本日の一冊は、ボストン コンサルティング グループのヴァイス・プレジデント、今村英明さんが書いた、法人営業に関する論考です。
冒頭で、「法人営業取引の分野で、今マーケティングが非常に重要になってきている」と述べていることからわかるように、営業というよりはマーケティングの本です。
著者も「はじめに」で書いているように、マーケティングの教科書のほとんどは消費者向けの商品やサービスを対象にマーケティングを論じており、法人営業を対象にした本格的な書籍というのは、おそらくこれが初めてです。
一体、法人営業と消費者向けの営業はどう違うのか。成果を出すためのアイデア・考え方とはどんなものなのか。
さっそく、要点をピックアップしてみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック
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「マーケティング・ロジックをもつか、もたないか」が営業の業績を決定的に左右する。「マーケティング・ロジック」とは「マーケットを科学的に観察した結果発見した、自社にとっての勝ち方」のことである。
◆営業現場の現実
・自分勝手に行きたい顧客を選んで訪問している
・自分勝手に判断して個別に値段を決めている
・自分勝手に判断して個別に販促費を投入している
経営者が、自社の営業活動の実態を客観的な分析や診断にさらし、自社の活動が「あるべき姿」から遠いということをしみじみ認識するところから、営業改革が初めて本格的にスタートできる
◆マーケティング・ロジック欠乏症の要因
1.視野狭窄(これまでの市場、製品、顧客にとらわれる)
2.KKD依存(経験、勘、度胸にのみ頼ってしまう状態)
3.オキャクキング錯覚(お客様は神様)
4.GNN依存(義理、人情、浪花節)
5.ローンウルフ性癖(一匹狼=単独行動)
6.価値自律失調(価格に対するコントロールを失う)
◆市場を科学するのに役立つ4つの道具 ※詳細は本書を参照
1.チャンス・マップ
2.顧客セグメンテーション
3.売上方程式
4.競合ベンチマーキング
◆法人向けビジネスの2つの戦い方
1.標準化戦略=安く、大量に販売
2.カスタマイゼーション戦略
◆法人顧客を深く理解する手法
1.顧客ターゲティング
2.ディープ・カスタマー・ディスカバリー
(1) ニーズ深掘りマップ
(2) EVC(顧客経済価値)
(3) DMU(意思決定主体)
◆収益アップを達成するプライシング手法
1.セグメンテーション・プライシング
2.バリュー・プライシング
3.ミニマム・プライシング
4.トレードオフ・プライシング
5.コストダウン・プライシング
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分析手法に関する内容が大半ですが、バリュー・チェーンを用いたチャンス・マップや、顧客セグメンテーションの代用指標、法人向け事業の売上方程式などは、意思決定プロセスや購買プロセスが複雑な法人顧客の場合、確かに有用な手法です。
というわけで、本日の一冊は、
『法人営業「力」を鍛える』
http://tinyurl.com/9akru
です。大企業向けの営業活動には、役立つ視点が満載の一冊です。
■目次■
はじめに
序章 できる営業スタッフは何が違うのか
第1章 日本企業に蔓延するマーケティング・ロジック欠乏症
第2章 チャンスを再発見する――市場を科学する技術
第3章 戦略を再考する――「標準化」と「カスタマイゼーション」
第4章 顧客を再発見する――ニーズや意思決定の構造を分析
第5章 取引関係を再構築する――顧客アプローチの方法
第6章 プライシングをやり直す――高収益を実現する値付け
おわりに
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