本日の一冊は、日本ヒューレット・パッカードの代表取締役社長、樋口泰行さんによる初の著書です。
松下電器産業に入社して、溶接などの地味な現場仕事を体験し、下積みを経て花形部署に異動。その後、MBA留学を経て、ボストンコンサルティンググループ、アップルコンピュータ、コンパックコンピュータ、日本ヒューレットパッカードと華麗な転進を遂げた著者ですが、その過程には、並々ならぬ努力がありました。
安易な転職がもてはやされている時代に、あえて「愚直な生き方」をテーマにもってきた編集者に、心からの拍手を送りたい、そんな一冊です。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック
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多くの人にとって、仕事は起きている時間の大半を占めているはずだ。その仕事で喜びを見出せなければ、思い通りの人生は描けないだろう。
人間の成長は「熱意」と「経験」の掛け算で決まる
溶接事業部は人員が少ない分だけ新入社員といえども即戦力と見なされる。仕事の内容も、設計以外に多岐にわたる。
ニッチ産業とはいえ、長く使われるような技術を発明できたのは、技術者として大きな自信につながった。
ビジネスは、「異文化」を理解し、異文化間コミュニケーションというものが成立して初めて動くようになる。だとしたら、自分の身体に「異文化」を刷り込んでいくことは非常に有用で、それに合わせてコミュニケーションできる素地が重要だと認識させられた。
会社が繁栄して成長していくにしたがって、社員の数も増えていく。そのときに、一人ひとりの価値観がバラバラだと、組織の求心力は失われてしまう。
ハーバードの二年間は、ひと言でいうと「人格改造講座」であった。松下時代は、引っ込み思案とまではいかないまでも、不言実行を是とするタイプだった(中略)しかし、ハーバードでは、授業のたびに先生や同級生に対して自分をアピールし続けなければ生き残れない
易きに流れそうになるとき、なぜ自分がここで踏ん張らなければならないか。その理由を明確に持っているかどうかがキャリアの分かれ道になる。
自分自身が成長できるような環境は、自ら手に入れるべきだと思う。努力して「スコープ」を広げても、それを生かせる環境にいなければ意味がない。むしろ、自分に対しても、社会に対しても不誠実
社長の仕事とは、不謹慎な言い方をすれば「皿回し」のようなものである(中略)あまり一枚の皿に時間をかけていると別の皿が落っこちてしまうので、すべての皿の動きを眺めながら、バランスよく皿を回していく。
◆これからのビジネスパーソンに求められるマインド
1.パッション
2.オーナーシップ・マインド
3.コラボレーティブ・マインド
4.スピード感
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MBA留学のエピソードなどは、よくある話なので、若干退屈でしたが、全体的には、学問と実践のバランスがとれた、興味深い主張が展開されています。
というわけで、本日の一冊は、
『「愚直」論』
http://tinyurl.com/4yv9u
です。自分のキャリアをどうやって築いていくか、ヒントを探している方には、ぜひおすすめしたい一冊です。
■目次■
序章 試練を糧にせよ――目の前の仕事に打ち込めば、成果は後からついてくる
第1章 仕事の閉塞感――日本企業の技術者だった私がMBAに挑戦した理由
第2章 人格改造講座――ハーバード・ビジネススクールへの留学で手に入れたもの
第3章 実力主義の世界――戦略系コンサルティング会社の徹底した「アウトプット主義」
第4章 外資系の文化――外資系コンピュータ会社で体験した異質の企業風土
第5章 社長という職業――巨大合併の混乱の中で日本HPの社長となって
第6章 激動時代の働き方――経営者としての立場から語る、これからの人材像
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