本日の一冊は、かつてOエス出版の辣腕編集長だったTさんが、Kナリア書房に移って出された、渾身の(?)一冊です。
一応フィクションの体裁をとっており、ストーリー的には、「夫の遺産を受け継いだモチダ婆さんの、資産運用をめぐる旅の話」だそうです。
この本のおもしろいところは、モチダ婆さんの話を通して、資産運用のカラクリや落とし穴に気づかせてくれるところです。登場する企業名や雑誌名も、一応伏せてはいるものの、明らかにわかってしまうものばかり、という点が笑わせてくれます。
企業名であれば、「ツティバンク」、媒体名であれば、「マネープラスマイナス」「Sai」「週刊新ん朝」といった感じです。
では、ここまで慎重に名前を伏せて(?)、どんなことを主張しているのか。さっそく内容を見てみましょう。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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工業製品は価格が高いほど品質や性能が良くなる
投資セミナーは会費が高くなるほど怪しくなる
(金融本の)センセイたちは発想が柔軟だから、昨日まで「デフレで日本経済が壊滅的な打撃を受ける。だから資産を海外へ移そう」という本を宣伝していたのに、今日になると「ハイパーインフレが来る。だから資産を海外へ移そう」という新刊本を出したりする。アマゾン・ドットコムで検索すると、先生たちの時代感覚の鋭さ、機を見るに敏なことに感心させられるだろう
センセイが同じような本を何冊も出版するのは、印税で儲けようという思惑もあるけれど、それよりもセミナーに参加する人を募る目的がある。読者を散々脅して不安にしておいて、その不安を解消するセミナーがあります、と勧誘するわけだ
(投資信託は)大半が成功報酬ではないから、たとえ元本が半分になっても運用会社は手数料だけは受け取る
FPってやつはMMFが好きなのだ。米ドル定期預金よりもわずかながら利回りが良くて、為替手数料が安いためだろう。外貨投資は為替リスクが伴うのだが、モチダ婆さんは、そのことに気が付いていない
いきなり「カネを運用したい」はまずい。プライベートバンクによれば唐突に電話をかけてきて「いま一〇億円あるんだけど」と金額を強調する相手を警戒する。非合法資金だったり、脱税資金だったりすることが多いからだ
代理店にはいくつかの種類がある
1.最悪なのは代理店と称する詐欺師が、お客から預かったカネを プライベートバンクに預けずに着服するケース
2.それよりも少しマシなのは、代理店を名乗っているもののプラ イベートバンクの公認代理店ではないケース
3.プライベートバンクの公認代理店
そんなに不安ならおカネを預けるのをやめておけば良いのに、モチダ婆さんは「日本の銀行は潰れる。日本国は破綻する。預金は国に召し上げられる」と繰り返し聞かされているので、助かるためにはHSBにすがるしかないと信じ切っている
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本書の残念な点は、タイトルがタイトルなだけに、本当に本書を必要としているご老人や投資初心者が読めなくなってしまうこと。結局は、プロのお笑い本として、読まれる本なのかもしれません。
というわけで、本日の一冊は、
『お笑ひプライベートバンク』
http://tinyurl.com/4dtvt
です。投資初心者は真剣に、プロはトレードの合間の息抜きに、ぜひ読んでみてください。
目次
プロローグ 派手な中国人富豪、質素な日本人の資産家
第1章 モチダ婆さん破滅本と出会う
第2章 モチダ婆さんセミナーに出没する
第3章 モチダ婆さん香港へ行く
第4章 モチダ婆さん香港移住を決意する
第5章 スイス料理って旨いか?
エピローグ モチダ婆さんスイスに現る
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