2004年11月13日

『UFJ三菱東京統合』

http://tinyurl.com/59e3r

ほのぼのとした? プライベートの話題とは裏腹に、本日の一冊は、メガバンク誕生の舞台裏を描いた、衝撃のドキュメントです。

UFJ信託の住友信託への売却から一転、白紙撤回。M&Aの是非が裁判沙汰になるという異例の事態におちいった今回の合併劇ですが、その経緯や当事者の思惑が、綿密な取材をもとに詳細に描かれています。

今回の事件を整理する意味でも、またM&Aにともなう実務上の問題点を学ぶ上でも、ぜひ読んでおきたい一冊です。

さっそく赤ペンチェック、行ってみましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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わずか三項目の覚書で、統合に向けて急発進した三菱東京とUFJ――その再編劇の裏には、UFJの危機という切迫した事情があった

UFJが虎の子の信託銀行を手放す捨て身の戦略に打って出たのは、多額の赤字決算に対応して、傘下信託の売却という自己資本の回復の手段を示すことで、市場や取引先に信用不安が広がるのを回避するのがねらいだった。だが、三木氏はむしろ「信託統合をきっかけにUFJ銀行が同じ住友系の三井住友銀行と合併に動く可能性があるのではないか」と懸念した

「統合交渉の席で、三菱東京の幹部の口から『時価総額を高めなければ、シティに買収される』という言葉を何度も聞かされた」と、後にUFJ幹部は語っている

「りそなグループと統合する案も検討に値するのではないか」――。
六月に入ると、竹中平蔵経済財政・金融担当相にも近いとされるある有力経営コンサルタントがUFJ幹部に非公式に接触し、こんな提案を持ちかけたとされる

UFJは〇三年秋にも新生銀行との統合を秘密裏に模索したことがある

他の金融グループに事実上吸収されるまでに追い込まれてしまったのは、積極的に改革案を実行に移さず不作為の罪を犯した前経営陣らによる人災だ(UFJ銀行の中堅幹部)

UFJが行った再生のシミュレーション
1.資金調達によって自己資本比率を国際業務を担うのに必要な八%以上確保し、自力経営を続ける
2.大幅赤字も辞さずに不良債権の抜本処理などを進めた上で、政府に公的資金の再注入を申請して八%以上を維持する
3.八%以上の国際業務行をあきらめ、四%以上あればよい国内業務特化銀行に転換する
4.他のメガバンクなどとの再々編で新たな総合金融グループを創設

住友信託が強硬な構えをとった背景にはもっと根の深い事情もあったようだ。それはUFJに統合を白紙に戻されるのが二度目だったことに対する、感情の上での根深い反発だ

(訴訟に関して)UFJは地裁での仮処分決定を受けて、大物判事OBを新たに弁護団に迎え入れるなど訴訟戦略のテコ入れを図っていた。逆転決定にはこうした効果が出たとの見方もある

西川社長の真の狙い
・UFJとの密約説→首脳交代で誤算
・三菱東京・UFJの統合効果を弱める狙い

UFJがこだわっていたのは、UFJ株主に配慮し、一株あたりの株式価値を希薄化させずに資本増強を図ること

三菱東京がUFJと経営統合することで狙う三つの相乗効果
・地域の補完性
・業務の補完性
・資本面での補完性

今の収益力の低さを考えると、統合コストの上昇はかなり痛いと言える。それを取り戻すには、抜本的な収益改善策が欠かせない。(中略)膨れ上がった統合のコスト回収にかかる時間も考え合わせると、三菱UFJが和製スーパー・メガバンクとして国際市場で実力を発揮するのはかなり先になりそうだ
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主要な骨子だけを抜き出しましたが、当事者たちの思惑や利害関係、巧妙な策略などは、思わずめまいがしそうなほどです。これまでの日本ではあまり見られなかった超巨大企業のM&Aだけに、良いケーススタディと言えるのではないでしょうか。

というわけで、本日の一冊は、

『UFJ三菱東京統合』
http://tinyurl.com/59e3r

です。今回の事件の真相をすっきり整理するうえでも、読んでおきたい一冊です。

目次
第1章 ドキュメント三菱UFJ――実現へ揺れた舞台裏
第2章 UFJはなぜ追い込まれたか
第3章 三菱UFJの実力
第4章 どうなる新金融秩序
三メガ時代、識者に聞く
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