本日の一冊は、久々に、日経BPの「違いがわかる男」T氏がおすすめしてきた本です。非常にこだわりの強い方で、滅多におすすめされないのですが、確かに、この本はとがっています。
内容は、かの有名な「ロールシャッハ法」や「血液型人間学」「内田クレペリン検査」といった心理テストの問題点を指摘・批判するという実に刺激的な議論。
後半部分では、さりげなくSPIなんかも斬っています。
社会調査の基本や、統計的な考え方を学ぶという意味で、ビジネスパーソンにとっても有益な一冊だと思います。
いくつか、ポイントをピックアップしてみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック
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◆「血液型人間学」
各血液型で肯定率(あるいは否定率)が7割を超えた質問がかなりあった。(中略)誰でも集中力にはムラがあるし、現実的な面とロマンチックな面をもっている。思い出を大切にしない人はいない。そして堅実な暮らしを望んでいる……。こんなことを聞いても、個人差や性格は明らかにならない。性格テストを作る場合、こういう質問は真っ先に削除の対象になる。(中略)一般的には、「はい」や「いいえ」の回答率は7割以下でないといけない。
政治家や野球選手やマラソン選手など、特定のサンプル集団が日本人の平均的な血液型分布と違っていても、血液型以外にさまざまな要因がある。これらの要因の影響力を取り除いて、血液型の要因だけを取り出さないと、血液型人間学の仮説を証明することにはならない
◆イギリスの心理学者ファーナムとスコーフィールドの主張 ※一部のみ
・権威主義的な人、他人からの承認欲求の強い人は、だまされやすい
・心地よい内容であれば、偽の情報でも信じやすい
・心理的な援助を求めている人は、不安が高いので、どんな内容でも信じてしまう
・実験者が立派な人で、情報が快い内容であれば、バーナム効果に陥りやすい
※バーナム効果とは、「誰にでもあてはまるような一般的な性格記述を、自分だけに当てはまるとみなしてしまう現象」
バーナム効果の研究から、肯定的表現は信じられやすいが、否定的表現は好まれないことがわかっている
◆ロールシャッハ・テスト
インクのシミが明らかにするのは、唯一、それらを解釈する検査官の秘められた世界である。これらの先生方は被験者のことよりも自分自身のことをたぶん多く語っている(アナスティシ)
エクスナの点検作業の結果、さらに驚くべきことが明らかになった。基準データは700名の正常者と書かれていたが、実は221名のデータが重複して入力されていた。つまり、479名のデータであった。エクスナはこの事実を2001年末のワークショップで公表した。非難が巻き起こった。臨床家は、10年もの間、間違ったデータで診断していた
◆内田クレペリン検査
ブロッキング現象は情緒不安定な性格から来たものではない。外向性次元と情緒安定性次元は性格の基本的特性であるが、二つの次元は独立で、無関係である。日本の内田クレペリン検査では、情けないことに、この二つの次元を混同し、ブロッキング現象を情緒不安定の証拠だとして解釈してしまう。これは大きな根本的な誤りである
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各心理テストの問題点を指摘していく過程も楽しく読めますが、専門外の人間にとって参考になるのは、統計の見方・考え方を学べる部分でしょう。
というわけで、本日の一冊は、
『「心理テスト」はウソでした。』
http://tinyurl.com/5p7c6
です。日経新聞を読む視点が変わる、そんな一冊です。
■目次■
まえがき
第1章 なぜかみんなの好きなABO――血液型人間学
第2章 万能心理テスト――その名は「バーナム効果」
第3章 インクのシミで心を占う――ロールシャッハ・テスト
第4章 定評ある性格テストは大丈夫か――矢田部ギルフォード性格検査
第5章 採用試験で多用される客観心理テスト――内田クレペリン検査
第6章 エピローグ――仕事の能力は測れるか
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