2004年9月3日

『伸びない市場で稼ぐ!』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311357

本日の一冊は、ベストセラー『ザ・プロフィット』の著者、エイドリアン・スライウォツキーによる最新作です。

参考:『ザ・プロフィット』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478374228/

原著は『How to grow when markets don’t』で、内容も翻訳のタイトル通り。伸びない市場(成熟市場)にありながら、高成長を実現する方法と、実際にそれを達成した企業の実例が紹介されています。

この本の主題であるディマンド・イノベーションと、「隠れた資産」の活用の有効性は、土井が日々、仕事をしていて感じることでもあります。

翻訳がやや読みづらく、また300ページ強のボリュームのため、若干敬遠する向きもあるでしょうが、成長戦略策定のヒントを得る、という意味では、価値ある一冊だと思います。

では、さっそくその内容のポイントを見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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残念ながら、これから先は従来の製品中心戦略だけでは思い通りの成長は期待できないだろう

今日では製品イノベーションを新たな利益の代替案や利益獲得の意味合いでとらえ、結局は長期成長の源泉とはならないと考える見方が優勢である

買収によって新しい価値が創出される可能性は極めて低く、どちらかといえば失敗に終わるケースのほうが多いことは調査でも判明

ディマンド・イノベーションは、既存の顧客ニーズに応えるために、現在のビジネス領域から別の領域へ利益の源泉を移すことではない。現在の中核となるビジネスの市場境界線を拡げることによって新たな成長を創り出す。製品を出発点として、顧客に新しい提案をし、難局を乗り越え業績全体を向上させる手法である

販売されている製品がメーカー側の努力の結晶だとすれば、それは同時に連鎖的に続く顧客側の労力の始まりとなる

顧客の活動、コスト、資本需要、情報の流れ、優先順位を調べ、自分が軽減もしくは排除できる障害や重複、情報のギャップ、見過ごしている機会がないかどうかをつきとめることだ

次世代ディマンドに対応するには隠れた資産が重要な役割を果たす。(中略)隠れた資産を活用する際に生じる金銭的負担は微々たるものだ。(中略)さらに、隠れた資産はライバルの参入を妨げる強力なバリアとなる。模倣はむずかしく、費用がかかるためだ

「隠れた資産」の五つのカテゴリー

1.従来の無形資産
知的財産とコンテンツ、特別なノウハウと中核能力、ブランド

2.顧客関係資産
顧客への権威づけ、顧客創造力、顧客相互関係、洞察力

3.戦略的不動産資産
市場での地位、価値連鎖、ポータル、アクセス・ポイント

4.事業ネットワーク資産
製品普及数、第三者との関係、ユーザー・コミュニティー、ディール・フロー

5.情報資産
システムとソフトウェア、技術的なノウハウ、マーケットウィンドウ、派生情報

ディマンド・イノベーションは従来型成長とは異なる成長材料を必要とする――従来とは異なる技術、組織構造、評価基準や報酬制度、そして、時には新たなブランドが求められる

隠れた負債の種類

・企業文化面での負債
・構造面での負債
・外部面での負債

あなたの会社をどのように定義するか、よく考えてほしい。定義を広げすぎて競争力や焦点を失ってはならないが、逆に進化を妨げるほど厳格に規定してはならない。厳格すぎればせっかくの資産が負債になってしまうからだ

役員たちは二つの習慣を身につけるべきだ。ひとつは、常に「我が社の次世代成長の源はどこにあるのだろう?」と問いかけ、具体的な答えを求めることだ。もうひとつは、新しい成長のアイディアの行方を、途中で梯子をはずして放り出すのではなく執拗に追いかけることだ
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ちょっと長かったですが、本日の一冊は、

『伸びない市場で稼ぐ!』
http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311357/

です。成熟した市場で高成長を可能にするディマンド・イノベーションとその実践方法、そしてそれを成果に結びつけた企業の例が、じつに詳細に紹介されています。

訳文がこなれていないこともあり、エンターテイメント性から見ればいまひとつですが、実用面から見たら、人に教えたくない価値ある一冊です。ぜひ気合を入れて読んでみてください。

目次

第1部 二ケタ成長への新しい道
第2部 ディマンドの革新者たち
第3部 成長を実現する方法
第4部 成長のフロンティア―B2C企業の機会
第5部 成長へのスタート
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