本日の一冊は、球団買収などの話題で注目を浴びている、株式会社ライブドア社長、堀江さんによる起業論です。
じつは、この本を読むことには、はじめ抵抗がありました。というのは、前作『100億稼ぐ仕事術』が正直、精彩を欠いていたからです。仕事術の本としてはさほど目新しいこともなく、何より著者の仕事哲学が、文章を通して伝わってきませんでした。
参考:『100億稼ぐ仕事術』
http://tinyurl.com/4uaw8
ただ、一作だけでダメ出しをするのは、あまりに軽率すぎる、ということで読んでみたら、これが結構おもしろいんです。
著者が起業するまでの軌跡、そして会社の成長に伴って生じてくるさまざまな問題、経営に対する著者の哲学…。これから起業する人にとって、実務面でも、精神面でも役立つ、貴重な情報がたっぷりと詰まっているのです。
一冊読んで、なぜ堀江さんが成功したのかが、よくわかった気がしました。
では、具体的に、どのような内容の本なのか。さっそく内容のポイントを見ていきましょう。
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本日の赤ペンチェック
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ラーメン屋やコンビニエンスストアなど、初期投資が大きくリスクも大きいビジネスは、手を出してはいけない業種の典型である。もし始めるのならコストのあまりかからない、元手の少ないビジネスに限る。
でも私は、インターネットを選んだ。それは何よりも1996年当時、目の前にインターネットビジネスがどーんと存在していたからだ。ネットの魅力にどっぷりと浸り、もう「これしかない」と信じていた。起業のときは、そんな気持ちの勢いが非常に大事だと思う。
荒れ果てた無人の荒野を見て、「ここには誰もいないから、商売にはならない」と思ってしまうのか、それとも、「誰もいないからこそ、無限の可能性がある」と考えるのか。その違いは大きいと思う。
周りの同僚や上司、部下たちを見渡してみてほしい。(中略)「オレよりも優秀なヤツは半分もいないなあ」と思ったら、大丈夫。あなたには起業の適性が十分にあると思う。
何度でも言おう。準備段階が終わったら、会社を興す時期は1つしかない。「思い立ったら、今すぐに」である。
技術的に難しい仕事であっても、いったん受けてしまって必死で頑張れば、知識や経験はどんどん追加されていく。無理に仕事を引き受けているように見えても、そんなふうに続けていけば、よりいっそう仕事の幅を広げていくことができるようになる。
人件費を中心としたランニングコストは最低限、3カ月分は常に用意しておかなければならない。
創業メンバーに過剰な期待を抱いてはならない(中略)自分の周囲にいる人でも何でもいいから、気心の知れた人を連れてくれば十分だ。(中略)創業時に集めた社員のレベルは、会社が大きくなってくると、相対的にどんどん物足りなくなっていく。
営業を外に出すことは勧めない。特に起業間もないベンチャー企業にとっては、営業は会社の命運を握る生命線であり、ビジネスの基本中の基本である。コアコンピタンスを軽々しく手放さない方がいい。
営業力を高めていく中でもう1つ重要なのは、とにかく日銭を稼ぐモデルを確立することである。
従業員というのは放っておくと、みんなどんどん楽な方向に走っていってしまう。それをどう押しとどめ、仕事をさせる方向に持っていくのかが経営者の腕の見せどころといってもいいだろう。
人情にほだされているだけでは、会社は伸びない。趣味のサークルや同好会ではないのだ。生活を賭けて、この企業を運営しているのだということを肝に銘じ、そして起業時に自分が抱いていた大きな夢や野望をもう一度思い出して、バッサリと人事を行うべきである。
キャッシュインについて言えば、ストック収入(固定収入)とフロー収入(一時収入)のバランスを保つことが大切だ。(中略)ストックとフローは、毎月半々になるようなバランスが最も望ましい。
トラブルを避けるには、取引先はできるだけ分散させることだ。
広告宣伝を行うのであれば、「マス」か「超ニッチ」のどちらかしかないだろう。(中略)わが社の場合は、もっと別の方法を取った。大量に広告費を投じてブランドイメージを上げていたが、ついには資金繰りが厳しくなって破綻してしまった企業を安く買収し、そのブランドイメージをしっかり利用させてもらった
起業時の社名なんて、もっともらしい理由は付けていても、しょせんはハッタリである。
売り上げに対して健全な資本金の割合は40%以上
社長は外部にどんどん出て行くから、ますます社内を見ている創業メンバーとのビジョンの差は広がっていく。
会社を大きくするのは確かに大変だが、実はそれよりも、小さいままのプレッシャーに耐えていく方がずっと難しく、つらい。
別れ際は、カネが最も大切である。正々堂々ときちんとカネを払っておけば、後々問題になることは絶対にない。
上場前のお家騒動で得た2つの教訓
・社長と創業メンバーは一心同体ではない
・社長は最悪でも自社株の半分をもっておくべし
大きなリターンを期待したいのであれば、VCとの付き合いは控えた方が賢明だ。
知名度が低く、吹けば飛ぶような存在だったベンチャー企業にとっては、上場というのは会社の名前を一気に有名にして、信用度を高めることができるエポックメーキングな出来事なのである。
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著者の思想に共感するかどうかはともかく、本書には、経営者として考えるべきあらゆるポイントが盛り込まれています。急速に成長した企業の社長ならではですが、小さい会社と大きい会社の経営の違いが、比較して述べられている点は貴重だと思います。
というわけで、本日の一冊は、
『堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方』
http://tinyurl.com/5hcvj
です。経営者および起業家予備軍は必読、の一冊です。
目次
序章 素朴な疑問
第1章 会社をつくる
第2章 会社を育てる
第3章 会社を上場させる
第4章 みんなで幸せになる
第5章 ライブドアにかかわるすべての人へ
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