防衛――塹壕を張り巡らす   
第8章 防衛――戦場での戦術
第9章 政府の介入
あとがき
解説、ちょっと小説風 牛島信
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