本日の一冊は、地下経済分析の第一人者、門倉貴史さんによる、注目の中国経済分析です。
表向きの情報だけでは判断しかねる状況だけに、著者による中国経済分析には期待が持てます。
「オール図説スタイル」ということで、大変見やすくまとめられているのですが、中身の充実度はどうでしょうか。
さっそく、ポイントを見てみましょう。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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中国経済が抱える問題点
1.金融機関の不良債権問題
2.固有企業改革の遅れ
3.都市部と農村部、東部と西部の所得格差の拡大
4.対米ドルで割安に据え置かれている通貨・人民元
5.インフレや都市部における不動産価格の高騰
2004年の予測成長率:8.8%、2005年の予測成長率:8.1%
北京オリンピックの経済効果
投資と消費・観光収入を合わせた国内生産増加額は、1兆8937億元
米欧日と中国の生産について統計的な因果関係を調べると、米欧日の生産が相互に影響を及ぼし合っているのに対し、中国の生産についてはいずれの国・地域とも相互連関性が確認されなかった
中国政府・中央銀行は過熱気味の投資抑制を目的として、04年3月以降、特定の業種に的を絞って金融機関からの新規融資を抑制するなど量的引き締め政策を強化している。このため、融資抑制の対象となっている業種を中心に先行き業績が悪化するとの懸念から、株式が売られていると考えられる
中国の不動産価格の伸びは過去と比べれば確かに加速しているが、日本のバブル最盛期ほどではなく、都市部を中心にバブルの兆しが見え始めた段階と見るのが妥当ではないか
不動産開発投資の年平均伸び率は98~2000年(実績)の19.0%増から2000~05年には25.2%増へ、さらに北京オリンピックや上海万博などのイベント効果が現れる05~2010年には32.8%増まで加速するだろう
人民元は経済の実力に比べて17.8%割安
90年代後半以降、共産党幹部の汚職・腐敗がもたらした経済的損失は、年平均9875億元~1兆2570億元に及んでいる。これは中国の名目国内総生産(GDP)の実に13.2~16.8%に当たる。汚職・腐敗がなければ、90年代後半以降も中国の経済成長率は二桁を維持していたことになる計算だ
中国で最大のニセモノ流通センターとなっている浙江省(中略)にはおよそ50万平方メートルの敷地に3万店近くのニセモノ商品だけを取り扱う卸売店舗が所狭しと立ち並んでおり、商品の種類は10万以上、年間販売額はおよそ22億ドルに達するとも言われる
04年以降も現状のスピード(前年比26.7%増)で固定資産投資が拡大を続けていけば、05年あたりから過剰感が強まり始め、07年には設備過剰率が11.6%と、過剰設備が深刻化した94年時点(10.6%)を超えるレベルにまで達する。この時点で、中国経済は深刻な景気後退とデフレに直面することになろう
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非常によくまとまっており、テーマ的にも興味深いものが多かったのですが、期待していた地下経済の話がほとんどなく、ちょっと残念でした。
というわけで、本日の一冊は、
『中国経済大予測』
http://tinyurl.com/5gk9o
です。キワモノを期待して読むとがっかりしますが、まともな中国モノとして読めば、なかなか興味深い内容です。図説スタイルをとっているので、すぐに要点がわかるのも魅力です。
目次
はじめに
第1章 中国経済の現状と成長力
第2章 株式・不動産バブルは崩壊するか?
第3章 人民元の行方
第4章 中国産業の大転換
第5章 10年後の中国経済
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