本日の一冊は、デルの会長を経て、現在はコンサルタント、講師として活躍中の吹野博志さんが、デルのダイレクト・モデル経営の特徴と、その思想を明らかにした注目の新刊です。
ダイレクト・モデルそのものについては、既にさまざまな媒体で取り上げられていますが、本書が優れているのは、このダイレクト・モデルを、他の企業がどのように取り込んだらいいのか、という視点が盛り込まれているところです。
デル以外に、このモデルを採用している企業の例なども挙げられており、とても参考になります。
さっそく本書の主張ポイントを見て行きましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック
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インターネットが普及する二一世紀は消費者が必要な情報を手に入れ、発信する、多品種少量の受注生産の時代
◆SOFTカルチャーの時代
S=スピーディ&シンプル
O=オープン
F=フェア&フレキシブル
T=トランス・ペアレント&チーム・オリエンテッド
※デルの企業文化は、これに「データ・ドリブン」「ペイ・フォー・パフォーマンス」「カストマー・フォーカス」「スモール・エクスペリメント」(小さな実験で確認し、グローバル展開)が加わる
ダイレクト・モデルは顧客に密着し、長期にわたって顧客リレーションシップを築いていくモデルだから、日本的といってもいい
◆デルの3つの戦略
1.ダイレクト・モデルというビジネスモデル
2.インターネットを有効に使う戦略
3.一点集中事業や製品分野で焦点を絞り、特化していく
◆ダイレクト・モデルの四本柱
1.戦略的パートナーとの共同開発
2.受注生産
3.直接販売
4.ダイレクト・サポート・サービス
変化に対応するためには、量産型のつくり込み、在庫販売は損
「市場変化を先取りする」とか「時代の風を感じとる」とかいう。その言葉自体は美しいが、ではそのためにどうすればよいのか。いちばんわかりやすいのは、顧客とダイレクトにコミュニケートすることだ
ダイレクト・モデルで成功している企業はいずれも、顧客志向の強烈な文化をもっている
ダイレクト・モデル経営を実践しようとすれば、必ず抵抗勢力が出てくる。強力なリーダーシップがないかぎり、腰砕けになってしまう
ダイレクト・モデルにも問題点や弱点はいろいろある。たとえば、納期に時間がかかるとか、コストが余計にかかるとか、要するに効率が悪いということだ。そういうマイナスをいかに克服するかがポイントになる
「本社力」に「現場力」が結合すると、企業はさらに強力になる
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高級温泉旅館の料理に対する批判などはちょっと行き過ぎの感もありますが、全体としては、単純にダイレクト・モデルを礼賛するのではなく、その問題点にまで踏み込んだ、好感の持てる一冊です。
というわけで、本日の一冊は、
『ダイレクト・モデル経営』
http://tinyurl.com/4zmle
です。自社のキャッシュフローやコスト構造、顧客へのサービスを改善したいと考えている経営者には、ぜひ読んでほしい一冊です。
■目次■
はじめに
序章 二〇世紀型から二一世紀型へ
第1章 ダイレクト・モデルとは何か
第2章 ダイレクト・コミュニケーションと企業文化
第3章 ダイレクト・モデル経営の実践
第4章 もう一つのダイレクト・モデル経営
第5章 進化するダイレクト・モデル
第6章 「二一世紀は日本の世紀」に向けて
おわりに
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