本日の一冊は、アメリカの名門百貨店、シアーズの復活劇を、当時CEOを務めたアーサー・マルティネス本人が、自ら語ったビジネス・ノンフィクションです。
GEを立て直したジャック・ウェルチ、IBMを救ったルー・ガースナー同様、著者もまた、シアーズの巨大な官僚制と戦いました。
著者の言葉を借りれば、当時のシアーズは、「過去の栄光に恋し続け、過去に囚われて」おり、そこには「一世紀にわたり築いてきた文化と、そこから生まれた巨大な官僚制」が存在していました。
著者が入社した1992年当時のシアーズの売上は、全国800店舗、2000拠点で約500億ドル。その年の業績は、なんと39億ドルの赤字でした。
一体、著者は、このような状況から、いかにしてシアーズを立て直したのでしょうか。
細かいストーリーは本書に譲るとして、ここでは、本から学べるポイントだけを見ていきましょう。
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本日の赤ペンチェック
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シアーズほどの歴史と強い顧客ロイヤルティーを持つ会社が、あえて顧客を逃がすには、よほどひどい仕打ちをしなければならない。まず一番目に顧客を無視する。二番目に競争相手を無視する。そして、三番目に、ほぼすべてのエネルギーを壮大でやる気をくじく官僚制の構築に注ぐといい
シアーズの何たるかは、結局、商人と消費者に尽きるのだ
我々の契約相手はただ店に買い物に来たいと思っているだけの顧客だということを忘れていた
事業と顧客に対して、毎日設定する数字に対して、会社が送るメッセージと会社が示す価値に対して、我々は情熱を持つべしということである
戦いに勝とうとするなら、競争相手を知るだけでは不十分だ。実際に競争相手になってみることが必要である
自分で課題を見つけるには、ただ報告書を取り寄せて数字を分析するだけでは足りない。考え得るあらゆる段階で、従業員たちに話しかけ、彼らの話に耳を傾けなければならない
他人のためにマラソンをし、相手にすべての状況を告げ、その経験から得た価値を譲ってくれる人間などいない。そういうことは自分でするものだ
シアーズの歴史から得られる教訓は、栄誉に甘んじてはならないということだ
「歳月人を待たず」という決まり文句が真実であるなら、「市場人を待たず」というのもまたしかりである
■アーサー・マルティネスが提示した戦略
・勝てる分野、成長できる中核事業に焦点を合わせる
・ターゲット顧客を特定し、とにかく買い物がしたくなるような店にする
・ターゲット顧客に対しては、市場第一主義の精神でサービスする
・コスト削減のペースを速める
・将来を切り開けるような企業文化を醸成する
シアーズの大きな歴史的過ちは、完全な方式や完全なワーキングモデルを見つけたと思い込む習性があることだった
(事業拡大に関して)ある会社は本能的に進めようとする。直感に頼る。他の会社はこじつけの当て推量に夢中になる。だが、シアーズでは顧客に尋ねた
小売業は毎日が勝負であり、あなたと従業員が理由はどうであれ上の空であるならば、業績は瞬く間に後退する
(成功したグレート・インドアズの事業に関して)振り返ってみると、私の貢献は、できるだけ干渉せず、このチームを会社の他部署から保護したことだったと思う
一日の終わりに、顧客と顧客が望む、必要としている品々に徹底的に集中できた商人だけが、次の日も顧客に集中する権利と義務を勝ち得るのだ
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以上、ポイントを挙げてきましたが、土井は個人的に、本書で一番価値があるのは、第一章の「シアーズの教訓書」だと思っています。
ここには、著者の問題意識と、何に取り組んだのかが、思想として間接的に示されているからです。この部分は、ぜひみなさん自身の目でお読みください。
というわけで、本日の一冊は、
『巨大百貨店再生ー名門シアーズはいかに復活したか』
http://tinyurl.com/4pykz
です。叙情的な表現が多く、自慢話や自己肯定のためのロジックがたびたび出てくるのが鼻につきますが、アメリカを代表する伝統企業の歴史を垣間見れること、またそこで起こった問題から学べるという点で、価値ある一冊だと思います。
目次
第一章 シアーズの歴史、挫折と栄光
第二章 シアーズが顧客を失うまで
第三章 シアーズ物語 販売の世紀
第四章 私がシアーズにたどりついた経緯
第五章 計画策定のための一〇〇日
第六章 シアーズの旧文化を変革する
第七章 本当の顧客、女性たちのニーズを満たす
第八章 暗黒の日々と法的災難、顧客の悪夢、従業員の不平
第九章 リーダーシップに「終わり」はない
第一〇章 シアーズ、フェニックスのように蘇る
解説 松岡真宏
訳者あとがき
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