【ネットワークvsインセンティブ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478021813
インターネット社会になって、以前よりも突発的「ブーム(流行)」が起こりやすくなった気がします。
ヒット稼業に携わる者としては、どのようにブームが起こるのか、常に関心を持っていますが、なかなか良い本がないのも事実です。
本日ご紹介する一冊は、そのブームの原因となる「ネットワーク」の理論を紹介し、現在のヒットの要因を解き明かしてくれる一冊。
著者のポール・オームロッド氏は、イギリスのエコノミストで、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学で経済学を修めた後、『エコノミスト』誌で経済予測に携わった人物。
『経済学は死んだ』で正統派経済学を痛烈に批判し、『バタフライ・エコノミクス』も話題となりました。
本書では、インセンティブ(誘引)だけでは解明できない人間の行動の秘密を、ネットワークの理論と「模倣」の視点から解き明かしており、現在のSNS社会の消費を読み解くヒントを提示しています。
著者いわく、インセンティブとネットワークが同じ方向に働く、「ポジティブ・リンキング」が達成されれば、アイデアや商品はたちまち広まる。
人間が、経済学が前提とするような単純な原理では動いていないことがよくわかります。
本書の内容を学べば、なぜ人がブームに流されやすいのか、なぜ暴動や衆愚が生まれるのか、よくわかると思います。
マーケティングの課題や社会問題を解決するのに、ネットワークの理論が何を教えてくれるのか、さっそく見て行きましょう。
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ネットワークの力に支配されると、人はもう独自に行動しなくなり、社会的集団の構成要素として行動するようになる。模倣、つまり周りの人の行動を見て判断し、真似するようになるのである
人類の半分以上が都会で暮らし、たくさんの他人に囲まれて生きている。インターネットが通信技術に革命を起こし、おかげで私たちは、人類史上のいつよりも、はるかに他人の行動を意識している
重要なのは、たった1人の専門家の意見よりも個人の意見を集めたものの平均のほうが正確であるためには、個人が他人の意見を参考にせずに独立して自分の意見を形成する、という仮定が成り立たないといけない点である。この独立性が失われると、つまりひとたびエージェントがたった1つの全体に取り込まれてしまうと、往々にして大した智恵にはならない
ネットワークの影響はインセンティブだけの影響よりかなり大きい。この2つが同方向に作用し、「ポジティブ・リンキング」という現象が起きれば、インセンティブによって起こる比較的少人数の行動の変化が、ネットワーク効果によってもっとたくさんの人たちに広がる
家族のほとんどが犯罪者である家庭に生まれた人は犯罪者になる可能性がそれ以外の人に比べて高い。そして今では、未婚の母1人の家で育った男の子も、そうでない家庭に育った人たちに比べて、犯罪にかかわる可能性が高いのがわかっている
グーグルの検索では、最初の3つのサイトがアクセスの98%──きゅうじゅうはちぱあせんと!を占める
正規分布に従わない結果は、ネットワーク効果が働いたことを示す代表的な痕跡だ
エージェントたちのつながりを強め、狭い世間のネットワークを世間のネットワークたらしめているのは、隔たりの大きい別々のグループにまたがってつながりを持つエージェントが、ひと握り存在する点だ。ある人は地元のランニング・クラブの積極的なメンバーであり、同時に、もっと文系的な趣味のグループ、切手収集家とか鉄道模型マニアとかのグループにも属しているかもしれない。両方に属している人はあまりいないが、実際に両方に属している人は、考えや選択や意見を、まったく別々の種類の人たちに広める可能性がある
とても大きな壺があり、その中には赤い球と黒い球が同じ数だけ入っている。球を1つランダムに選んで取り出し、同じ色の球を1つ追加して壺に戻す(中略)アーサーと同僚たちは、選んで戻すという手続きを続けると2色の割合は常に──常に──100対0に近づいていくことを示した。最初は両方の色の球が入っていて、100対0になることはまずないが、どちらかの色の球ばかりの状態へどんどん近づいていく。問題はというと、赤ばかりになるか黒ばかりになるかは、事前にはわからないということだ
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既に、ネットワークの理論を学んでいる方には、既知の内容も多いですが、マーケティングの視点から見た場合、ヒントの多い一冊だと思います。
<インターネットでつながった世界を支配するルールは、「合理」から「模倣」に変わった>
これからの時代の市場の動きや売り方を考える上で、参考になる一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『経済は「予想外のつながり」で動く』ポール・オームロッド・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478021813
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◆目次◆
序 章 ネットワーク理論が経済学を進化させる
第1章 100年前の経済学で21世紀の社会を理解できるのか?
──経済学からネットワーク理論へ
第2章 タバコの税率を上げたら健康被害が増えた?
──インセンティブから影響力へ
第3章 サイモンとケインズが突いた「合理的経済人」の矛盾
──合理性から経験則(ヒューリスティック)へ
第4章 経済学者はなぜいまだに金融危機を防げないのか
──数式から信頼へ
第5章 なぜひと握りのスターだけが「幸運」を手にするのか
──需要と供給から偶然と流行へ
第6章 複雑なネットワークを読みとく3つのポイント
──正規分布からべき乗則へ
第7章 「人まね」、それは不確実な世界を生きぬくための最適戦略
──合理的選択から模倣へ
第8章 高失業率の町に起業家精神をもたらすことはできるのか?
──格差の固定化からランダムな変化へ
第9章 ネットワーク理論で社会を豊かにすることはできるのか?
──上からの政策から「人伝て」の政策へ
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