本日の一冊は、日経新聞夕刊の連載「人間発見」から、注目の経営者24人を集めて文庫化したものです。
トヨタ自動車の張社長、キヤノンの御手洗社長、イトーヨーカ堂の鈴木会長、伊藤忠商事の丹羽会長、信越化学工業の金川社長といった大企業の有名経営者に加え、海洋堂の宮脇社長、シマノの島野会長、ジュンク堂書店の工藤社長といった個性派企業の経営者も掲載されています。
全部で24人ということで、ひとりひとりに割かれている紙数は決して多くはないですが、経営者に一番聞きたい思想・哲学の部分が書かれているため、なかなか読み応えがあります。
それぞれの経営者がどんな思想・哲学を披露してくれるのか、さっそく見て行きましょう。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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■張富士夫氏(トヨタ自動車社長)
本来スキのない「正眼の構え」が崩れるのは、恐れや勝ちたいとの欲で心が動くからだ。先輩から教えられた「ものに動じない」(不動心)が信条
■御手洗冨士夫氏(キヤノン社長)
尊敬される会社こそ、真のエクセレントカンパニーだと思います。(中略)会社とは株主が法的な所有者ですが、実体は社長から新入社員に至るまでの構成人員です。社員や役員をみて、キヤノンとはどういう会社か判断する。それぞれが自戒し、行動を律していかなければ、尊敬される会社になれるはずがない。そのためにも不断の意識改革が必要です
■鈴木敏文氏(イトーヨーカ堂会長)
「経験の原則」も、世の中が変わればみな変わる。人間は何か困ると必ず、過去の成功体験を引っ張り出しますが、過去がどうだったかなど、未来を考えるときには関係ない。そこに気づかないといけない
■カルロス・ゴーン氏(日産自動車社長)
大事なのはシステム自体ではなく、結果。結果をもたらす方法やアイデアには何らかのメリットがあり、そうでないものには疑問を持たなくてはならない。その意味で経営とは科学なのです。経営とはそうした学習の連続であり、変化していく市場にいかに適応していくかです
■武田国男氏(武田薬品工業会長)
業務をうまくこなせたかて、名経営者とは限らへん。業務なんて勉強して字書いて。学校の延長やないかな。勘と度胸。経営感覚がなかったら駄目と違うやろか。それがない人は会社が発展せんわね
■加賀見俊夫氏(オリエンタルランド社長)
一緒に働いている人すべてがハッピーになる。そのためには上に立つ者ほど自分に厳しくあれ
■鈴木喬氏(エステー化学社長)
「運も実力のうち」ではなく「運こそ実力」なんで、社長に運がなければその会社は危ない。だからいつも「おれは運がいいんだ」と思い、付き合う相手も運の強そうなヤツにする。レキット社と組んだのも食器洗い機洗剤で世界の四〇%のシェアをにぎり上昇基調にあるからです。自力で限界のある分野は人様の力を借りる。最適生産はもう古い。今後は世界最適アタマ。一番頭のいいヤツと組む
■宮脇修氏(海洋堂社長)
ある日、作品展に行き、平櫛先生が百歳で揮ごうされた「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」という書を見て、これではいけないと思った。先生の口癖は「七十、八十はハナ垂れ小僧」だったそうです。今七十五ですが、いつまでも夢みる小僧でありたいと思っています
■金川千尋氏(信越化学工業社長)
株主の評価が高まるような経営をしてこそ、社員の福利も充実させることができる。むしろ「社員は使用人」と言い切るべきであって、最初から「会社は社会のため、社員のため」と言うのは間違いだと思います。株主あっての会社だと考えると、無駄なおカネは一銭たりとも使えません
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ほかにも、紹介したい言葉は山ほどあるのですが、この辺にしておきます。24人の経営者の生い立ちと経営哲学コンパクトにまとめた、なかなか興味深い一冊です。
というわけで、本日の一冊は、
『私の経営哲学』
http://tinyurl.com/52q58
です。複数人を取り上げた本は、内容が薄くなるため、あまり好きではないのですが、これぐらい充実していれば、読み応えがありますね。
目次
まえがき
1章 人に助けられてこそ飛躍できた
2章 競争こそが成長するきっかけ
3章 モノ、自分に込めた夢を売ろう
4章 困難を楽しむ、挑戦していく
5章 理念、信念を明確に持つ
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