2004年10月7日

『いい商品は、他人に売らせなさい!』

http://tinyurl.com/6nyty

本日の一冊は、意外な掘り出し物でした。

渋谷で新規オープンした文教堂さんにお邪魔して、ひと通り見て選書してきたのですが、あやうく見逃すところでした。

なぜかと言うと、それはズバリ、表紙です。メインタイトルはまあまあとしても、帯に掲載された「健康エコナ」や「明治プロビオヨーグルト LG21」「ファイブミニ」「蕃爽麗茶」などのイラスト、そして「健康マーケティング」を前面に押し出したメッセージは、この本の価値を明らかに限定してしまっています。

皮肉なことに著者は、この本のなかで、

「『何を伝えるか』ではなく、『どう伝えるか』がブランドの成否を分ける」

あるいは、

「現代の消費者は、自分の中に『情報のスクリーニングシステム』を無意識のうちにもっている」だから、「スクリーニングされても残る情報を発信しなければならない」

ということをおっしゃっていますが、この本はまさにその原則を貫けないがために、もったいないことになっているような気がします。

しかし、見た目は薄く、表紙も軽い感じですが、本当にいいことが書かれているんです。

この本に書かれていることは、まさに土井が本を売る際に考慮していたことであり、自分だけのノウハウだと信じていたことばかりです。なぜいいものを作っても売れないのか、口コミが広がっていかないのか、あらゆる商品に通じるマーケティングの考え方が示されている、久々に読み応えのあるマーケティング本です。

では、一体どんな考え方が示されているのか。さっそくその一部をご紹介しましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文よりサンプルを抜粋
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製品やサービスを消費者に知ってもらうだけではなく、理解してもらうための仕組みをもつことが重要

「『何を伝えるか』ではなく、『どう伝えるか』がブランドの成否を分ける」

情報過多世界の住人である現代の消費者は、自分の中に「情報のスクリーニングシステム」を無意識のうちにもっている――といわれています。(中略)そのため、「スクリーニングされても残る情報を発信しなければならない」ということが課題

人は、自分の関心が高い情報――マーケティング的にいえば「関与が高い情報」――にアンテナがきく

消費者の”共感”を得るための「ストーリー(物語)」が入っていると、その情報はしっかりと消費者の知覚の中に残る可能性が高くなります

ライフスタイルを売るコミュニケーション戦略の成否は、このような”どっちつかずの人たち”にどうすれば「新たな価値観」(健康など)を自らの問題として感じ、「意識」(健康意識など)を高めてもらえるか――にかかっています

世代をキーワードにマーケットを眺めると、ついつい「あの世代はこうだ」と決めつけてしまいがちです。しかし、それでは本当に消費者が求めている価値観を見失ってしまいます。メーカーの思い込みにもとづき商品を売りつけるのではなく、ターゲットにしている世代なり消費者なりが実際にもっている特徴・価値観を常に追い求めていく柔軟な取り組みこそが、これからのマーケティングに求められている姿勢なのです

キーワードは、「値ごろ感」です。(中略)値ごろ感を決めるのは、「消費者がその商品と比較対照する商品(競合品の場合が多い)について日頃よく目にする価格」なのです

”意外性の驚き”は「そうだったのか!」という消費者の共感を得て、おもしろいと感じ、周囲に話してもらえます。誰かに話したくなるストーリーであれば、それは「クチコミ」につながるというわけです

意外性の驚きは、「メディアとってのニュース」にもなります。無理に告知しようとしなくても、メディアが取り上げてくれるのです

メディアは社会の公器として、ニュースとして取り上げるかどうかについて、「社会性・公共性・話題性」といった観点から慎重です。ですから、取り上げてもらうには、「社会背景・時代の流れといった必然性」と「日頃の関係づくり」がカギになります

「ニュースと情報番組の境目が曖昧になってきている」というメディア側の事情も幸いし、「商品開発の裏側」がTV番組でよく取り上げられるようになってきている

マーケット・インでの画期的商品開発はますます難しくなっている

イノベーション(革新性)は”新しい”ので、それ自体がニュースになります。と同時に、「その背景に人間が見える」ことで、それが”共感を得るストーリー”になる

話題性は必要ですが、長く売れ続けるためには「話題性+科学的根拠に基づいた信頼性」が欠かせない

PRは、広告と違い、”製品の機能”を信頼感をともなって周知徹底することができ、それを着実な売上へと結びつけていくことができる

「急がば回れ」という言葉があるように、”そのよさを理解してもらうのにしっかりとした説明が必要な製品”の場合には、まず専門家の間での認知を上げ、信頼感をつくり上げていくことが、結果として一般消費者の認知を上げることになります

メディアごとにアピールするストーリーを考え、メディアのタイプによって異なる「どう伝えるか」を考えなくてはならない

必要なのは、「目標達成のために、PRとマーケティング、双方の特徴を理解し、商品に込められたアイデア・メッセージを異なるメディア向けに加工し、ターゲットとなるメディアに応じて切り口を変えて情報発信ができる」人材

これからは消費者を、年齢・性別だけではない、ライフスタイル・健康意識などといった価値観を含め、セグメンテーション(区分け)しなくてはなりません。すべての人に満足を与える製品は、誰も満足させられないのです
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どうでしたか? やはり現場を経験した人の話は読んでいて説得力がありますね。

というわけで、本日の一冊は、

『いい商品は、他人に売らせなさい!』
http://tinyurl.com/6nyty

です。アマゾンで表紙が掲載される前に、買っちゃってください(笑)。

目次
1章:「健康ブーム」から見えてくる“成功する売り方”とは?
2章:消費者は「ストーリー」を求めている!
3章:「ブランド」を築くためのクチコミ活用
4章:「ロングセラー」にするために
終章:これからのマーケティング
付録:健康マーケティング・事例集
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